お姫様ラッコ
ああ、お食事タイムね。
ほら、飼育員さん、いつもみたいにそっと抱き上げてちょうだい。
お姫様抱っこね。
(飼育員にそっと抱き上げられながら)
そうそう、その調子。
国内で私だけが残されたおばあさんラッコだって、知っているでしょう?
うん、そうなのよ。
あの愛くるしい仲間たちはみんな旅立ってしまったの。
気づけば私一人。
ラッコの名誉と栄光を背負う存在になっているわけ。
(飼育員は優しく餌を口元に)
ふむ、このご飯もなかなか悪くないわ。
昔はここもぎやかだったのよ。
水槽のあっちでガシャガシャ、こっちでクルクル。
今じゃ寂しいものね。
まったく、こんなにおばあちゃんになってもお姫様って大切にしてくれる。
でも、仲間のいない宮殿は寂しいわ。
(飼育員が笑顔を見せるのを見て)
まあ、わかるわ。
精一杯長生きさせてもらうわよ。
体の自由もきかなくなったけど、さ、飼育員さん、次のひとくちお願いね。
私、水族館最後の大切なお姫様ラッコなんだから。
文字数:402字
水族館のラッコを調べてみると、悲しい生き物なんです。
ラッコの生息地は、北アメリカから北海道の北東部。
現在では各国が法律で保護しており、捕獲や輸入も閉ざされた状況だ。
水族館で飼育されているラッコたちも、老齢化が進んで、繁殖も難しい状況だ。
愛くるしいラッコの姿を、水族館で見られなくなる日もそう遠くはないかもしれない。
・・・と。
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