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ネタバレ全開研究「仄暗い水の底から」はなぜあたたかい余韻を残すのか

Jホラーの代表的作品です。詳細に研究していきます。 
ネタバレ全開で行きます。
結末を知りたくない方はここで左様なら。また会う日までお元気で。


スタッフ キャスト

監督:中田秀夫
プロデューサー:一瀬隆重
脚本:中村義洋鈴木謙一
撮影:林 淳一郎
原作:鈴木光司

配給:東宝

【主人公】松原淑美:黒木瞳
     碇由貴子(幼児期)
【宝 主人公が守るべきもの】
     松原(浜田)郁子:菅野莉央(幼児期)
     水川あさみ

【日常の敵】離婚調停中の夫 浜田邦夫:小日向文世
【大きな敵】河合美津子:小口美澪

【味方】
弁護士・岸田:小木茂光
淑美の保母浅野麻衣子
佳代:原知佐子


【好ましくない存在】
不動産屋・太田:徳井優
管理人・神谷:谷津勲
弁護士:吾羽七朗

幼稚園園長:品川徹
保母:畑中映里佳

男の調停委員:野村信次
女の調停委員:志水季里子

河野:諏訪太朗
【郁子の友人】
喜代美:黒石えりか
玲子:大塚ちひろ
【コメディリリーフ】犬を連れた老姉妹:花原照子安田洋子



あらすじ

・淑美は離婚調停中。娘の郁子の親権を争っている。
・不動産屋をまわり団地に住み始める。
・郁子がいなくなる。屋上で見つかる。ミミコの文字ウサギのイラスト入りのかばんを拾う。女の子はいなかったはずなのに、と管理人
・天井からの雨漏りがひどい。上の階から足音も響く。雨漏りは日に日にひどくなっていく。
・クレームを言うが管理人は建物が古くてあちこちガタが来ていると取り合ってくれない。
・淑美は就職が決まり、郁子は保育園に通い始める
・行方不明になった美津子ちゃんの存在を知る。同じ保育園に通っていた。
・淑美は子ども時代母親が毒親で保育園で迎えに来てもらえなかったことがあった。淑美と美津子は同じような境遇だった。
・郁子がいなくなる。上の階の部屋でびしょ濡れの姿で見つかる。
・弁護士が助けてくれる。上の階は水浸し、少女の姿について、足音について弁護士の主導で謎は解明される。
・美津子の亡霊が淑美と郁子に襲い掛かる。
・淑美は郁子を守るため別れを告げる。淑美は美津子を抱きしめエレベータを昇っていく。
・高校生になった郁子は団地で淑美に再会する


総評 4点(5点満点)★★★★

【主人公の人物造形】
淑美は母性愛にあふれている。不動産屋巡りに疲れて商店街で歩こうとしなくなったとき娘の郁子(6歳)に対し声を荒げて叱るのではなく、新しい家の郁子の部屋がどれだけ素敵かを話し楽しさをあおることで歩かせることに成功する。母と娘の関係はだいたいにおいて好ましく描かれる。

淑美は夫の邦夫と離婚調停中だ。たばこを消すとき完全に火が消えるまで何度も何度も必要以上に灰皿にこすりつける。彼が神経質な性格であり、淑美はモラハラまがいの扱いを受けていたのではないかと想像できる。

以上の点から観客は淑美に好感を抱く。

しかし淑美もまた完璧な人間ではない。郁子が幼稚園で熱を出したと連絡を受けたらタクシーで飛んでいき、保育士たちに「あなたたち娘になんかしたんじゃありませんか?」と根拠もなく責め立てる。
冒頭では娘がいながら住む家さえ決まっていない。
就職の面接では途中でありながら娘のお迎えが気になって途中で退席してしまう。
不安定な一面がありトラブルになることも多いのだろう、陰ながらだったら応援するけれど現実社会ではあまり関わりたくない人だと私は彼女に対して感じた。

以上の事から観客は淑美を心から応援し、このピンチを乗り越えて最後は母娘で幸せな生活を送れるようになることを望むが、その一方で全く問題がないわけでは淑美が少しぐらい痛い目にあうのはいい薬だと彼女の苦しむ姿を楽しむ思いが心の片隅にある。


【美津子のSOS】
体調を崩した郁子の世話を淑美は叔母に頼んだ。淑美にとってほかに頼める人がいないこと。淑美の母親が自分勝手なだめな母親だったことがわかる。また過去の回想シーンでは幼稚園時代お迎えに来てもらえなくて一人だけ夜遅くまで残されているシーンが描かれている。

叔母が帰った後郁子の枕元で淑美は居眠りをする。そのままある少女のシークエンスへとうつる。
少女は幼稚園でひとりだけお迎えに来てもらえず独りで教室に残り帰っていくお友達を眺めている。

一連の流れから観客は淑美の少女時代だと思うが、ミミコのかばん、黄色いレインコートからこの少女は美津子ではないかと考えるようになる。淑美が同じかばんとレインコートを持っていたということは考えられるが、少女が現在淑美たちが住んでいる団地の坂道を登るシーンで、この少女が美津子であることを確信できる。

美津子はエレベータに乗る。作業服を着た二人の男性と同乗する。この男性の意味するところは何なのか。
美津子が行方不明になった日は、屋上のタンクで最後に作業された日と一致する。この男性二名が屋上での作業を終えた後、美津子は屋上に行き、誤ってタンクの中に転落してしまう。つまりこのシークエンスは美津子が亡くなった日を描いているのだ。

居眠りをする淑美の頬に天井から水が落ちる。これは美津子から、同じ種類の人間である淑美に対して、私を助けてほしい、というメッセージを送る行為なのだ。

【印象的な映像表現】
◎見たいものをなかなか見せない
撮影林淳一郎による映像にも印象的なものがあった。

淑美がゴミの集積所でポリバケツのふたを開ける。何かを見つけショックを受けた表情をする。中に入っていたのは重要な小道具になるミミコのカバンだった。
このシーンで「淑美がポリバケツのふたを開けて動きを止めるカット。」「ミミコのカバンのカット」とカットでつなげば瞬時に観客に伝えることができるが、カットをかけずにカメラは淑美がポリバケツのふたを開ける動きからバケツの中までワンカットで寄っていき移動した先にごみの上に置かれたミミコのかばんがある。

黒木瞳が驚いたアクションで観客は「何を見たのだろう。中身を見たい」と思うが、すぐには見せずに観客を焦らす。移動する数秒のあいだ観客は見えないものを見たいと欲求を掻き立てられる。

同様のパターンは郁子のお迎えが遅れた夜でも使われる。

幼稚園の正門、閉まっている。→走って来る淑美。門が閉じられていて、踵を返し「いくちゃん」と娘を探す。→息を整えてしばらく考える。なにかに気づく。→顔を上げる。→カメラ、レール移動して淑美の背後にまわる。→淑美の肩なめで電柱の張り紙。(この子をさがしています) 張り紙の内容の詳細は映さない。
「淑美が何かに気づく」から、「人探し張り紙」とわかるまで時間をかけている。

