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「北極百貨店のコンシェルジュさん」感想 エレガントとノスタルジー、そして…

西村ツチカさん原作「北極百貨店のコンシェルジュさん」がネトフリで配信されていたので拝見しました。
イラストレーターでもある西村さんの絵をアニメ化するなんて、チャレンジャーだなあ、と思いつつ、実はそれほど期待していなかったのです。
でも良い方に裏切られました。

舞台は動物、しかも特殊な動物を相手にする高級百貨店。
そこの新人コンシェルジュが主人公です。

「百貨店」、懐かしい響きです。
きっと若い方は耳に入れる機会はあまりないでしょう。デパートのことです。
デパートももはや死語に近いですね。

古き良き大量消費時代の幻影がそこにあります。
それらには全て理由があるのですが、そこはネタバレになるので、それを語るのは控えるとして、確かにノスタルジーがこの作品を彩る大きなファクターです。
そしてエレガント。

アニメというものは、えてしてサブカルチャーのカテゴリに入ります。
なので、エレガントというものがテーマにされることは少ないと思います。
もはやエレガントもノスタルジーを感じるものですらあります。

では、なぜ、このノスタルジーに溢れる作品を今の時代に作ったのか。それが大事なポイントだと思います。

話は変わりますが、私は、常々、主にハリウッド作品に見られる、いわゆるポリティカルコレクト、つまり「政治的な正しさ」というものが創作物に影響を与えていることに疑念を抱いています。
正義は正義なのだから正しいのでしょう。
でも、それを振りかざすことが、作品の創造性や世の中を良くすることに繋がっているでしょうか?
私はそうは思いません。
なぜなら正義を振りかざす人々の多くは、平野耕太さん「ヘルシング」のセリフを借りて言うなら「正義を信仰しているのではなく、正義の持つ力を信仰している」からだと思うのです。

穿った考えだと思いますが、私はこの作品から、世の中を良くすることや創造性は、正義を振りかざすことではなく、エレガントであろうとする心と、職業的な誇りや思いやりからから生まれる、というメッセージを受け取った気がします。

そういう意味で、私はこの作品について、合理性を追求しすぎて大事なものを見失った私たちに、何かを教えてくれる希少で素晴らしいものだ、と感じました。

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