人目につかない場所に咲いた、あの花は
美しい花をみかけた、と彼は言った。
「そうかい、どこかの植物園にでも行ったのかい?」
「いいや」
「花畑にでも行ったのかい?」
「いいや」
「それなら、公園にでも行ったのかい?」
「いいや、それも違う」
「いったいどこで、その美しい花をみかけたというんだい?」
「崖さ」
「崖?」
「そう、切り立った崖を、覗き込んだのさ、おそるおそる」
「おそるおそる」
「足元に、花が咲いてた、一輪の花が」
「そうかい」
「それは、美しかった。白に淡い青が散っていた。一輪で、堂々と、花びらを