終盤(淑美が亡くなる日)屋上に淑美が懐中電灯を持ってくるシーンにおいて
懐中電灯をつけながら近づいてくる。→淑美何かを見つける。カメラ横移動。→カットが変わって穴から水があふれている。
何かをみつけた淑美。なにをみつけたのかはすぐには見せずカメラ移動する。

ここではワンカットで種明かしはせずカットを割って水があふれていることを伝えている。

タイムラグを置いて焦らすことにより結果を知ったときにショックを増幅させることに成功している。

◎お迎えが来ない
雨の夕方の幼稚園、一人だけお迎えがこなくて郁子が教室に一人ぼっちで取り残されたシーン。
手前は広い教室。画面の下半分以上を誰もいない空間を映し、ドアを半開きにしてできたほんの小さな屋外を映した空間に帰っていく子どもや親たちを映している。たくさんの人々のエネルギーをぎゅっと凝縮して狭い場所に閉じ込めたようだ。
郁子は彼らとは別の世界に生きているような印象を受け、不安や孤独、さびしさといったものが伝わって来る。

まったく同様の構図はミミコのカバンをもった美津子とおもわれる少女が来ない母親を待つイメージカットでも使われている。


◎手持ち撮影の意味
幼稚園でのかくれんぼのシーン。郁子は友達から離れてひとけのない物置に隠れる。
廊下を奥から郁子に向かって映像は近づいていくが、手持ち撮影で画面の揺れる。誰か人がそこに郁子がいることを知って彼女に向かって近づいていっているということだ。神視点であればレール撮影にするところだ。(近づいてくるのが人でないのであれば揺れない)

【結末について】
母親である淑美の死で結末を迎えるバッドエンドだが、後味は悪くない。それはなぜだろう。

まず美津子の霊がどんなものなのか考えてみたい。
美津子は幼稚園児だった。母親は自分勝手な人間で幼い美津子を置き去りにする。お迎えに来てもらえなかった雨の日、一人で帰ってきた美津子は屋上に登り興味本位でタンクをのぞいたところ、お気に入りのミミコのかばんを落としてしまい、拾おうとして誤って転落してしまう。そのまま現在まで行方不明だ。
美津子は淑美、郁子母娘に襲い掛かるが、それは傷つけようとしているのではない。
屋上のタンクに閉じ込められ切実に助けを求めているだけなのだ。
美津子が最初に登場するのは本編開始から9分。エレベータの中で淑美の手を握る。
淑美の郁子の手だと思うが、その手は郁子の立つ場所と逆の位置から出てきている。
不気味ではあるがかわいらしい女の子の手だ。美津子は例であるとはいえ幼稚園児であることにはかわりない。

結末にちかいシーンで、自宅の風呂で溺れ、倒れているところを助け出した少女を郁子だと思って抱いて、エレベータに乗った淑美だったが、郁子が部屋から出てきて、淑美に向かって歩いてくる。

郁子はそこにいる。だったらいま自分が抱いている女の子は誰なのだ、とおそるおそる見るとミイラのようにおぞましい姿に変わり果てた美津子だった。

そのとき淑美は美津子から離れ、郁子と一緒に逃げるという選択をせず、「まま」と言いながら抱きついてきた美津子を抱きしめる。

淑美も美津子も母親が毒親で同じような境遇を送ってきた。美津子を救うことができるのは自分しかいない、と淑美は考えたのだ。
外見はおぞましい姿だが、淑美は美津子を差別しない。そんな心の美しさに観客は心を打たれるのだ。

近づいてくる郁子。泣いているのは、母親恐怖や悲しさと同時に母親が自分ではなくその少女を選んだ嫉妬心もあるのだろう。

淑美は郁子を拒絶する。ふだんはやさしく「郁ちゃん」と呼びかけるのに、「郁ちゃんだめよ」→「止まりなさい」→「郁子」と強い口調で命令する。

自分は美津子と一緒に死の世界に行く。しかし娘をそっち側にいかせることは拒絶する。淑美は郁子を守ったのだ。

10年後高校生になった郁子は淑美と再会する。郁子は母親が死んだことを聞かされていなくて、(なにも聞かされていないということは行方不明のままなのかもしれない)かつて暮していた団地でまだ生きていると思っている。

以上のことを踏まえこの作品を観た後の美しい余韻は次の理由だと私は考える。
・淑美が亡くなったところ、遺族が悲しんでいるところを直接描いていない。
・淑美は美津子に寄り添うことを選んだことで美津子の魂は救われた。
・おぞましい姿にかわりはてた美津子だったが、美津子が助けを求めていると知ると、淑美は美津子を抱きしめる。外見を気にしない淑美の心の美しさに心打たれる。
・郁子が死の世界に行かないように、母親の淑美は娘を守った。
・郁子は高校生になって母親と再会することができた。これからも会える希望がないわけではない。
・全編を通して母親の娘への強い愛が感じられる

【恐怖シーン なぜ怖いか】
・エレベータの中で淑美が女の子の手を握る。女の子の手は郁子が立っているのと逆の方向から出てくる。
 →現実ではありえないこと

・防犯カメラの映像。最初のカットではいなかったのに、次のカットでは女の子の姿が映っている。
 →現実ではありえないこと

・不在と思って帰ろうとしたらドアが開き女の子が出てくる
 →現実ではあり得ること。女の子の姿や表情が快活ではない

・天井の水漏れがとまらない。徐々にひどくなっていく
 →トラブルを予感させること

・廊下の照明がシーンによっては暗くなっている
 →暗いと見えないところに何かがあるかもしれないと思う。わからないことが怖い。

・ドアの隙間から屋上を歩く女の子の姿を見るが、行ってみると女の子はいなくて女の子の身に着けていたカバンが落ちている。
 →カバンは女の子が姿を変えたものと考えれる

・隠れている郁子のもとに足が近づいてくる。顔は見せない。
 →正体がわからないから怖い。襲ってくるのかどうかわからない。

・その足が立っている床から水があふれてくる。
 →水でつながっている。例えば炎のように水でないものがでてきたらまた違った印象になる。

・蛇口をひねると髪の毛が出てくる。2回登場する。一度は数本。二度目は大量に。
 →汚物ではだめ。指のような人体だと犯罪になり警察を介入させることができる。髪の毛程度だと誰も助けてはくれない。

・屋上のタンクの中から叩く音が聞こえる。その後強い力が加えられて変形する。
 →少女であるはずなのに思っていた以上に力が強い。

・風呂の水の蛇口が止まらない。水が真っ黒。中から手が出てきて郁子をつかむ。

 →現実ではありえないこと。霊の仕業だと想像できる。

・郁子と思って抱いていたら別の子だった。変わり果てたおぞましい姿になっていた。抱きついてきた。
 →現実ではありえないこと

・話している郁子の後ろに美津子が立っている。
 →現実ではありえないこと


詳細研究

【淑美は離婚調停中。娘の郁子の親権を争っている】
●タイトル。
オープニングはなくいきなりタイトルが出る。

●水の中の映像。
キャスト、クレジット。

●幼稚園、雨。
雨=水。水に終始苦しめられる。
教室から外の見る視点。
長い髪の女の子が外を見ている。一人取り残されている。
 →幼少時代の淑美
保育士が一人。彼女に気がつく。
淑美ちゃん、お迎えはまだ来ない。
淑美に向かってカメラ寄ってゆく。
・なにかトラウマを抱えているようだが、それが何かはわからない

●淑美、窓から外を見ている雨。

●廊下から元夫の邦夫がやってくる。淑美の近くに座る。タバコを取り出す。
奥から男がやってきて、松原淑美と呼ぶ。淑美と園児は同一人物か?

