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音楽が沁み込む。official髭男dismの日本武道館LIVEにトキメキが止まらない。
2022年10月26日。
official髭男dism「SHOCKING NUTS TOUR」日本武道館LIVEに来ていた。
開演前。360°観客に囲まれたステージから「SHOCKING NUTS TOUR」のオレンジ色のロゴがこちらを見つめてくる。
たったそれだけ、それだけなのに……。
わくわく。わくわく。わくわくっ!
まだ誰も立っていないステージであるはずなのに、どうしてか高揚感は高まるばかりだ。
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次第に夜の帳が下りるように、緩やかに会場内の明かりが消えていく。するとステージにはメンバーの情熱が先走って漏れでたような淡い光がぽうっと灯った。刹那、やさしいアルペジオが会場中をくるりと駆け巡る。
Pretenderがはじまった。
同ツアーはofficial髭男dismの結成10周年を記念したツアーであり、セットリストは最新〜デビュー前まで遡ったあらゆる楽曲が連なることになる。そのなかでもトップバッターを飾るのは、結ばれない運命を歌ったPretender。
切ないけれど、背中を撫でるようにやさしいvo.さとっちゃんの歌声が響いて、身体のなかに溜まっていた高揚感の粒たちが一気に弾け飛んだ。
音楽が沁み込む、という表現がよく似合う感覚だ。
感動、喜び、幸せ、歓喜、そのどれとも異なる感覚。ヒゲダンの音楽でないと感じることのできなかった、採れたてのトキメキが、心のなかにいっぱいに、いっぱいに、広がっていく。
来てよかった、本当に良かった……!!
開幕1曲目から、すでに満足ゲージは急上昇。それにも関わらず、LADY、115万キロのフィルム、Cry Baby、ミックスナッツ、Anarchyと、わたしがどうしても生演奏で聞きたかった楽曲たちが次々と姿をあらわすものだから、もう「満足」という言葉では表現することすら叶わないレベルで、幸せ値が飛び抜けてしまった。
兎にも角にも、音源の遥か上をいく、さとっちゃんの歌声とアレンジの効いた今回だけのメロディに魅了されっぱなしの2時間半だった。
なかでも、こころに残っているのはLADY。わたしがヒゲダンと出会ったのは115万キロのフィルムだったのだけれど、それをきっかけにプレイリストを周回して何度もリピートしていたのがLADYだ。
歌詞で紡がれる言葉の美しさ、柔らかに空気を伝う高温、繊細な心の機微を描いたようなピアノ、その心を後押しするようなリズム隊。
耳心地の良さに何度もリピートしていた曲。ヒゲダンのライブ自体は初めてではないので、これまでも生演奏によるLADYを聴く機会は多々あったのだけれど、それでも、やっぱり、LADYの素晴らしさに心を打たれてしまう。
それからライブならではのチーム編成で演奏される厚みあるメロディが本当にたまらない。とくにAndyさんのサックスソロは永遠に聴いていたいほど繊細で軽やかで美しい……!
さとっちゃんも「Andyのサックスソロを舞台上で聞けるのは特権!」と嬉しそうに話していた。
今回のセットリストは、たしかこんな感じ。
1.Pretender
2.I LOVE…
3.Tell Me Baby
4.Second LINE
5.ビンテージ
6.LADY
7.風船
8.Choral A
9.夕暮れ沿い
10.subtitle
11.parade
12.Anarchy
13.Cry Baby
14.115万キロのフィルム
15.異端なスター
16.宿命
17.ミックスナッツ
★アンコール
18.Universe
19.Clap Clap
20.破顔
こうして並べてみると、20曲も演奏をプレゼントしてくれていただなんて驚きだ……!
楽曲はもちろんだけれど、ヒゲダンのみんなはいつも、言葉のプレゼントもたくさん贈ってくれるなと思う。
「僕たちにとっては数あるライブの1つだとしても、今日来てくれたあなたにとっては、たった1度の今日だから。僕たちは今日来てくれた『あなた』一人ひとりに届けるためにやっていくよ」
「僕たちは生きているだけで、誰かの希望になっていたりするんだ。楽曲を作っていたときも、こうして未来に、聴いてくれたり、ライブに来てくれたりする、あなたたちに導かれて今日まで来ました」
「だから、これから先、音楽を聴くことすら嫌になってしまう時もあるかもしれないけれど、僕たちは変わらず、今、一番情熱を注いで生まれた最高のものを用意して待っています。10年、20年、いつまで続けられるのか分からないけれど、バンドができる限り、待っています」
「今日は素晴らしい時間を一緒に過ごしてくれて、本当にありがとうございました」
美しい愛のこもった音楽と言葉をたくさんいただいて、楽しいだけじゃない、トキメキが宿った生きる糧をもらった時間だったと改めて思う。お礼を伝えるべきは、こちらのほうだ。
どうかこれからも、わたしの人生という日常のそばに、official髭男dismがいつづけてくれますように。
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by セカイハルカ