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金沢21世紀美術館「発酵文化芸術祭」で目に見えないものを見に行って感じたこと

日本人が感じる「見えないもの」に対する想いってね、深いですよね。

先日、金沢21世紀美術館で「発酵文化芸術祭」を観てきました。
今回はなんと主催の発酵デザイナー小倉ヒラクさんと料理家の有賀薫さんと共に回る、という超贅沢な旅。


なぜ私がこんな贅沢な旅に同席できたのか。これは以前有賀薫さんの書籍「だしらぼ」の出版記念イベントに参加した際、有賀さんから小倉ヒラクさんを紹介して頂いたことから始まります。

この本は食についての根源を知れるので超オススメ。そしてその後夏休みで行った大地の芸術祭の鑑賞中にばったりヒラクさんに再会。

その後有賀さんと日程調整して本来なら11月に行こうか、と話していた芸術祭に急遽9月の末に出向くことになりました。その発酵文化芸術祭とは、こちら。


私、美術関係の芸術祭に関しては国内外、かなり多くの参加履歴がございます。その中でもかなり異質な芸術祭でした。正直、上記の紹介を拝見してもいまいちピンとこない方も多いかと思います。今回はそんな方々にこの芸術祭ではどのような楽しみ方、感覚の目覚めかたが起きるかを初めて芸術祭という言葉に触れる方でもわかりやすくお話ししてみたいと思います。

この芸術祭、芸術祭との名前がありますが「芸術」の知識は正直あまり必要ないと感じています。では何が必要なのか。私は2つあると感じました。それは

「知らない場所に身を委ねる勇気」
「見えないものの存在を感じる感度」

今回の芸術祭のテーマは「発酵」だそうです。発酵?何それ?と思う方の方が多いのではないでしょうか。
味噌とか醤油とか。と言われるとあああ、って思うと思いますがその他お酢とか日本酒とか郷土料理とか色々出てくると「なんか難しい(古臭い)感じがする」「家族で行っても子供が楽しめなさそう」と思う方もいると思われますが、ちょっと待ってくださいな。少し角度を変えてみましょう。

日本というのはかつてその土地に明確な四季があり、その季節の変化に準じた料理方法が存在していました。それがいわゆる郷土料理でありましたが現在はその料理をそのままと同時に様々な方々に取り入れてもらえるようにどんどん確変しています。金沢を食、という視点で訪れたことは私はあまりなかったのですが車で回れば本当に活動の幅がひろがるんだというのを実感しました。
そして食の芸術祭、となると「食べる」がメインと思われがちですが、今回街に出たアートはわかりやすく「食べる」と直結していません←ここ重要。
でも、街で感じる芸術が常に食べると直結してないってのはある意味当たり前。だってねえ、そこには生活があるのだから。

そしてこの発酵芸術祭で注意して頂きたいのは「コンプリートを目指さない」ですね。今回の芸術祭はこちらでチケットを購入していただくと何回でも訪れることができます。遠方から来た場合は発酵文化芸術祭のサイトで(お醤油が好き、味噌が好き、お酢が好きなどの)目星をつけて行くのも良きです。最後金沢21世紀美術館の会場の物販コーナーでも色々買えますので!

では今回、私が印象に残った作品をいくつかご紹介。

お醤油やお味噌の工場でもあり、発酵について学べるヤマト醤油味噌ヤマト・糀パーク)。



こちらではドミニク・チェンさん、ソン・ヨンアさん、城一裕さん、三谷悠人さんのユニット「Ferment Media Research」。これは、人が発酵微生物たちと会話できるぬか床ロボットなんですね。(話しかける方がプロンプトを意識しておくとよりスムーズに)会話が成立していきます。ぬか床に仕込まれた機材を見るとそこには見えてないのになんか気分はAKIRAチックになっていくのは私だけでしょうか。
ヤマト・糀パークでは美味しいソフトクリームや定食も楽しめます。ここのソフトクリームを食べながら発酵していった菌と脳内で会話してほしい。。
ちなみにショップも充実してるけど(重たいものを持ち歩くのがしんどい)と思う場合はネットショップも充実。美味しかったものはぜひメモしてくださいな。