●財産関与。娘の親権は譲らないの一点張り離婚調停か?
娘の面倒なんて今までちっとも見たことがなかった。
弁護士はご主人なりに頑張ってきた
淑美は反論する誕生日を忘れている。
お住まいは今、娘と2人で住める場所を探しています。今週中には決めたいと思っている。
→まだ住む家が決まってない
→脚本は中村義洋。アマチュア時代の作品「残暑の蚊」で汽車の時間は40分後なのにすっぽん料理をはじめたのが印象的だった。

前に精神科に通院されていたことはありますか?あの人がいったんですか?
淑美はメンタルが危ない。
それは結婚前の話。十年以上たつ。
その頃、私は小説の校閲をしていた。その時、担当したものにひどく内容が残酷なものがあった。本当にひどくて。それ何度も読まなきゃいけないんです。
それで一時的に通院したということですか?
その程度じゃ特に問題ないでしょう。
六歳以下のお子さんの親権はよほどのことがない限り、母親に有利な場合が多い。安心する淑美

・主人公の淑美は離婚調停中。親権を争っている
・住む場所が決まっていない
・一時精神科に通っていたことがある

●タバコを吸っている。邦夫。
精神科に通ってたことは関係ないでしょう
関係あろうがなかろうが、事実は事実を話して何が悪い
今更無駄だと思います。

淑美不動産屋をまわる。団地にたどりつく。ミミコのかばんを拾う。あやしげな団地
●雨の中 不動産屋。淑美と郁子が出てくる。

●商店街で道を聞く。
郁子立っている疲れた表情。
次で最後にするから。まあ先に行っちゃうよと歩き出す。
間取り表を見ながらここは何をする部屋かな?ご飯を食べるところ、寝るところ。小さいところは郁子の部屋。
ママ先にイクちゃんの部屋見てこよう
「だめ」郁子走り出す。
 →とても疲れそうな状況でありながら淑美は郁子に声を荒げない。

●雨の中、川沿いの道を歩く。舗装されていない道。

●団地の前
雨が降っている。坂道を歩く。
上から俯瞰。
何階まであるのだろう。いくちゃん数えられる?
不動産屋「お手頃だと思います。」
松原さんお待ちしていました。不動産屋の声をかける。

●どうぞ途中にはいる
管理人は常駐しています。帰りが夜でも安心です。
管理人ビデオを見る。防犯カメラを見る。
古いですけどねとエレベーターに乗り込む。

事務所から。映像が見える。
神谷さん拭いといてって言ったでしょ。
 →年下だが不動産屋の方が立場は上。
さっきバケツの水がこぼしちゃった。床に水が流れている。
天井から水がこぼれている。
→管理人は老人。やる気がない
→実は神谷は処理したけれど、霊の力で濡らしてのか
→濡れている、というのはこれから始まる事件の暗示。

【恐怖】
子供不安そうに手を握る。
→郁子の手ではない
 淑美の左手を、右から現れた手が握る。郁子は淑美の左側に立っている。

●エレベーターがあく。
一瞬だが奥に伸びる廊下が不気味。
手のぬくもりを確かめる残った温もり。

●防犯カメラの映像
エレベーターに映る淑美。
淑美がいて、不動産屋がいて、奥からもう一人、人影が出てくる。
【恐怖】管理人ビデオを見直す。人はいない。

●部屋の中に入る。
薄汚れた部屋
郁ちゃんいくつ? もうすぐ六歳。
郁子の部屋どこかな?ここなんかいいんじゃないかな
ここだと幼稚園も歩いていけます。来週内装業者が入ります。見違えるようにきれいになります。
湿気がすごいですね。
このところ雨が続いています
天井を見る不動産屋。水のシミがある。
隠すように、キッチンお見せしてなかったですね、どうぞ。
キッチンもすぐに綺麗になります。
先ほどのお客さんもお気に入りになりました。早い者勝ちです。

【郁子を探す】何度か郁子はいなくなる
 →小さな女の子がいなくなることは、かなりのパーセンテージの観客を不安にさせる。
郁子が居なくなっている。郁子を探す。
外に出ちゃったのかな?
廊下には居ない。
外に出てゆく淑美。
老婆2人が話をしている。管理人。みませんよ。管理人も老婆も。みませんよ。猫も見てないって。
 →コメディリリーフ。ほっとさせる
 →ここでギャグを持ってくることにより、最終的には見つかるのだろうなと安心感を抱く

エレベーターの中にいる映像。
エレベーターを出る映像。
何階かと聞くと管理人は、映像を見るだけなら一緒だからという。(何階かわからない)

エレベーターは7階を指している。
郁子、屋上に出る。
屋上を走る。
郁子、何かを見つけ、そちらのほうに向かって行く。

●誰もいない廊下を奥から。
淑美がエレベーターを降りる。
7階だろうか?
淑美、階段を上って屋上に出る。
郁子を探す。郁子が出てくる。
探したのよ。どうしたの。
これ落ちてた。

赤いかばんが落ちていた。ミミコの文字とウサギのイラストの子ども用のかわいいかばん。
→重要な小道具
郁子は気に入ったらしく身に着けている。

●管理人室
女の子は誰も住んでいないのにね。
中身を開ける。
管理人と不動産屋は郁子にあげるつもりだった。
淑美は強い口調で駄目と言う。
誰の物か分からないんですから

16分

ここまででかなり引き込まれる。

なぜ面白いのか
・小さな女の子がいなくなったようだ。かばんからわかる。
・主人公は不安定。信頼出来るかどうかわからない。
・住む場所が決まっていない
・離婚調停、親権争い。
・主人公の過去のトラウマ
・怪しい団地 水が落ちてくる 

【淑美母娘、団地に引っ越す】 
●引っ越し。ここに引っ越してくるようになった。

●管理人室。落し物としてミミコのかばんが置いてある。
【ミミコのかばん】

●部屋
化粧品か何かを持って走る子供を追いかける淑美。最後は二人で抱き合ってベッドに倒れこむ。
→深い愛情でつながっている母と娘がいとおしい
結構下に響いちゃうね。気をつけないとね。
淑美の口調を真似する郁子。

天井のシミを見つける。気味悪そうな不安げな表情。
→下を気にしているが、上から被害を被る。

●団地の外、自転車置き場。

●歯磨きをしている郁子。
一つの歯で10回みがきなさいというしつけ。
鏡に映る母と郁子。
今日から友達になる郁子ちゃんを紹介します。初めましてと自己紹介の練習。郁子は浮かない顔。(たんなる不安か、それとも何かを暗示しているのか)
「よろしくお願いします。」と練習。

