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出版流通の再発明をはじめます | SeLn

はじめまして、〈SeLn(セルン)〉広報部です。

〈SeLn〉は「出版流通を再発明する」を経営理念に掲げ、出版流通のオンデマンド化を進めるスタートアップ企業です。まだまだ小さな企業ですが、出版流通への大きな愛と強い気持ちをもって事業をすすめています

私たちの推進している「オンデマンド化」は、その言葉の通り「On Demand=必要に応じて」を意味します。出版流通におけるオンデマンド化というのは、今までと違う方法で一冊の本を一人ひとりの手元に届けるための発明です

このnoteでは、私たちの考える“再発明”についてご紹介しますので、よければ最後までお付き合いください。


本が「届く」まで

“本”に携わる人と聞いて、どんな人が思い浮かびますか?

作者や編集者、書店員かもしれません。いやいや取次っていう仕事が出版業界にはあるんでしょ、という方もいるかもしれません。一冊の本が届くには、たくさんの人が関わっています。

作者はもちろんのこと、編集者、時には翻訳者や校正者、装丁家やライツ権利担当者など多くの人が関わりながら本の”中身”の部分を作ります。その後、印刷会社や製本会社、時には電子書籍化会社とも協力しながら、本の”形”を作ります。そして、営業担当者や取次会社、電子書籍のプラットフォーマーが力を合わせ、本と”出会える下地”を作ります。そして、ようやく本は読者が手にできる書店や図書館、施設にやってきます。

ですが、ここで見落としやすい存在があります。それは「出版流通」のなかに「実際に1冊1冊を届けている人がいること」です。“形”となった本が実際に書店に届く間には、必ず出版流通が挟まっています。

印刷・製本・発送のすべてをワンストップで実現しています

たくさん届ける時代じゃないからこそ

活字離れ・書籍離れが騒がれる一方で、それ以前に時代の大きな波である「大量生産・大量消費の時代の終わり」は出版業界にも訪れています。

また、あまり馴染みがない言葉かもしれませんが、出版業界には「再販売価格維持制度(再販制度)」と「委託販売制度」という業界独自の制度があります。すごく簡単に説明すると、『出版社が決めた定価を維持して、書店が読者に販売(再販売)します』『(本に関しては)販売時に「買取」をする必要がなく、「委託在庫」として店頭で預かったものを販売し、売れた分だけ精算し残りは返品していいよ』『出版社は返品された本を中古品にせず、再び定価で売り続けていいよ』という制度です。

この制度のおかげで、読者は日本全国どこであっても同じ価格で本を購入することができるし、書店は在庫リスクを心配せずに多様な種類の本が並べられるため、諸外国に比べ多くの作品が日本から出版されるようになりました。

ですが、この2つの制度は「大量生産・大量消費」を前提にしたものでもあるのです。つまり、ある意味では『たくさん本を作って、全国各地の書店に配本し、読者の目に触れる機会をふやし、どこかのタイミングで売れる』ということを前提にした制度であるということです。本が、娯楽・知識・文化のもっとも身近で重要な手段であった時代には、その制度には大きな意義がありました。

しかし、たくさん作ればたくさん売れる時代ではなくなっただけでなく、そもそも配本が全ての書店に行き届かなかったり、出版社にも在庫がない状態、いわゆる絶版本がたくさん存在する時代がやってきてしまいました。読者が読みたいのにない本が増えてしまっています。また、都市部の大きな書店に本が集まり、地方の書店や、地元密着の個人経営の書店には届かなかったりと新たな問題も増えてきています。

たくさん作らず、必要な時に、1冊ずつきちんと届ける

ここで一旦、理想の本の届き方を考えてみましょう。

色々な理想があるかもしれませんが、私たちは「欲しい時に欲しい人が欲しい本を手に入れられる」ことではないかと考えています(みなさまの別の理想があれば、それもぜひ教えてください!)。これは大量生産・大量消費の時代には「再販制度」と「委託販売制度」が叶えていたことでもあります。

