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アメリカ往復日記 #11|Sunset Limited号で巡るテキサス

雨のニューオーリンズを後にする

目を覚ますと、時計は6時30分、目覚ましをかけていたのは7時だったのだけど、そして窓の外は雨が降っているようだ。予定よりを早く起きられたものだから、少し冷え込んでいたものだし、シャワーを浴びることに。

昨日、気を抜いていたような箇所も、意識して洗うようにする。7時50分発の路面電車に乗る予定だったから、それほど時間があるわけでもないのだけれど、かといって特別やることがあるわけでもない。

泊まっていたホステルも、朝食付きとかいうくせに、提供時間が朝10時から13時だと。もはや朝食の時間ではないし、誰がそんな時間まで宿に残っているのだというのか、さらにそれより前に食べたかったらそりゃ自分で作ってくれだと。

これは昨日の夜にフロントのひげ面のおじさん(この人は先のお兄さんとは夜に交代した)に昨日のうちに聞いていたので、朝食を含めて、食材の買出しをすることにした。格好はジャージのままで、荷物をまとめてチェックアウトのためにフロントへ向かう。

外は傘を差したほうがいい位の雨だもんだから、別棟へ移動するための扉の開け閉めが面倒だったり、キッチンにはもう起きてきていてコーヒーを飲む女性と朝食の準備をする中国人もいたりした。フロントに到着すると、鍵だけじゃなくてシーツ・枕の一式持って来いと言うから、自分の荷物はその場に置いて見てもらうことにして、来た道を戻っては部屋からそれらを持ち出し、また折り畳み傘を持ちながらの行き来に苦労して、再度フロントへ。

チェックアウトを済まし、デポジットで払っていた鍵の代金5ドルを受け取った後、ホステルを後にして記念の写真をパチリ。少し距離が近かったので、あまり良い写りにはならなかったけれども、かといって取り直す気にもならないから電車乗り場へ向かう。

Sunset Limitedで過ごす丸2日間

駅に着くと、大きなパラソルみたいな傘を携えた方も同じ電車を待つようで、しばらく佇んだ後にやってきた電車に乗り込む。Elk St.で降りると昨日と同じ道を反対側に、駅へ向かって歩く。途中のスーパーで、これは昨日見ておいたもので朝の8時開店だったのだけれど、これからの列車で過ごす二日分の食糧を買い込む。ペットボトルの水を二本、コッペパン、サンドイッチ3種類、それとナッツ&ドライフルーツ。これで2日目の夕食までをしのごう。

そう、Sunset Limited号は、ニューオーリンズからロサンゼルスまで、また丸2日間の道中である。

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2日目の夕食は、アムトラックでの最後の食事ということもあって再びDiner Carで食べたいと思っていて、とするも問題は野菜が無いことだったので、構内のSUBWAYにてchopped saladを注文すると、店員さんが気だるそうな顔をしながら店の裏手へ回っていく。どうしたことかと思うと、専用のボールと包丁を持ってくるものだから、なるほど、目の前で今まさにchopするのだなと分かる。会計の時には店員さんが優しい態度になってくれたもんだから、ほっとする。

しばらくの後に、発車の号令が掛けられると、ゲート前に人々が列をつくるもんだから、それに並ぶのも嫌だなと思って空くまで待とうと思っていると、同じフロアにアジア人男性二人組を見つけ、最初は日本人のように見えたのだけれど、のちのち韓国人と分かる。

車両に案内されると、座席番号が書かれた紙を渡される。指定された左通路側のとある席では、先に座っていた団体の乗客に挟まれて変な感じになる。さらに、私の左側の席にいるおばあちゃんは、何ともいえない、決して好ましくはない匂いがするものだから、なるべく隣に座ることを避けてラウンジカーで時間を過ごした。彼女らはSan Antonioで降りるみたいだから、今夜までの辛抱である。

客層をざっと見渡してみると、黒人の割合がこれまでよりは断然高く、アジア系の割合は逆に低く、そして、なぜだか分からないものの年齢層が高い。最初に車中で二泊したCalifornia Zephyr号以来、半日や一泊の乗車時間では乗客同士がお互いに話をするということはそれほど無かったのだけれど、時間が経つにつれて、やっぱり最初の車内で過ごしたあの時間が忘れられずに、今回の帰りでも何か同じような体験ができればいいなと思い、知らぬ間にあの2泊3日が自分の中で良い思い出に変わっていたことに気が付く。その期待があったせいか、大学生やら20歳代やらの同世代の乗客があまりいないことが少し残念に思えた。

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発車の後に、先ほど買ったサンドイッチで朝食を済ませ、そう、これはラウンジカー内でのこと。どうやら食堂車が付いているような長距離列車では、ラウンジカーで外部の食材、Non-Amtrak foodを食べることは問題ないみたいだ。まだ雨は降り続いていたので、外の景色は鮮明には見えなかったのだけれど、車内放送もあって、ミシシッピ川やその支流を何度か渡ったことがわかる。それに伴って、見える植物もマングローブのようなあの生え方、茎が根元で別れて絡み合うようなあの感じのやつらが茂っている。

