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アメリカ往復日記 #2|人との出会いから広がる旅の寄り道

Salt Lake Cityでの小休止

一度目が覚めると、朝の3時。電車はちょうどSalt Lake Cityに到着し、小休止をするところだった。車外に出てみると、雨が雪に変わったところで、辺りには雪が積もっていて、完全なる冬の模様。

ホーム上では乗る人、降りる人、タバコを吸う人と様々だったのだが、夜の間にLounge Carで一緒に過ごしたのだろう、昨日、夕食のテーブルを共にしたカイルが、私の隣の座席の女の子(例の、ちょっと苦手な感じの子)を含めた数名の若者から見送られていた。自分も行こうかなとも思ったけど、他の面々を知らなかったために遠くから別れをしのんだ。

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車内に戻って、列車は再発車。翌朝、目が覚めたのは8時ごろだった。あたり一面の雪景色に、朝日が煌く。売店で温かいコーヒーを買って、Lounge Carの2階に腰かけ、ロールパン(昨日の夕飯の際にもらったやつ)と一緒にいただく。

朝の風景は綺麗だった。高性能そうなビデオカメラを構えたおじさん(昨日も見かけた)もしっかりスタンバイしている。そして、心なしかこの頃から次第に、退屈と思われたこの列車の旅が楽しく思えてくる。やはり旅の醍醐味は人との触れ合いか。

やがて電車は赤い岩肌をあらわにした地帯へ。これがおそらくロッキー山脈だったのだろう、最も景色が美しいと言われる、Salt Lake CityからDenverまでの一帯を走りぬける。

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コロラド州での束の間の休憩

朝10時、コロラド州のGrand Junction駅に停車。束の間の休憩となる。発車まで時間があるので、昼食を買い求め、そしてWi-Fiに接続できる箇所を探して街中へ(そう、この道中でもWi-Fiルーターを持っていない)。朝の冷たい空気が顔に当たるものの心地よい。肺に冷たい空気が流れ込んでくる。肺が踊る。

駅近くにスーパーマーケットを見つけ、本日の昼食、明日の朝食と昼食をまとめて購入。Wi-Fiに繋ぐことにも成功し、駅までの道を再び走って戻る。

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電車が再び動き出した後、買ったばかりのサラダとクリームパイを頬張り、夕方まで、車窓からの美しい景色に目をやる。

New York行きの座席の確保に成功する

すっかり暗くなった夜19時、コロラド州・Denver駅に到着したのだが、この地でこの旅の行く末を大きく変える出来事が起こる。

Denver駅には、駅舎から道路を渡った先に大きな待合室があり、そこでWi-Fiが使用可能になっている。これはCalifornia Zephyrの路線では唯一の駅で、他の駅と比べてみても、やるじゃんDenver、という感じなのだ。

ここで諦めきれない夢、東海岸行きに向けてアムトラックのサイトでチケットを検索してみるのだが、21日にChicagoからNYへ向かう路線に空きがあるではないか!

Coach ClassではなくValue Classの座席だったため、追加料金が必要となるのだが、構わない。果たしてもともとこの便に空きがあったのか、はたまたキャンセルが出たのかは良く覚えてないんだけれど、これを見つけた瞬間、胸は躍った。ちょうどクリスマス休暇と重なるだけあって、帰省のためか、結構空きがなかったりしたのだよね。

まずはNYに行かなくちゃ始まらない。帰りは飛行機を使うことも視野に入れつつ、そのチケットを抑えることを決意し、1-800-USA-RAILに電話。無事にチケットを購入することに成功する!

Amtrak rail passの簡単な説明

ここで、今回使用したAmtrak rail passについても説明をしておく。

簡単に言えば、Amtrak版の青春18きっぷみたいなもの。ただし、規模でいうと圧倒的にこちらのほうが大きいけど。決められた日数内でなら、決められた区関数だけ自由に乗れるパスで、3種類あるうち最も有効日数が短い、15日以内で8区間のチケットを購入した。お値段は449ドル。

この旅のように長距離を移動するのであれば、2区間でも乗ればもとが取れるものすごくお得なものだと思うし、何より時間があってお金がない学生にとっては非常に大きな味方であった。ただ、基本的にはCoach Classの座席に乗るのだけれど、それに空きがなく上位のValueの座席に乗るときは、追加料金を払うことになる。特段サービス内容にかわりはないので、日本の新幹線でいうところの自由席と指定席の違いのようなものか。

さらに車内での様々な出会い

興奮した面持ちのままDiner Carへ夕飯をいただきに行こうとすると、予約をしてないので駄目だという。じゃあ昨日のはなんだったんだ、と思いつつも引き返し、売店に向かいイタリアンサンドを購入して空腹を満たす。