【天井から水が漏れる。この部屋はおかしい】
●朝
出かけるしたくをしている淑美。腕時計をはめる。床が漏れている。
天井から漏れている。
床に落ちる水。洗面器をもってくる。
淑美苦しそうに目を閉じる。頭を押さえる頭痛がするのだろうか?頭痛がする演技。こめかみを抑える。
台所で水をくみ、薬を飲む。何の薬だろう。心のために薬だろうか。
 ←かつては精神科に通っていた。

コップの中に髪の毛が一本入っている。気持ち悪そうに顔歪める。
←郁子のコップに大量の髪の毛が出てくる。

●エレベーター。淑美と郁子乗る。いらっしゃいませ何階ですか? かしこまりました。(エレベータガールの真似)
一階のボタンが消えている。
 →のちに淑美は邦夫の仕業ではないかと思う。実際は彼がやったのかどうかはわからないが、そういうことをするような男だということだろう。
淑美、郁子の手をひっこめさせ、自分でボタンを押す。

●管理人室
ノック。
天井から水漏れをしているんです。
神谷、建物自体がだいぶ古いですから、そこそこガタが来ています。一応、日誌につけておきます。

水が漏れていることに対処をお願いするが、取り合ってくれない。

郁子は落とし物の箱の中を興味深く見ている。ミミコかばんの持ち主は現れたようだ。

【郁子が幼稚園に入園する】
●幼稚園。
保育士が郁子を紹介をする。はっきり自分の名前を言う郁子。
外から見ている淑美。
淑美を見守っている不安そうだがやがて笑顔。中年男性。園長だろうが。
園長の話、自由教育。みんな元気で明るい子供たちすぐに友達ができます。
お茶を出され、ありがとうございますと言う。

●園長先生、小林君が来ました。
男の子。
津島先生のこと、バカって言ったんだって、ダメだろ?
2人の子に先生のことバカって言ったんだよね。太っているからバカだって言ったんだよね。そう言ったんだよね。
男の子、泣きそうな顔。
淑美は苦々しく見ている。
執拗に責め立てる。
→幼稚園の人たちもどこかおかしい

〇黒木瞳の演技
自己紹介する自分の娘のセリフをまねるような勢いで夢中になってみる。
やや不安そうに視線をずらす。(どのような子供に囲まれるのだろうと確認する)
園長に別室に通される。猫背気味に前かがみになって話を聞く。(娘のために下手に出る)
お茶が出される。出してくれた人に礼を言い、園長にも向き直り礼をする。
「小林君です」と言われ視線を声のした方に向ける。笑顔のまましばらく見て、笑顔が消える。なんだろうと興味深そうに見る。(なにが起こるのか知りたい)
小林君を心配そうに見る。
小林君が淑美を見ると目をそらす。小林君が先生たちに向き直ると小林君の方を再び見る。
叱られている小林君。顔を背ける。(助けてあげたいと思いつつそれはできない。そこまでの勇気はない)

【ミミコのかばんが捨てられている。上の階にクレームをつけようとしたら黄色い少女を目撃する。不動産屋もまともに聞いてくれない】
●服を整理している淑美。天井から足音が響く。

●ゴミの集積場。
ゴミの箱を開けると落し物だったミミコのかばんが捨てられている。
→管理人の神谷が捨てたと明かされる

淑美がポリバケツのふたを開けて一瞬動きを止める。
カットではなく、ワンカットでカメラはバケツの中まで寄っていく。
移動した先にごみの上に置かれたミミコのかばん。
→黒木瞳が驚いたアクションから、ミミコかばんみせるまで時間がある。移動する数秒のあいだ観客は見えないものを見たいと欲求を掻き立てられる。

淑美去ってゆく

●部屋
上の階から足音。水が滴る。
淑美洗面器をこぼしてしまう。

●淑美、上の階を訪れる。
ブザーを押す。
誰も出てこない。
あきらめて戻る。

【淑美、黄色いレインコートの少女を見る】
エレベーターを押す。ドア締まる。淑美気づく。
訪れた部屋のドアが開いている。
慌ててボタンを押すが、ドアは開かない。
下がっていくエレベーターから。女の子がこちらをのぞいている。←管理人「女の子はいないはずだったのに。」
【恐怖】

●淑美戻。
廊下の照明がさっきより暗くなっている。
もう一度ドアを叩く。ブザー押す
【恐怖】

●不動産屋に電話をする。
それはないと思うけれど、上の部屋かな?
誰もでてこなくて。
食事を食べおわる郁子。
管理人に伝えておきます。
だから管理人が何もしてくれないから電話しているんです。
うちは管理のことまで関わっていない。

したたり落ちる水滴を興味深そうに眺める郁子。
洗面器にうつった顔が歪む

【淑美就職する】
●一人で待っている郁子。迎えが来ない
手前は広い教室。ドアを半開きにして郁子が立つ。隙間から外が見える。
迎えに来た子供たちの声。(たくさんの人がいるような声)
実際映るのは3人だがたくさんの人がいるように感じる。
→淑美、美津子と同じ経験をしている

●会議室で待っている淑美。
小説原稿募集のポスター。出版社か?
携帯を取り出す。
「お待たせしました。」中年男が入って来る。
淑美携帯を慌ててしまう。
 →前のシーンから幼稚園にかけようとしているとわかる。お迎えが遅れるということだろう。
就職面接。
「経験あるんですね。大手ですね。うちはご覧のように小さな出版社です。こんな小っちゃいところでいいんですか?」

●幼稚園
子どもたちは次々と帰っていく。
窓の小さな隙間からたくさんの人たちが出てゆく。(実際にたくさんいた 笑)

手前は教室の広い空間が空いている。
ドアを半開きにして郁子が立つ。隙間から外が見える。たくさんの子どもたちがお迎えの保護者達と帰宅していく。
画面の上部、ほんの小さい隙間の中にたくさんの人がいる。
→人物の孤独を表現している。

●出版社
携帯電話で電話をする。電話のベル。

●幼稚園。事務室。
淑美が電話をしたシーンとつながっているようにみえるが、現代ではない。淑美の子ども時代の回想。
淑美も子どものころ寂しい思いをたくさんしたということ
保育士、出る。
「どうなってるんですか?淑美ちゃん一人でずっと……そんな勝手な……」
淑美の母親は自分勝手な性格。
 →叔母。母親の妹「悪い母親」
「お父さんが迎えに来てくれるそうよ」
「ママは?」答えない保育士。
子供の頃のことを思い出している淑美。

●会議室で電話をする淑美

●雨の中、ひとり歩く郁子。
黄色いレインコートの女の子を見つける。

●面接担当者、電話をしている。
「そう言われましても今日明日じゃ対応できないんですよ」零細企業でたいへんそうだ。
「私〇〇出版社で校閲を担当していました。よろしくお願いします。」
淑美慌てて行く。
 →淑美の態度は非常識だが、それでも採用せざるを得ないことは担当者の電話で理解できる。
  「そういう状況だったら仕方ないな」と観客に思わせる。
 →採用されて仕事を始めたらもっと大変なことになるのではないか、と心配になる。

