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【エッセイ】 もとまちユニオン ①

♬できたばかりの根岸線で君に出会った

 横浜が好きで、横浜に住みたいと思う。
 久しぶりに横浜に行った。
 元町に行きたいと思った。根岸線に乗った。小田さんの「♬できたばかりの根岸線で君に出会った」というフレーズがずっと頭に流れている。
 山手駅で下車して、改札を出ると景色が違うのに唖然とした。元町に行くには石川町だったのに…
 石川町まで歩こうかと考えたが、駅名が「山手」だけに、駅の出口からいきなり坂っぽかったので、改札に引き返した。改めて上りホームへの階段を上がった。
 それほど久しぶりだった。

 階段を登りながら、電車ではない通過音が聞こえた。「普段の電車じゃない!」と思い、途中から階段を駆けたが、ホームに出たときはそれが行ってしまった後だった。電気機関車「桃太郎」が見えた。惜しい!彼が来る前にホームにいたら、スマートフォンを向けたのに…

 まあ、これはここの本題ではない。

 「石川町」も「山手」も、ホームのすぐそばにすぐトンネルがある。ホームを出ると直接トンネルという近さ。駅の両側がトンネルだったりする。それも地下に潜るものではない。山を刳り貫くものだ。山の緑に囲まれている狭い感じも好きで、そんな根岸線があることも、横浜が好きな理由のひとつと思う。

元町商店街

 石川町に戻った。階段を降り、改札に向くと見慣れた風景にホッとした。
 20度超えの気温になるというので、12月なのに上着も持たず外出した。そのとおりで、着て来たら荷物になっていただろう。冬は日が低い。1時過ぎなのにオレンジ色の光が降りそそいでいた。
 私は冬が嫌いだ。嫌いな理由はいくつかあるが、そのひとつにこの「オレンジ色」の光がある。どれを見ても、どれを撮影しても、「オレンジ色」になってしまう。気に入らない。

 石川町駅から歩いて2分くらいのところに元町商店街がある。ここは、幕末の横浜開港でやって来た外国人の居留地が近かったため、西洋風のハイカラな商業地として発展してきた。「元町」という名前は、開港によりここに移住させられた旧横浜村の住民の「もともとの」という意味に由来する。
 洋服店、小物・雑貨店、家具店、文具店、ベーカリー、喫茶店…と小さな商店が軒を連ねている。ブランド品や舶来品を扱う店が多く、どれも、店構えに重厚で洗練された雰囲気がある。薬局ひとつ見てもハイカラである。ハイカラは年月に裏打ちされたもので、棚、商品の置き方、明かり…に風格がある。そんな商店街だ。「インバウンド」とか「観光立国」とか、意地悪くいうと「安い日本」とかいわれる昨今で、今日も観光客風の外国人が多いが、それ以前からここは横浜に住んでいる外国人が多くいる商店街だった。
 この街になじむようにしているものの、マックだスタバだとそんな店も増えてきた。それはちょっと違う場所でいいのではと思う。そんな街が元町だ。

元町商店街

ユニオンのシュガードーナツ

 この通りの中ほどに、洒落たオーラを放つスーパーがある。何も知らずに通りかかっても、「ここは…?」と思わせられる。そこが、「もとまちユニオン」である。
 中はさほど広くない2階建て。きれいに商品が並べられ、それらにも厳選感が漂う。
 外国人向けに輸入食材を多く扱うスーパーとして1958年に開業した店である。ズッキーニ、マッシュルーム、チョコレート、マヨネーズ、スパイス…60年代はまだ一般の小売店では扱われておらず、紀ノ国屋、明治屋、ここといったごく一部でしか手に入らなかったそうだ。それが、高い品揃えとなり今に至っている。いわゆる「高質スーパー」である。

もとまちユニオン

 入口を入りすぐ左側にエスカレーターがある。降りて表通り側に回ると、外を見下ろせるカフェ席がある。軽食からケーキ、喫茶まで一通りの品ぞろえ。席数はそう多くないが、天井までのガラスが明るく開放された空間を作っている。元町の通りを見下ろすカウンター席があって、私はここが好きだ。
 席を確保してからの注文となるが、ちょうどカウンター席があった。土曜の3時ころで、皆さんおやつの時間だろうから、注文に列ができていたが、幸い、カウンターの席が3席空いていた。ラッキー!
 注文の列に並んだ。メニューを見た。何を頼もうか。
 「シュガードーナツ」があるじゃないか!
 私はドーナツが好きだ。ドーナツとブレンドコーヒーに決めた。
 ドーナツはどうだったかというと… 太く、生地が柔らかくなく、硬くなく、中身がぎょっと詰まった重厚感がある。まぶしてあるグラニュー糖がたっぷりで、食べ甲斐があった。満足した。

シュガードーナツ

UNIONのロゴ&カラーに惹かれて

 外を眺めながらいただくのは気持ちいい。前回は何を食べたか?その日も柔らかい日を浴びながら、気持ちよくコーヒーと何かを食べた。
 ぼんやりもの思いしていて、ユニオンのエコバックがずっと欲しかったことを思い出した。
 エコバックを持ち歩くようになって久しい。そんな中、エコバックでも「オシャレ」をしたいと思う。まあ、そんなところがミーハーなのだが、今使っているのは伊勢丹のエコバック(もちろん伊勢丹チェック)で、持っている人をほとんど見かけないユニオンのエコバックが欲しいとずっと思っていた。UNIONロゴ&UNIONカラー(緑)のシンプルなデザイが人気だ。人気があるごとく、素敵だと思う。
 前回、なぜ買わなかったのか。少々高いと思った気がする。「高質スーパー」だけあって確かに高い。しかし、厚手のキャンパス地の丈夫な作りと、たっぷり入る収納というクオリティ、普段使いにも使えるデザインを考えると、決して高くはない。
 種類も多く、これも迷ったが、大きめのを1つ買って店を出た。

(2013年12月 9日)


UNIONのエコバック

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