それからはもう、時刻表とのにらめっこ。こうなったら、最初に計画を妄想していた通りにボストンとワシントンも回りたいと思ってくる。さらには、ナイアガラの滝もぜひ行きたいと欲が出てくる。

夜の展望車で作戦を練っていると、「そのセーターいいね」、と格好いい青年に声をかけられ、「ブラックフライデー(※11月下旬に始まるクリスマス商戦に向けたセール)に買ったんだ」、と返す。話を聞くと、彼はカリフォルニア州Lake Tahoe近くのTruckeeから乗車してきて、ミシガン州の実家へ帰るところだということ。地元の大学を卒業した後に、趣味のスキーに打ち込みたくてカリフォルニアへ越してきたらしい。

こちらはNYに行こうとしていると告げると、カリフォルニアまでの帰りの飛行機を調べてくれて、どうやら年末の時期でも片道3万円を切るそうで、これも十分アリだなと考えた。彼の名はJamesといい、Coach Classで私の隣に座っている例の女(もはや悪意のある呼び方(笑))ともこの車内で知り合ったらしく、いつしか彼女が近くに座ってくるもんだから、ついにここで彼女と話すこととなる。彼女は、名をアーニャというらしい。時間つぶしのためか、ポケット数独みたいのをやっていた(笑)。

そんな中に、もう一人キャラの濃いやつ、ビリーがバドワイザーの缶を片手に(おそらくこれが既に何本目かなのだろう)、酔いが回った状態でやってきて、Lounge carの隣の席に座った。でも彼は面白い人で、以前Amtrakのどこかの駅長やらをやっていたらしく、Amtrakの詳しい話を聞かせてくれた。NYに行くつもりなんだと伝えれば、マンハッタンはいいところだけど気をつけろよと声をかけてくれたし、しまいには、「車内にギターを持っている乗客がいるから、その人に頼んで演奏してもらおうぜ」なんて言い出す始末。

実際に、彼はギターを持ってきた人のもとへ話に行き、そう、アーニャによると、それはDenver駅で私の隣の席に座ってきた、クマのような風貌の男性のことだという。なるほど、Denverでは席を外していたために、彼が乗ってきた瞬間を見ていなかったので、彼がギターを持っていることを私は知らなかったのか。そんなこんなで成り行きを見守るが、ビリーはなかなか帰ってこない。

そう、Denverにて私の隣の席に乗客が乗ってきた。クマのような図体をして、もさもさ髪を伸ばしきった彼を最初に見たとき、つまりは、Denverで休憩のために外に出ていた間に彼は乗車してきて、私は彼が隣の席にどかんと座っているところを初めて見つけたのだけれど、「うわ、ただでさえこれで座席を2つ使って横になって眠ることはできないのに、その上こんな巨漢か」と、がっかりしたのであった。

さらなる偶然の出会い

そのうち眠くなってきたので、ギターの演奏を聴くのは諦めて客車に戻り、寝る前のトイレに向かう。ところが、ここで偶然の出会いが待ち受けていたのであった。1階(lower level)にあるトイレに向かうと、そこに歯磨きをしている男性がいたので、「あ、そうだ、歯を磨くことを完全に忘れていたな」と思い出す。

実はその男性は、私と同年代ほどで、何かのきっかけで彼も日本人であることは分かっていたのだけれど、せっかくのタイミングだし意を決して話しかけてみる。しかし、歯磨き中であるためモゴモゴして返答が何を言っているのか分かりづらく、掴みとしてはなかなかOK。

彼はサンディエゴの語学学校に通っているとのことなのだけれど、驚くことに生まれ年が同じで、さらに出身地も同じ。なんという偶然か!

すっかりテンションが上がってしまい、ただし、それ以上に驚きのあまり言葉がなかなか出てこず、実際、1階に下りてきた男女二人組みが「シーだよ」とジェスチャーをしながらマリファナだかを吸っていたことなど気にも留めず、もう一度Lounge Carへ戻って話し込むことに。

彼のほうは、シカゴでの2泊を経て、ナイアガラとNYを経由して、再度シカゴに戻ってからロサンゼルスへ帰るとのこと。旅の話はもちろん、近況を聞かせあったり、共通の知人の話をしたりで一通り盛り上がったところで彼が寝床へ。

この頃にはついに、クマさんがギターを披露しており、ビリーがそれに合わせて踊り、もう一人、パピーをしているという男性も加わって演奏していた。それでもやはり眠気に勝てず、座席に横になって眠れるか知りたかったので、何時に寝るつもりかとクマさんに聞く。するとアーニャが、「私のところで横になって寝て良いよ。私は戻らないつもりだし、隣の人も夜のうちに電車を降りるから」、と言ってくれたので、お言葉に甘えて通路の右側の座席で横になり、次の朝を迎えることにした。

今日の一曲

行こう、僕だけのありのままの旅へ
ケツメイシ - 旅人


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