【美津子ちゃんが行方不明になっていることを知る】
●淑美、幼稚園に走ってくる。
正門は閉まっている。
張り紙を見つけて驚愕する。この子を探しています。河合美津子ちゃん。
平成五年生まれ。長い髪目は写っていない。黒のロングヘアー。黄色いレインコートフード付き。
 →目がぼやけていて写っていない。不気味(雨で滲んだ、という設定か)

 カメラワーク、
以下ワンカットで
・幼稚園の正門、閉まっている
・走って来る淑美。門が閉じられていて、踵を返し「いくちゃん」と娘を探す。
・息を整えてしばらく考える。なにかに気づく。
・顔を上げる。
・カメラ、レール移動して淑美の背後にまわる。
・淑美の肩なめで電柱の張り紙。(この子をさがしています)
 張り紙の内容は詳細は映さない。
 →「淑美が何かに気づく」(観客はなにに気がついたのか見たい)から、「人探し張り紙」とわかるまで時間をかける。(←ごみ置き場のミミコのかばん)

カット。淑美、電柱に近づいてくる。サイズはニーショット(ややひざより上)ではじまり、淑美近づきバストとアップの中間のサイズに。
カット。張り紙。
カット。張り紙の寄り。河合美津子ちゃん行方不明の詳細。

行方不明になったのは7月14日。
あの少女だと思い出す淑美。

●電車の走行音。近くの川沿いの道を探す。
男性と小さい女の子が歩いている。
邦夫が郁子の手を引いて歩いてる。
「勝手なことしないでよ」
「郁子が一人だけ待たされてどんな気持ちで待っていたかわかるのか」
無理やり手を引こうとする。
郁子動こうとしない。

車のヘッドライトが当たり顔が光る。
→映像表現。車どおりが多い道沿いの歩道なので、ヘッドライトが当たるのは納得できる。

32分

【母娘の優しい時間】
【母子の優しい時間ここから】
●夜の街歩いてくる。話し合う声が聞こえる。
家族が公園で花火をしている。
花火越しの子供カット。
淑美はやりたいと聞く。買って帰ろうか郁美のアップ。
 →花火をするシーンはなかった。あったほうがよかったと思う。観客は出てくると期待する。なかったのでフラストレーションを感じる。

●団地に帰ってくる。
坂道のぼる。
花火どこでやろうか。ベランダでやったら怒られちゃうもんね。
郁子、ママだけで平気だよ。
パパに何か言われた?
首を振る。
抱き締めてごめんねという。
ママもね、いくちゃんさえ一緒なら何があっても平気
→このセリフは高校生になった郁子から確認される
→淑美は問題がないわけではないが必死でなって生きている。

34分

●帰ってくる淑美と郁子。
留守番電話、用件が一件入っている。
出版社から電話。明日から採用になりました。
合格しちゃったと抱き合って喜ぶ。

●エレベーター最上階までご利用ありませんか?
上に登って行く。

●エレベーター、4階で止まる。
照明は少し明るい。
外を見る。人は誰もいない。
屋上に通じる階段。
4階はおもちゃ売り場です。上に参ります。

【母子の優しい時間ここまで】
【淑美と郁子、美津子と距離を縮める。淑美の心は乱れる】
●エレベーター外。親子が出てくる。
立ち止まる。

ドアの外に黄色い服を着た女の子。屋上を歩いている。(プロットポイント)

もう一度見ると。ドアが閉まっている。
ミミコのかばんが落ちている。
郁子喜んで拾おうとするが、ダメと言って手を掴む。
痛い痛いと言って郁子は泣く。
【恐怖】

女の子がいたのに、いなくなっている。ミミコのかばんだけが残っている。

なぜこのシーンが怖いのか
・女の子がいるのが見えた
・ドアをあけたら女の子がいるはずなのにいなかった
・女の子の代わりにカバンだけが残されていた。女の子がかばんに姿を変形したのか。女の子がいたという証拠なのか。
・前のシーンで現れた不気味な女の子と同じ格好をしていた。
・不思議なこと、現実には起こりえないことだから怖い。
・ただいなくなっただけではなくその子の持ち物が残されていたから怖い。

●淑美かばんをゴミ箱の中に捨てる。

37分

●お風呂に入る母と郁子。
淑美、ため息。

「だってみっちゃんのじゃないでしょ?ずるいよ」郁子は一人で話をしている。
みっちゃんという名前の架空の友達。
→行方不明になった子もみっちゃん

もうお湯を止めて出なさい。
このお風呂が好きなんだもん。ずっと入ってる。
タオルに空気を入れて友達にしている。

●幼稚園。
かくれんぼしよう。
郁子隠れる。
友達2人が隠れているところにいく。
友達に「こっち来ちゃダメあっち」と言われ。裏に出る物置のところに出る。
幼稚園の物置に隠れて「もういいよ」という。

廊下から。カメラがゆっくりと近づいてくる。手持ち撮影。カメラ揺れている。
手持ち撮影ということは人が歩いているということ。(神視点であるならばレールを使う)
女性の足が近づいてくるのが見える。水が滴り落ちている。濡れている。
黄色いレインコートか。
靴が水で濡れる。水がどんどん溢れてくる。
【恐怖】
 →足元に水たまりができる様はおしっこをもらしたようだ。

●幼稚園の中にタクシーが入ってくる。
●淑美が入ってくる。郁子寝ている。
急に吐いて倒れるなんて、今まで一度もなかった。なんか無理なことさせたんじゃないんですか?
あなたたち、うちの子に何したんですか?
園長、手を掴んで出てゆく。
郁子ちゃん最近様子がおかしかった。独り言が多かった。
 →淑美の心は不安定。

●外に連れて行く。
離婚なさったそうですね。
それが影響しているんでしょう。
そういう子どもにはよくあることなので。

子どもたちの絵が飾ってある。
みっこちゃん、早く来てね。みんなみっこ、早く帰ってきてね。
待ってるよ。
みっこちゃんがいなくなったのか?

河合美津子ちゃんはうちの園児だったんですよ。
母親はこの子を置いて出て行ってしまった。
美津子ちゃんは黄色い服を着ている。
私は変質者による誘拐だと思っている。
◎河合美津子ちゃんの詳細を聞かされる。

●調停委員から
毎日のように。幼稚園のお迎えは毎日のように遅刻している。
そんなの時々はありますが毎日じゃないです。
お子さんの肩を引っ張って脱臼させた。
そんなことありませんよ。
夢遊病のような夜歩きの経験があるというのは事実に反しますか?
それは子どもの頃の話です。両親が離婚して、自分でも気づかないうちにそういうことをしていたみたいなんです。ほんの短い間だけですし。絶対にそんなことはありません。
 →子どものころ淑美は夢遊病だった。

●邦夫と弁護士。「淑美に能力がなければ……」
「勝手なことでっち上げないでください」
西岡という弁護士と夫は話している。
俺はただ郁子が心配なだけだよ。
まともにやっても勝てないからって卑怯な真似しないで。
調停委員「次の期日を決めます。」
夫、タバコを消すアップ。執拗に力を入れて消す。
 →執拗に消す。神経質な性格

