【ヘルニア】診断およびMRI画像は腰痛患者にとってどれほど有用か?
整形外科で「ここにヘルニアがあります」と画像を見せられ告げられた
そんな経験がある方にききます。
あの時間は、どれほど有用でしたか?
一旦は「痛みの原因が判明した」ことで安心できたかもしれません。
が、結局その後、その腰痛は改善しましたか?
じつはそもそも、ヘルニアと腰痛は無関係である―なんて話もありますが
今回は日々じっさいにヘルニアと診断されたあるいはヘルニアの手術を受けてもなお変わらない腰痛に悩まされている方と関わらせて頂いている経験から
腰痛患者にとって“診断”や“MRI画像”はどれほど有用なものであるか?について話します。
腰痛改善に活かす画像のみかた
ヘルニアを例に挙げます。まず教科書的な(ガイドライン上の)話をすると、ヘルニアと診断される方の身体には次のような傾向性がみられると指摘されている訳です。
かみ砕いて言えば【ヘルニアと診断される人の姿勢は“猫背”っぽい】ということです。(一概には言えませんが)
TK(胸椎後弯)、SVA(第7頚椎から引いた垂線と仙骨後上縁との距離)はその値が大きくなればなるほど(=背骨全体が丸まれば丸まるほど)、腰背部耐久性低下=腰がつかれやすくなり、加えて、長時間の立位・歩行が困難となるとされています。
またSS(仙骨上縁の傾き)やLL(腰椎前弯角)が小さくなるということは、仙腸関節が「しまりの肢位になれない」=「ゆるみの肢位にしかなれない」状態につながり、骨や関節の噛み合わせではなく腰背部をはじめとする筋肉に依存した姿勢と動作を行わざるを得なくなることが考えられます。
という風に(ヘルニアに限らず、滑り症も、脊柱管狭窄症も)疾患のおおまかな特徴を把握した上で、MRI画像から「もしかしたら普段、こういう姿勢でいることが多いのではないか?」「こういう場面で痛みが誘発されたり辛くなるのではないか?」「この動きはやりづらく、この動きはできるのではないか?」といった“仮説”を立てて、それを問診したり身体に触れたり動きをいれたりしながら“検証”することで施術計画が立てられます。
ようするに何が言いたいかというと
MRI画像から得られる情報というのは‥
疾患の特徴やじっさいの現象とすり合わせ、仮説・検証し、施術計画を立てる=【やることを見定める】
ここまでをしてはじめて意味をもつ、ということです。
腰痛患者にとって“MRI画像”はどれほど有用なものであるか?
MRI画像で確認できる「ヘルニア」それ自体は腰痛のひとつの誘因になり得ます。
しかし「ヘルニア“だから”痛くなっています」と“画像だけ”で判断はできません。
じつはred flagといわれる兆候(※⬇︎参照)を認める“一部の例外”を除いて
大多数の「ヘルニアかつ腰痛持ち」の方は、ヘルニアどうこうではなく、「猫背」姿勢で習慣的に「腰に負担をかけている」から、腰痛や坐骨神経痛が引き起こされているのです。
やはりMRI画像だけみても、極端な話“手術”をしても、いま起きている「じっさいの現象」=痛みがでる/でないシチュエーション(姿勢や動作)を確認し、仮説・検証を繰り返しながらアプローチし、腰に負担がかかる“元”をなくさないことには、なかなか良い結果は得られません。
メディカル的な立場に立てば「診断がつくこと」「器質的な異常の有無が判明すること」は有用な情報であると思いつつ‥
一般の方にとっては「他の原因」に目を向ける機会を損なわせるものになりやすいと思っています。
診断がついた。
画像でみた。
たしかにそれらの情報にはインパクトがあるでしょう。あたかも“諸悪の根源”のように思うかもしれません。
しかしだからこそ繰り返し強調しておきたいのですが、背骨の変性やMRIで確認できたヘルニアは、必ずしも腰痛と結びつくものではないのです。
MRI画像だけを必要以上に大きくとらえて、漠然と不安がっていても仕方ありません。
重要なのは、画像も参考にした「仮説立て」とその「検証」です。これらを億劫がって注射や手術に縋るのは危険といえるでしょう。
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