マガジンのカバー画像

物語

10
運営しているクリエイター

#小説

【小説】もうすぐ、誕生日が終わる

「かち、かち、かち」   先ほどから、里中明美は時計の秒数が増えるごとに、ひとり声になら…

瀬島春
2年前
6

【小説】3回目のデート

 やばい、選曲ミスったかもしれない。  正志はマイクに向かって声を張り、画面に流れる歌詞…

瀬島春
2年前
1

盛大な拍手の中

 桜の見頃も終わり、ようやく、ぐずぐずと残っていた冬の寒さが過ぎ去った四月の半ば。盛大な…

瀬島春
3年前
3

スズランを君に

駅前に新しい花屋ができているのを目ざとく見つけると、カナは繋いでいた手を解き、はしゃいで…

瀬島春
3年前
1

新宿駅東口改札前に7時

金曜日の十九時、新宿駅東口改札前は、多くの人でごった返している。 仕事帰り、誰かに追われ…

瀬島春
3年前
6

ワシは偉い

部長はいつもの少し大きめのスーツを着込み、のそのそと、その体の大きさにふさわしい振る舞い…

瀬島春
3年前
3

はみ出した、赤い線

 塗り絵がある。  決められた線の中を、あるいは既に描かれた絵の中を、さまざまな色で塗っていく。  広いスペースは大胆に、端っこは線から色がはみ出てしまわぬように、慎重に慎重に。    ここは青で、次はピンク。それから緑に、ここは黄色。最後は赤色、もうすぐ完成。どんな風に仕上がるか楽しみだ。  白い色が、赤い色に変わっていく。 「あっ」  慎重に色を塗っていたつもりだったけれど、勢い余って赤色が黄色の部分に飛び出した。  他の色がきっちりと線の中に収まっているぶん、その