淑美の想像シーン。夫がエレベーターの階の数字をタバコで消している。
「あなたがやったんでしょ、屋上のバッグもあなたが置いたんでしょ」と詰め寄る。
乱闘になる。
淑美の担当の弁護士・岸田が見ている。
廊下で泣いている淑美。
弁護士が話しかける。
弁護士「調停の途中ですよね。そういうところを見せると、情緒不安定と見られてあまり良くないですよ。」

●事務所。弁護士は秘書が今日は休みなのでと言って自分でお茶を出す。ミルクと砂糖がなかった。
→男性がお茶を出す。ミルクと砂糖がなかったとそそっかしい一面を見せてほっとさせる。
 観客に好感度を持たせる。

郁子を取られたら私……。
相手は本気のようですから、どこにつけこんでくるかわかりません。心神耗弱でせめられたらさすがに厳しい。
今は大事な時です。郁子さんと暮らしたければ、あなたがしっかりしなければなりません。
そんな元気なくてどうするんですか。大丈夫ですよ。一緒に頑張りましょう。
 →岸田弁護士という味方が登場する。本当の味方なのか、みせかけなのかまだわからない。

【少女時代の淑美と美津子は同じような境遇だった】
●川沿いの道。舗装されない道を一人で歩く淑美。
曇り空。(雨は降っていない)

●家の中に叔母がいる。
郁子寝ている
叔母さんしか頼める人がいない。ダメな母親を見てきた。
姉さんは自分のことしか考えてなかった。
すぐに帰ってゆく。じゃあねと言って手を振って出て行く。
水が滴る音がしている。洗面器を置く。
郁子の寝ているところに来る。
水が滴る音。

●ベッドの横で眠っている淑美。
郁子も近くで寝ている。
水滴が広がってゆく。
水が淑美の顔に落ちる。

●回想シーン。雨。一人で幼稚園で待っている。
 →最初は淑美の回想だと思う。淑美も子ども時代同じ経験をしていたからだ。しかし進むにつれてこの少女は美津子なのだとわかる。
 →最初から淑美ではなく美津子。
ミミコのカバン。(淑美ではなく美津子)
カメラは斜め。
郁子と同じ手前に空いた空間。
女の子の屋上に落ちて行ったのと同じ鞄。黄色いレインコートかぶるフードをかぶる。
女の子、歩き出す。

●川沿いの道を歩くレインコートの子。カメラは斜め。
団地女の子入ってゆく。
 →ここでこの女の子は美津子だと確信する。
  淑美がミミコのカバンを持っていた、黄色いレインコートを着ていた、 ということはあり得るが、この団地に住んでいたということはない。

俯瞰から女の子。
この女の子は淑美ではなくみっこちゃんなのか?
団地の建物の中、歩く女の子2人の男がいる。作業員のように制服を着ている。
→タンクの作業。行方不明になった日と作業の日は一致している。これは少女が亡くなった日である。

エレベーターに乗るフードを取る。
フルサイズから、カメラ女の子にバストシヨットで寄って強調するが女の子の顔をはっきり映さない。
エレベーターがあっていく。

〇淑美の子ども時代だった子がいつの間にか美津子にかわっている。
淑美=美津子だった。
美津子は子ども時代の淑美であり、淑美は美津子を救うために、最後は寄り添うために美津子の世界に行ってしまう。
〇美津子が淑美に対してSOSを送っているという意味だろうか。

【郁子がいなくなり探す。上の階にいるところを見つける】
●ベッドに戻る水が滴っている。目覚める淑美。
ベッドの子供がいなくなっている。
枕の上に水が落ちている。
水はさらに激しく落ちる。
郁子を探す。
鏡が部屋の隅に置いてあり、淑美が映る。
次々と部屋を空ける。
ドアを開ける。出てゆく淑美。

●エレベーターに乗る。降りる。建物を探す。
管理人室には誰もいない。管理室の中に入る。
防犯カメラの映像を見る。どこにもいない。
エレベーターの動く音がする。
7階に到着する。
【郁子を探す】

◎子どもがいなくなった。この後の展開の予想。
・母親の精神が異常をきたしていた。すべては母親の頭の中だけで起こったことだった
・母親の精神が異常をきたしていた。それを利用した第三者による誘拐事件だった
 →その場合犯人が逮捕されて、子どもが戻ってハッピーエンド
・非現実的な力(例えば幽霊)の仕業だった。闘って勝ってハッピーエンド
・非現実的な力(例えば幽霊)の仕業だった。娘は守られて母親だけ死ぬ。
・変質者による犯行。残酷なバッドエンド。

参照
母親の心が不安定で本当にそんな子どもはいたのか?と母親が疑わしく思える作品として「バニーレイクは行方不明」があった。

●回想シーンママと言って歩いてくる郁子。
ミミコのかばんを身に着けている。

◎子供を探すのは2度目。
【恐怖】
防犯カメラに映る淑美の姿。(誰目線? 不気味)
エレベーター動く
子供の声笑い声が聞こえる。
防犯カメラの映像に、人が乗っている映っている。
前のカットでは載っていなかった。
エレベーター到着する。出てくる淑美。
9階か? 7階までしかなかったんじゃなかった?
 →淑美が到着したのは9階のように見える。(文字が小さくて確信はできないが)異世界というわけか

風にあおられる。ドアしまっているのになんで風が吹く?
ドアを開けて屋上に出る淑美。
黄色い服を着た少女が。タンクの物陰に隠れる
郁ちゃんと言って近づいていく。
ハシゴを上る淑美。郁ちゃんいるの?と声をかける。
カバンが落ちている。

カバンが落ちている場所によって。どこに行くのか、どこに行動したのかを示している。
・屋上で郁子が拾う→管理人に届ける→ゴミ捨て場に捨てる→なぜか屋上にある→淑美がゴミ捨て場に捨てる→なぜか屋上にある→郁子のバッグの中にある

●夫に電話をする。郁子は来ていない。
郁子はどうしたんだ?
足音がする。電話の途中で駆け出す。

●上の階の部屋
水が溢れ出している。
鍵は開いている。
郁ちゃんいるの?
女の子たちの笑い声がする。中に入って行く淑美。
部屋の中は水浸しになっている。
郁ちゃんいるの?と言って中に入って行く
すべての水は開けられ、すごい水浸しになっている。
部屋の中で笑い声がする。
フラフラしながら郁子が。出てくる。抱きしめる。
女の子の影。
→現実にありえないこと。
→こういうふうになっていたから水が漏れていたんだというふうに納得できる。
予想以上に水の量は多い
郁子を抱きかかえて部屋から出てくる。
河井正治。河合美津子
行方不明の少女は上の階に住んでいた父親と2人暮らし。
上の階の住人が美津子だったと知り驚愕する。
その次のシーンで大きな味方である弁護士が訪問する。