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そう、車内放送の話が出たのでここで触れておくと、この電車での一番の主役は車内販売を司っていた彼だろう。社内の売店の開店・閉店のたびに、趣向を凝らしたユーモアのある喋りを繰り出してくる。ランチとディナーの呼び出しをする女性も、それを意識してだと思うが少し茶目っ気のある話し方をするのだけれど、到底及ばない。

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テキサス州へ突入

3時過ぎにテキサス州Beaumontに到着し、小休止。この頃には雨はすっかり止んでいた。例のごとく体を動かしたかったから、外に出て軽く走る。気が付くと周りには色づいた葉をつけた木々が並んでいる。発車の後もラウンジカーで過ごしていると、いよいよだ、Sunset Limited号の日暮れの時間が近づいてくる。

初日の日暮れは、17時過ぎ、ヒューストンの手前でのことだった。進行方向左の座席に座って、窓の外に目をやる。この電車から眺める夕暮れは、いつも以上に長く感じられた。普段は夕日にずっと目を凝らし続けはしないこと、視界を遮るものが無いから最後まで太陽が見えること、そして列車は太陽を追いかけるように西に向かっていること。こういった要因が相まってそのような印象を作り出したのかもしれないが、何故だか心に残る光景であった。

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ヒューストンを駆ける

そんな長い日暮れの後に到着した街がテキサス、ヒューストン。ここでもしばらくの停車時間があるものだから、揚々と走りに出る。さっきの走りはここのためのアップということにしておく。降りる準備をするために一度自分の座席に戻ると、ちょうど日暮れの後の紫の空が広がる。写真に収めようとするも、左にはおばあちゃんが座っているため、窓際には寄ることができない、と思っていると、そのおばあちゃんから声をかけられる。

訛りが強くて最初は何を言っているのかよくわからなかったのだけれど、どうやら「さっき走っていたでしょ」と言っているようだから、あ、見てたのか、と思い、適当に「はい」と返答する。その直後、彼女に電話がかかってきたので、その間にちょうどこの時誰も人がいなかった一つ前の座席に滑り込み、窓際でシャッターを切るも、あまりいいものは撮れなかった。

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テキサス中心部の背の高い建物がいくつか見えてくる。降車すると、頭に入れた地球の歩き方の情報をもとに、水族館、シアター、市庁舎へと走り出す。もともと空気が暖かかった上に、ジャージにウルトラライトダウンと水色のジャケトを重ねていたため、走り始めてすぐに後悔する。

市庁舎の角を左に曲がると、市内中心部へ。路面電車の線路にぶつかると、JPモルガン・チェイス・タワー前の彫像を目にし、ホテルでWi-Fiにつないだ後にMarket Square Parkに出て駅まで戻る。電車に乗ろうとした際に、警備の人にここから乗るのか戻ってきたのかを聞かれて、戻ってきたのだというとチケットを見せろというから、どやと提示してやると、特に問題は起きなかった。

問題は、多少汗をかいたために、一番下に着ていたヒートテック白の長袖をこの後も着続けて大丈夫が悩んだことだった。ヒューストン、全米で人口が第4位の都市らしいのだけれど、いや、何てこと無いじゃん、という印象ではあった。

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San Antonioも駆ける

汗が引いた後に夕食を済ませると、続いては22時30分ごろにSan Antonioに停車。予定よりもずいぶん早い。というか、遅れが発生しがちと聞かされていたこの路線、今のところはむしろ設定タイムを上回る走りを見せている。

ここ、San Antonioで、シカゴからやってくるTexas Eagleと連結するわけなのだけれども、それを待って発車は深夜2時過ぎ。時間は余るほどあるので、多少時間が遅く治安に不安があるものの、同じく地球の歩き方で得た情報をもとに、街に繰り出すこととする。

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まず駅からも見えるのが、Tower of Americaというタワー。そんな名前つけるほど大層なものでもないけど、そんな名前がついているのだから仕方ない。この街の見所は二つに絞って、一つ目はThe Alamo、アラモ砦。それから通りをさらに奥に進んでいった先にあるRiver Walk(ここまで行くのには、さすがに多少の不安があった)。でも、ここで撮った一枚は、今回の旅の中で三本の指に入るくらい美しい光景だったのではないかと思うので、行って良かったと思う。

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駅前の待合室に戻ってくると、アジア系の顔をした女の子が、大きなバックパックを脇にベンチに腰掛けて、ジブリに出てくる女の子の主人公のように強気にというか堂々とお菓子を頬張っていて、旅慣れている感じがあったもんだから、日本人だったら面白いなと思いながらも、遠目ではわからず、壁にかけられたテレビで放送するドラマに目をやるものの、瞼が重くなってきたので、もしここで寝てしまって電車を逃すなんてことになったら笑えないなという思いが勝ったため、車内に戻ることとした。

そうそう、ここSan Antonioで隣の席のおばあちゃんが降車したために、座席に横になって眠りに付くことができた。のも束の間、2時過ぎ、San Antonioを出発するときに別の20台前半ほどの男性が窓際の席に座るということで起こされた。そんなこんなでテキサスを後にする。

今日の一曲

なんとなく、テキサスっぽい雰囲気のあるPV。
BiSH - MONSTERS


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