同じく大野エリアの紺市醤油さんはまさにお仕事してる場の横に作品が。

この生きてるような動きをする三原 聡一郎さんの作品は身を委ねると時間が溶けます。

こちらの作品は長さ4メートルの能登ヒバの棒3本がゆっくり回転する作品。蔵の温度や湿度、微生物の働きで、しなりや色の変化が次第に現れるそうです。確かに接写すると微生物の変化が。築100年の蔵の見えない歴史を体感できますね。ほんまに時間溶けますのでお気をつけて。

ちなみに今回の旅。ヒラクさんに「お昼はカレーだから」と先に宣言されていたのですね。金沢でカレー?確かにゴーゴーカレースタジアムあるけど?等思っていたのですがどうしてもカレーにする理由がありました。それは「じょーの箱」という会場でVIDEOTAPEMUSICを体験するため。

そのためにはまずJO-HOUSEでカレーを食べることがとても重要だったのです!

こちらのJO-HOUSE。金沢のストリートカルチャーの発信地として有名な場所だったそうで素敵なZINEも置いてありました。このJO-HOUSEの関連施設が今回の作品を拝見するじょーの箱でした。

こちらの映像作品、当時この近辺を撮影したVHSの映像と現在の映像、そして発酵を推進させるために歌われていた唄を現代の作家が歌った音楽をコラボしたとても不思議な空間。
初めてなのに懐かしい。とてもあったかい空間。しかもさっき食べたカレーの暖かさを体内で感じながらお店の人のあたたかさを思い出したりして、なんか泣きそうになってしまった。
今、若い人たちがVHSとかフィルムカメラとかガラゲーの雰囲気を思い出す感覚ってこういう感じなのかな、と勝手に想像したりしながら自分の若い時を思い出したりしてました。

ヒラクさんのお話ではこの作品、地元の方、特に年配の方が体感して涙涙っていう感じだそうです。さあみんなで泣こう。

その他にも作品は各所に点在してますが、正直全部回れないと思います。それは距離的、時間的な理由もあるけど最大の理由は「目に見えないものに包まれて時間が溶ける」から。なんか街の中に溶けて行くような感覚。初めてなのに過去を知ってるような感覚。
これは芸術祭で初めて体感する感覚。同時に「今年も来年もまた次の年も、ここに来たら思い出せそう」と過去と現在と未来が繋がる感覚。


昨今の日本人って見えないものに対して評価を避けてる(社会的や金銭的、数字的な評価があるものをありがたがる傾向)部分があると思うのですが本来の日本的思考って自然全てに神が宿るというものだったはず。そう、かつては見えないものに関してもっと自然に価値を見いだせていたはずなんです。
この芸術祭に参加して金沢の街を歩いているとその「見えないものに対しての素直なリスペクト感」を思い出せる気がします。

これから金沢は本当に美味しいものが増える良い時期なので、ぜひご家族や大事な人と一緒に来てほしい。そこで作品を見ながら街を歩いて美味しいものを食べて風を感じて時間が溶けるのを感じて。
その時の感覚は過去に溶けて未来に繋がっていくと思うから。

そして最後は金沢21世紀美術館の本館横のプロジェクト工房へ。ここでは先に拝見した工房や蔵、郷土料理や文化などの展示があります。とてもわかりやすいですし実際に匂いも体験できます。


食べたくなったら工房前のショップで買い物もオッケー!(実際に食べるときは工房の外のお庭で☺️。気持ちいいですよ)



ちなみに10月13日には金沢21世紀美術館の中庭でマルシェが開催されるとのこと。(タイムスケジュールをヒラクさんのFBより拝借してきました)。こちらの中庭、マジで気持ちいいのでピクニックシートを持参して行くと最高だと思います。お天気も現在の予報では良好のようです。

この私のレポを読んで「行ってみようかな」と感じたら、ぜひこちらのクラウドファウンディング経由でチケットを買ってみてください。
ものすごくわかりやすく、そして綺麗なパンフレットが付いてきます。

こちらには車あり、車なしのそれぞれのおすすめコースも書いてあります。そしておすすめのお土産、お店なども書いてありますのでぜひ。
私ももう1回行けたらいいな、行きたいな。

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