絶望の直後の希望

【弁護士が現象を解明する】

59分
●団地にタクシーが到着する。
弁護士がやってくる。
 →邦夫と思った。意外な人物

●淑美の部屋。
弁護士が入ってくる
荷造りしている淑美。引っ越します。
調停が終わるまで待てませんか?
松原さん。今かなり不利になっているのはご存知ですよね。また、環境が変わると調停における印象がわるくなります。
上の部屋に光子ちゃんが帰ってきていて、郁子を連れて行こうとしているんですよ。
上の部屋の鍵は空いていたわけですね。

●不動産屋、管理人、弁護士を連れて。美津子の部屋に行く。
閉めたはずなんだけど
鍵は開いている。

●水浸しの部屋。ほんとだ。なんだこれ?
行方不明になった家族は、去年の暮れまでこの部屋にいた。
引っ越したら美津子の帰る場所がなくなると言って、父親は一人でここに住んでいた。
半年以上水道の水が出しっぱなしという可能性もあるわけ。

弁護士「松原さんは苦情を言いに行ってますが、その時ちゃんと調べたんですか」
 弁護士が管理人を責める。
不動産屋「あんたも知ってると思うけれど住み込みの管理人は希望者は多いんだ。あんたの代わりはいくらだっているんだよ」
 不動産屋が管理人を責める。
弁護士「あなたにも電話をしたはずです」
 弁護士は不動産屋を責める。
 三人の争いが始まりそうになったところで淑美が止める。
淑美「足音は何だったんでしょう?」
 →淑美のクレームに対処してくれなかったことに対する観客フラストレーションが和らげられるが本題ではないので引っ張らない。

弁護士「郁子ちゃんが入れたぐらいだから、誰かが入ったという可能性も考えられます。」

●屋上。
ここにカバンが落ちていた。
現象について種をかしがされる。
なくなったわけか?何かのまじないかな?
→何か意味があるのだろうか?
神谷、前のかばんは捨てたがまたあったというのは知らない。
 →最初にミミコかばんがゴミ箱に会ったのは神谷がしたこと
 →現実的に矛盾のないものにたいして、霊のしわざかもと疑惑を抱かせる。
ええ?
まあ近所の子供の仕業だ。
ちゃんと掃除してますか?と聞くと、管理人が起こる。
誰かがいたんです。はっきり見たんですか?はっきり見えたんです。
ちゃんと見たら誰もいなかったんですよ。
あそこの。高速道路がありますね。この貯水槽を照らす者はたくさんある照明の前を横切るものができたら影が見えます。何かいるように見えても不思議じゃないです。
夜中にこんなところに一人で。見てそういうものを見たら誰でも怖いです。
弁護士にエスコートされて屋上から出て行く。
管理人神谷は老人、弱い立場、不動産屋が上司。

彼は真面目に仕事をしているがすべての現象は幽霊の仕業かもしれない。しかし観客は枯れには同情をしない。
・淑美が苦情を言いに行ったときに動こうとしなかったから
・老害と言う言葉出来たように老人の態度に対して苦々しく思うことが多くなった社会の空気があるのでは。(老害ということばは90年代にネットスラングとして発生したらしい)

●団地の全景。

●内装会社がやってくる。
天井を張り替える。
弁護士、気を引き締めることを忘れないようにお願いします。
郁子ちゃんそろそろ幼稚園行けるかな?
行ける 郁子元気な返事をする。
レゴブロックで遊ぶ郁子。
もっと強くならないと。
ではまだ終わったではありませんから、おそらく次回で決着がつくでしょう。いいですか?気になることがあっても、自分で動いちゃダメです。すぐ私に連絡してください。

【弁護士が現象を解明するシークエンス終わり】
◎弁護士が解明したこと
・天井の水は上の階の部屋で半年以上水が出っぱなしになっていた
・足音は郁子でも入れるぐらいだから、誰かが入り込むこともできたはずだ
・屋上にミミコかばんがあったのは近所の子どもの仕業だろう
・屋上の人影は高速道路などたくさんある光源が生んだ錯覚だろう。

疑問点は解決したように思う。しかしここで1時間07分。残り33分。このままでは終わらない。

【美津子との対峙】美津子は淑美に危害を加えようとしているのではなく助けてほしいと救いを求めている。彼女の悲しみを理解できる淑美は郁子を現実世界に残し、自分だけ美津子と共に死の世界に旅立つ。
●出版社
仕事をする。淑美。

この日に淑美は亡くなる
●淑美と郁子。食事をする。
おばちゃんはお粥ばっか。
しょうがないよ。イクちゃん病気だったんだから。
火曜おばちゃん、お水持ってきてた。ここの水がだめなんだって。
 →宗教がからんでくるのかと思った。
確かにここの水はちょっとね。
本当にあしたから幼稚園行けるの?
カバンちょっと見てくるね
中にミミコのカバンが入っている。
これどうしたの?
「知らないよ。」「屋上に行ったの?」「知らないよ。」「怒らないから正直に言って。」と言いながら大声を出す。
落ち着く淑美、ごめんね。
電話をする弁護士のところか?
留守番電話サービス。
法律事務所。先生はこちらには戻りません。
郁子笑いながらかばんを触っている。(目の焦点があっていない不気味な笑い)

●カバンが水の中に落ちるイメージカット。

●淑美かばんを落とす。
「じっとしていて」出てゆく。郁子に「ついてこないで」懐中電灯持って出て行く。
ドアを閉める。

●エレベータ7階を押す。
廊下が奥に見える。やはりこの建物の7階までしかなかった。
エレベーターの中。

●一人残された。郁子。

印象的なカット
玄関から居間で一人座っている郁子を狙う
郁子は独りでいるが行儀よく座りまっすぐ前を見ている。
上手の壁、下手のドアにはライトは当たっておらず、暗闇に挟まれた感じ。スマホの縦画面のような映像。部屋の短い廊下が伸びている。

台所で後片付けをする郁子。

●屋上懐中電灯をつける淑美。
懐中電灯をつけながら近づいてくる。
淑美何かを見つける。カメラ横移動。
カットがかわって穴から水があふれている。
何かをみつけた淑美。なにをみつけたのかはすぐには見せずカメラ移動する。(ここではワンカットで種明かしはせずカットを割って水があふれていることを伝える)
 →ゴミ箱のシーン。電柱の張り紙のシーン。

遠くの方に光。
水が流れる音。懐中電灯の光で追う。
屋上のドアが開きっぱなし。
→開いたままのドアから何か出てくるんじゃないかと思う。
水の方に近づいてゆく淑美。
水槽に触る。濡れた壁に触る。
→イマジナリーラインの変化。

回想シーン
ミミコのかばんを背負ってタンクのはしごを登ってゆく黄色いレインコートの少女。

●息が激しくなる淑美。
水が流れてくる上の方を見る。
はしごを登ってゆく。
水槽タンクの上から水が溢れ出している。

●部屋。明かりをつける郁子。
水道の水をコップに注ぐと大量の髪の毛が出てくる。【恐怖】
 →淑美のときは2本だけだった。
お風呂水が出っぱなし。
急に水の勢いが激しくなる。

