癒しとリラックスの場を作りたくて14
Mさんの場合その2 いよいよ、嫌なことの排出へ
■催眠認識に入る前段階
さてこれまでの準備段階で、Mさんの被暗示性の高まり=催眠の掛かりやすさは、かなり高まっています。
ここからいよいよ、催眠によるセラピーへと入っていきます。
「最近嫌なことはありましたか? それをひとつ思い浮かべてください」
こくこくと頷くMさん。
「ではいまからそれを、頭から追い出しましょう。何を思い浮かべていたか覚えていてくださいね。これから開始します」
本当かなぁ? という顔をしているMさん。まぁ普通はそうですよね。どうやって頭から追い出すんだと、僕が逆の立場でも思うはず。ところがね、これがちゃんとできるのですよ。
悩みを抱えている女性はものすごくたくさんいます。その中の一人で、嫌な思いを消せるんだったら、いいことじゃないですか。
そう思って、僕はこのセラピーをしているのです。
■催眠認識
これから使う手法は、固定凝視法。見たことがある人もいるんじゃないでしょうか、一点を見つめてもらって思考を制御するやり方で、続けていくと、次第に被験者の瞼が重くなってきます。
Mさんの場合は、僕がまだまだ未熟なこともあって、少し時間は掛かりましたが、やがて瞼がパチパチと眠そうに瞬いて、そのうち閉じたままになりました。
ふぅ。成功です。正しい手順を続けていけば、皆さんきちんと眠りに入る(比喩的な意味ですが)ことができるのだと、改めて実感しました。
さて、ここからが本番です。語り掛けで手と脚、背中と腰、そして首の力を抜いて、全身を脱力状態になってもらいました。
Mさんはリクライニングチェアに頭をもたせて、スースー息をしています。この状態だけでも、かなり気持ちいいはずです。
■催眠深化
ここから、頭の中の嫌な思いを排出する作業に入ります。
例によって企業秘密で詳しくは書けないのですが、
「あなたの手がゆっくりと……していきます……今度はそれを……」
と誘導すると、目を閉じて深く「眠って」いるMさんは、自分でも意図しないまま手を動かして、排出のための作業をしてくれました。
さて、頭から出した嫌なものは、一時的に彼女の手のひらにあります。
ウエットティッシュを渡して、それをごしごし拭ってもらった後、ポイっと放り捨ててもらいました。(実際には手がだらりと開いて、それを下に落とした感じですが)
排出成功。これでセラピーは完了です。
それから覚醒の声を掛け、3、2、1! で起きてもらいました。
「どうですか、覚めましたか?」
「まだちょっとぼうっとしてます」
「ではもう一度」
パチン。
Mさんは目をパチパチさせています。
「あそこの床で丸まっているティッシュ、放り捨てたのを覚えてますか?」
「ああ……」
「あなたが自分でポイしたんですよ。これでもう頭の中の嫌なものはないはずです。気分はどうですか?」
「すごくすっきりしてます……!」
良かった。このすっきりとした状態のまま、良い気分で帰ってもらえたらうれしいです。