江戸季節そばの魅力6月 「笊(ざる)そば」
6月となりさっぱりとした喉ごしの良い『笊(ざる)そば』の シーズンを迎えました。
ところで『笊(ざる)そば』の定義、ご存知ですか? よく言われる『もりそば』との違いは単にもみ海苔の有無だけなのでしょうか?
先ずは『蕎麦の事典(新島繁)』によると
本来は竹ざるに盛るからこの名がついた。海苔をかけるのは明治以降の現象で『ざる』すなわち『海苔かけ』ではない。本来はなにもかけずに、ワサビを添える。またもり汁よりややコクのある『ざる汁』を用いた。 『武江年表』寛政三年(1791)の項に『深川洲崎の名物の笊そばは、9月の高波の後絶えたり』とある。深川の笊そばは伊勢屋(伊兵衛)といい、名店として評判が高く、ざるそばの元祖。
もみのりを現在のようにざるそばにかけるようになったのは明治以降。
またつけ汁は『もり』と『ざる』では違うものにしていたとのこと。 『ざる』は一番出しを使い『もり』は二番だしを使っていたとか、 『ざる』の汁はみりんを使用して甘めに仕上げたとの説もあります。
ただ明治以降、『つゆ』を別々に作る店はほとんどなくなり『ざる』は 『もり』に比べ高級というイメージだけが残りました。 然るに、値段での差別化を維持するためにおそば屋さんでは多少盛りを 増やし、そばの上にもみ海苔を掛けるやり方が広まったとのことのようです。
ただ今でも老舗のお店の中、例えば『室町砂場』では、独自の手法として二種類のそばをうち、『更科粉』を鶏卵でつないだものを『ざる』として『もり』よりも少し高い値をつけて区別しています。
今回訪問した新橋の老舗『芝新橋 おそば 能登治(のとじ)』でも もみ海苔はありますが、江戸前の流儀を貫き『もり』と『ざる』でつゆを かえています。お品書きには『ざる(別製ざる汁)』。御前かえしという 甘めのかえしを使っています。
芝新橋 おそば 能登治 http://shinbashi.notoji.jp 営業時間/午前11時から午後8時まで(土・祝祭日 午後3時まで) ■定休日/日曜日
訪問が可能な方は是非、お店で『もり』と『ざる』をお試しください。『せいろ』や『せいろう』とあると困りますが、それは『もり』の別称です。
※『蒸籠』は正しくは『せいろ』ではなく『せいろう』と読みます。
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