●水槽作業の表示。最終作業が平成11年7月14日になっている。淑美息をのむ。
7月14日、平成11年。少女が行方不明になった日だ。

●(回想)7月14日の美津子
ミミコかばんを水槽の中に落とす。それを拾おうとして少女。堕ちてゆく。
【恐怖】水槽をたたく音。
水槽の中から音がする。

水槽から。なかから力が加えられて変形する。
 →なぜ怖いのか。現実には起こりえない事である。しかしなぜそれが起こったのか観客には理解できる。(閉じ込められた美津子が助けを求めている)

1時間16分

●郁子風呂の水を止めようとする。
風呂の水は黒く濁っている。
固くて蛇口は閉まらない。水は一杯になる。汚れた水が溢れ出す。
泡立つ音がする。
お風呂の中から手が出てきて郁子の顔をつかむ。郁子の顔は水槽から抜けなくなる。
→【恐怖】なぜ怖いのか。
出てこないはずの場所から手が出てきた。
このことを予想していなかった。
死の危険にさらされている。

●淑美が走って戻ってくる。

●部屋にもどる。
郁子を探す。時間は8時すぎ。水の流れる音。
泣き出す淑美。郁子が倒れている。郁子を抱きしめる。どうしたの?
もうひとりにしないからね。
物音。
風呂の奥からあぶく。やはり水の色は黒。

●淑美、郁子を抱いてエレベーターに乗る。
ドアは閉まらない。(エレベータは動いていない)
水が滴る音エレベーターの天井から水がしたたり落ちる。

一度物事が解決しているため。余計に絶望的な状況になっている。
→なぜ絶望的なのか。助けを求めたとしても、それはこれこれこうで解決しましたよね、と信じてもらえないと推測できるから

スパーク音。
扉がゆっくりと開く。(淑美の部屋)
子供の手が出てくる。エレベーターを閉めようとする。
出てきたのは幾子だった。
咳をする。
「ママ」と呼びながらさがす。
→じゃあここにいる子は誰なんだ? カメラは映さない

ミイラになった黄色いレインコートの少女。
ここではじめて美津子をはっきりと映す。
変わり果てた姿で強い印象を与える。

ママと言って抱きついてくる。
離れない黄色いレインコート。
美津子に「私はあなたのママじゃない」
お願いやめて。

郁子が。近づいてくる。

郁子に「こっちに来ちゃだめよ」
 →向かってくるのが大人の男性だったら助けを求めるところが、母親なので自分が危険な状態でも子どもを守ろうとする。

「郁ちゃんだめよ」→「止まりなさい」→「郁子」(強い口調になる)

淑美は「私がママよ」と言ってミイラに向かいあう。
それを見ていた郁子は泣く。ミイラの手が緩まる。抱きしめる。

→泣いている郁子。なぜ泣いているのか
①     母親と別れる悲しさ ②母親が自分ではなく美津子を選んだ嫉妬

エレベーター7階が光り動き出す。郁子の目の前でエレベーターは閉まる。
閉まったエレベーターの扉の前で泣いている郁子。

●登っていくエレベーター。下から。

●エレベーターの中で泣いている淑美。

●郁子階段を。走って登ってゆく。
7階にのぼりエレベーターの乗り場の前で泣いている。
エレベーターの扉が開く。激しく水が流れ出てくる。
【意外】淑美が乗っていたのではなく、水があふれてきた

ままと呼ぶ。

●屋上。
水が溢れるタンク

◎なぜ淑美は郁子ではなく美津子を選んだのか
・郁子を守りたかった。自分と離さなければ郁子も死の世界に連れていくことになると考えたから
・美津子は自分であり、自分で泣ければ彼女を救えないと考えたから

【エピローグ 高校生になった郁子、母親と再会する】
●バスが走ってくる。
十年後。
汐見台行きのバス。
女子高生が3人降りてくる。
友人の家がこの近くで遊びに来た。
電話してみようか?
友人「もしもし着いたよ。うんわかった幼稚園の前。」「迎えに来てくれるの?」「自転車ですぐ来るって」
幼稚園の前に立つ。
少女がひとりだけ立ってこっちを見ている。長い髪の少女。お迎えに来ない。
アイス買わない?買う。行こう。郁子。わたしはいい。行こう。去っていく。
→友人たちはアイスを買いに行き、郁子が一人になる。
ナレーション「私は幼稚園の頃の記憶がない。ほんの少しの間、母と2人で暮らしたことがあるのを覚えているだけ。
「愛ちゃん」と母親が迎えに来る。どうもすいませんでした。また明日ね。さようなら。
幼稚園の中に近づく。
何かを思いつく。歩き出す。
 →友人には黙って去って大丈夫か?

●川沿いの道を歩く。

●団地俯瞰から。高校生になった郁子。
●団地の中に入る。人気はなく朽ち果てた建物。管理人室には誰もいない。荒れている。
廊下を歩く。
住んでいた場所、松原の名前。自分の住んでいた部屋

【ここからワンカット】母親との再会
ドアを開け、中に入ってくる。
部屋の中にゆっくりと入ってゆく。
人が住んでいない割には綺麗な部屋。ベッドにはきちんと布団が敷かれている。写真たての写真を見る。
寝室から出る。
振り返る。
ピーんと音がする。幻想的な金属音。
郁子立ち止まって振り返る。淑美が立っている。
「まま」
「おかえりなさい。大きくなったわね」
【ワンカット ここまで】

「私、何にも聞かされてない」
「ママはずっとここに住んでたの?」
友達の家はこの近くなの。今日はみんなで遊びに来て。わたしが通っていた幼稚園のすぐそば。〇〇さんっていうの知ってる?あそこだよね、バス停のそば。
これ私のコップ。
 →淑美は郁子のコップを大切に使っていた。あるいはその部屋では時間は止まっている

「郁ちゃんがもう高校生か?早いわね。」
「知ってればもっと早く会いに来れたのに。」
「いいのよ、今こうして会えたんだから。」
「郁子がいれば、何があっても平気って言ってくれたこと覚えてる?」
「もちろん。」
「変わりない」
「変わりないよ。」
「ママと一緒にここで暮らしたい。パハには私から言うからね。きっといいって言ってくれるよ。だってパパに新しいママがいるし、妹たちだっているんだから。」
→淑美は死んだ。しかし郁子は母親が死んだことを知らされていない。

水が滴る音が聞こえる。
「郁ちゃん、ごめんね。一緒にいられなくて。」
郁子の後ろには黄色い少女が立っている。ピントはボケている。気配に気付く郁子。振り返る誰もいない。
ママの方を見る。ママが居なくなっている。ベッドだけ。
【恐怖】現実的にはありえないが、なぜ少女がここにいるのかは理解できる
「ねえ、ママ」と呼ぶ。

苔の生えた古い団地。
これどうやって作ったんだ? CGかな?
郁子?歩いてくる団地から去っていく。

母はずっと私のことを守ってくれていた。

母親が死ぬというバッドエンドであるが後味は悪くない。なぜか
・亡くなったところ、遺族が悲しんでいるところを直接描いていない。
・淑美は美津子に寄り添うことを選んだことで美津子の魂は救われた。
・郁子が死の世界に行かないように、母親は娘を守った。
・郁子は高校生になって母親と再会することができた。これからも会える希望がないわけではない。







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