ですが、私たちは今の時代に合わせた新しい方法で「欲しい時に欲しい人が欲しい本を手に入れられる」ことを実現したいと考えています。それが「オンデマンド化」です。

オンデマンド化は、2つの既存の制度を再構築(リビルド)するのではなく、0から出版流通のあり方を考え直し、新しい未来を切り開く”発明”だと私たちは考えています。

本当に欲しい時に本当に欲しい人へ、1冊から本を作り、1冊ずつ世界中に届けることができたら、多種多様な本があるという素晴らしい業界特性を引き継ぎつつも、出版流通の課題をクリアーできるはず。そんな夢を描き、理想を実現する仕組みを発明しました。

1冊ずつ製本ができる製本機です

オンデマンド化で不可欠な「物流」は私たちの強みです

オンデマンド化に必要なのは、「製造」をいかに細かく、しなやかに行えるか、そして、クイックに「流通」へ繋げられるかです。注文があったら、すぐに作って、そして届ける。これがオンデマンドの基本。

届けるための難所はたくさんありますが、〈SeLn〉は、「届ける」のプロフェッショナルです。安心してお任せください。

と、いうのも、代表の豊川は家業が出版流通の物流倉庫。しかも、まさしく先の『再販制度』で返品されてくる本を新たに再生させる「書籍改装業」を営んできました。そして今も出版流通業のニューブックの社長です。そして、小さな頃から書店から返却され、再び書店に旅立っていく本に囲まれて過ごしてきた豊川は2013年に「物流フルフィルメントプラットフォーム」(オープンロジ)を共同で創業しました。本の行き来はまさしく「物流」だったからです。

オープンロジを立ち上げたころ、豊川はすでに現在の〈SeLn〉の構想も持っていました。ですが、その時はまだ出版流通に再発明が必要な時期ではないと考え、先に始めたのが「物流」でした。

だからこそ、私たちは、真の意味で「本を届ける(=物流)」を知ったうえで、出版の未来の持つ可能性を広げる発明として「出版流通でオンデマンドを実現する」を広めようとしています。

読者にとっても「1冊ずつ」が可能性を広げる

出版がオンデマンド化すると、本を届けたい人だけではなく、本の読者にとっても1冊の可能性が広がることにつながります。

たとえば、凝った装丁じゃなくてもいいので、なるべく気軽な価格でたくさん読みたい!という本も、特別な装丁のものを、高価であってもいいから大事に読んだり飾ったりしたい!という本もあるのではないでしょうか。

もっと細かく要望をつけていくのであれば、本当はもっと大きな文字で読みたい! 翻訳してほしい! 文庫サイズだったら持ち歩けるのに! 点字版はないの! 書き込みながら読みたいから余白を増やしてほしい! イラストをもっと大きくしてほしい! 別の表紙のもあったらいいのにな!なんていう欲求も隠れているかもしれません。

”1冊ずつ”のオンデマンドによる出版流通が普及すれば、そんな一人ひとりの欲求にも寄り添うことができます

たとえば、こちらの絵本。同じ内容のものですが、上製本と呼ばれる固い表紙(ハードカバー)の製本形式のものとペーパーバックと呼ばれる簡易なものがあります。

重なって、下にあるのが固い表紙のもの。上にあるのがペーパーバック。

もちろん、印刷代も製本代も変わってきますが、消費者がほしい方を選んでから、1冊ずつ作れば、どちらかしかこの世にないということは起こりえません。

こんな風に、装丁を選ぶことだってできるし、消費者が届けてほしい形を指定できるようになれば、きっと読書体験も今までよりもっと多くの可能性を持つはずです。

そして、だからこそ、出版社や出版流通はもちろん、読者にとっても可能性の広がる出版業界を目指すには「0からあり方を考え直し、新しい未来を切り開く”発明”が出版流通には必要」だと思うのです

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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