アメリカ往復日記 #16|SFを経由し、ついに帰還。
最終日の目覚め
新年2日目の朝も清々しいものだった。昨日のパンのほかに、オリーブオイルとビネガーをかけていただくサラダと、マスタードを添えていただくソーセージ、それからコーヒーである。
帰りは11:24発のCaltrainに乗る予定であったため、10時過ぎに家を出て、今日は再びApple本社など、シリコンバレーの企業群を巡る。布団を片付け、荷物と身支度を整え、例のごとく駐車場へと向かい、相変わらず革の肌触りが良いシートに腰掛け、Apple本社が位置するInfinity Loopへと向かう。
Apple本社の見学
建物の前には3本の旗が風になびいており、一番右にあるのは日本の国旗だというので、すごいな嬉しいなと思ってよく見てみると、違うじゃないか、白地にピンク色のリンゴのロゴが描かれた旗である。それでも以前は、JobsがSONYを好きだったために日本の旗があったという。
早速、多くの社員が出勤してくるが、彼らはやはり皆ジーンズにシャツなどカジュアルな服装をしている、社員通用口の先には受付があり、ゲートの奥には警備員が立っているためもちろん入ることはできないが、オフィシャルストアは一般向けにオープンしているのでそちらへ向かう。
”iVisited”という洒落の効いたプリントがなされたTシャツがあったり、(そういえば昨日のイタリアンレストランの店員が会計の際にvisitはどうだったか、とユーモアを交えて聞いてきてくれたな)、これまた多くの人が2日の朝早くからいるもんだ。正月休暇という文化はおそらくないのだね。その他、Tシャツはもちろん、マグカップや文房具まで、ありとあらゆるものにリンゴのロゴがあしらわれている。どうやら商品の入れ替わりが頻繁なそうで、既にiVisitedのTシャツは売っていない。周辺機器ももちろん多く取り揃えているのだけれど、いうて私が今持っているApple製品はiPodのみだということもあり、記念に何か買って帰りたい気持ちはあるのだけれど、ここでは我慢。
そういえばいまだにAppleらしい良い写真を撮っていないな、これが最後のチャンスかもな、ということで急いで建物正面に回り、風になびく3本の旗とエントランスと本社住所の「Infinity Loop1」という標識とが一枚に収まる角度から、ちょうど旗のリンゴのマークが見える瞬間を待ってシャッターを押す。これはなかなか良い一枚が撮れたと自負している。
続いての企業に向かうところだが、この時既に11時ごろになっていたので、1時間後の電車に乗らなきゃだなと思いながら、でもやはり自分のオフィスを見てもらいたいのだろうから連れて行ってもらうことにする。駐車場に車を文字通り駐車し、階段脇の裏口から入り、階段を上ってオフィスへ案内してもらう。これからテレビ会議をするのだろうという部屋を通り過ぎ、同じフロア内のフリースペースにしばし腰掛けた後、給湯スペースにて紅茶を入れてオフィスへ戻る。壁のホワイトボードには計画目標がびっしりと書かれていてさすがであると思う。
話を伺った後に、飲み残しの紅茶を流しに給湯スペースへと戻り、その後、会社の食堂やジム、工場のような実験室を見て回る。このとき、他の社員が娘を連れてきているのとすれ違い、どうやら、アメリカの会社では友人や家族をオフィスに連れてくるのは普通なことだと言う。確かに、日本ですら職場を覗いたことはないのだから、ここアメリカの地でこうやって案内していただけたことは貴重な経験であった。
最後の都市、San Franciscoへ
車に戻ると、いよいよ駅まで送ってくださり、別れの言葉と握手を交わす。またいつでも来てくれと言うものだから、それは建前じゃないですよね、と心の中でつぶやきつつ、感謝を告げる。車が走り去るのを見届けて、さてまずはSan Franciscoまでのチケットを7ドルで購入し、となると到着が13:40だから車内で昼食を済ませてしまいたいなと思い、コンビニなんかを探して到着初日に歩いた通りを見て回るものの見つからず、ピザのテイクアウトを頼もうかとも思ったけれども、時間がかかるとのことだったのであきらめてホームへ向かう。
ぼーっとしていて最初はSan Jose行きのホームに立っていたのだけれど、というのもなんとなく気分的に降り立ったホームと反対のホームに立つのが普通じゃないかと思いながら、こちらのホームに電車が停まった際に踏切が一時的に空いたので反対ホームへ渡る。時間通りにやってきた電車に乗り込み、進行方向を向いて座れる車両に移動し、車窓からの景色を眺める。途中でやってきた乗務員にチケットを提示し、少し眠ったりもしたんだっけ、13:40に終点のSan Francisco駅に到着する。
すぐそこのスーパーにて何か食べるものを買おうと入り、1ドルのクッキーを購入。これを食べ歩きしながら3rd St.を進み、いや、本当は3rdまで出る必要なんて無くて4thをそのまま進めば良かったのだけれど、それでも何か新しい発見があればいいこととする。Market St.まで出た後には、もうこれはお馴染みのルートとなったかな、adidasからUNIQLO、NIKE、the North Faceと回り、カープールの待ち合わせ場所であるSutter St.のスターバックスにて待機。
ライドシェアサービスで帰路につく
スマホで箱根駅伝をチェックしつつ、まだ復路は始まっていないのかと思っていたところ、15時過ぎ、電話がかかってきたのでおそらくドライバーの人だろうと思って出てみると、あ、女性だったのかと驚く。内容は良く聞こえなかったのだけど、おそらく今から空港を出るということだったのだろう、その直後に店の外に出てしばらく待ったけれどそれらしい車は無かったので、とりあえずもう待ち合わせのスターバックスにいるよ、ということだけは伝えて電話を切る。
そうそう、カープールとは、ライドシェアのサービスで、一般のドライバーが運転する車に乗せてもらえるものである。出発地と目的地を検索して、それに合致する登録ドライバーが入れば、マッチングが成立するような仕組み。この日も、前日だかに予約していたのだっけ。
そして15時30分ごろだったかな、再度電話が鳴るので辺りを見渡すと、Sutter通りの赤い車の運転手が手を振ってこちらを見ている。目印として事前に聞いていた車体後部のキティのステッカーを確認した後、ありがとう、と告げて乗り込む。他には中国人と思われる女性3人が乗っており、軽くアウェイ感を味わうも、住所を伝えるとナビの目的地を設定してくれ走り出す。同じく後部座席の右側に座る彼女は空港で拾ったというのだが、彼女はNYから帰ってきたらしい。そこからは疲れていたのもあって眠りに落ち、起きて気がつくとVacavilleのあたり。ついに、15日ぶりであろうか、長旅を無事に終えて帰還したのでした。
今日の一曲
Appleのリンゴからの連想として、GAFAのありあまる富に対する皮肉も込めて。
椎名林檎 - 幸福論