まさ せいこう

富士山の麓で創作の森を彷徨うカエル(筆者)。小説・エッセイ・写真などの創作活動をしています。Kindleで6冊の「超ショート・ショート」を出版していますが、更に活動の場を広げ、創作活動をされている方々と繋がりたいと願っています。

まさ せいこう

富士山の麓で創作の森を彷徨うカエル(筆者)。小説・エッセイ・写真などの創作活動をしています。Kindleで6冊の「超ショート・ショート」を出版していますが、更に活動の場を広げ、創作活動をされている方々と繋がりたいと願っています。

最近の記事

不眠症浮袋

不眠症に悩む男がいた。 酒を飲んでも、薬を飲んでも眠ることができない。 ネットで調べると、 波の音は、不眠症に対して効果的であるとされています。心拍数や血圧を下げることで、リラックス状態を促進します。 波に揺られているような感覚も、リラックス効果を高めることができます。揺れのリズムが心地よく、体と心をリラックスさせる効果があります。これは、赤ちゃんが揺りかごで揺られると安心して眠るのと似た効果です。 とあった。 試したい。 だが、都心の狭いマンションに住む男には、海

    • 無人島生活福袋

      流れ着いた場所は、小さな無人島のようだった。 そう、俺たちは昨晩クルーズ船で年越しのカウントダウンをしながら騒いでいた。 その時、船は何かに衝突して・・・ どうやらこの島に流れ着いたのは俺一人。 手に持っているのは、なぜか福袋。 カウントダウンパーティーで受け取ったものだ。 こんなものを大事に握りしめながら、こんなところに流れ着いたのか。 中に入っていたのはウサギのぬいぐるみ。 何の助けになるんだよ。 俺はぬいぐるみを放り投げた。 時は流れた。 ようやく俺は救助された

      • 缶蹴り恋愛逃走中

        とある村の「追いかけ祭り」 毎年恒例のこの恋愛成就祭がSNSでバズり 好きな男子の名前を書いた缶を蹴り その缶を持って彼を捕まえれば恋が叶う と話題に 今年は村外からも多くの女子が押しかけ 小さな神社の境内は大混乱 神主の祝詞に続いて太鼓が鳴り響き いざ祭り開始 ユリは片思いの彼に思いを込めて缶を蹴り飛ばしたものの 缶を蹴る女子はユリだけじゃない 勢いよく飛んだ無数の缶は あちらこちらに音を立てて転がり まあ騒がしい 境内は缶に名前を書かれた男子を追いかける女子たち

        • 長距離恋愛販売中

          今どきにピッタリなサービスってことで 遠距離サブスク なんてのが販売されまして 月額料金を払えば毎月違う街の恋人候補とオンラインデートが楽しめるって寸法です ある男 この遠距離サブスクに申し込んだんですな で 最初の相手は北海道のユウコさん 「これはいい!」 しかし 次の月になってもまたユウコさん しかも今度は沖縄って言うじゃありませんか 「あれれ?」 それからもパリのユウコさん ロンドンのユウコさん と毎度違う街から登場するんです 不審に思い運営会社に問い合わせ

          キンモクセイ盗賊団の池

          今、全宇宙の注目を集めている盗賊団「キンモクセイ」。 彼らのアジトは、とある惑星、地球の密林の奥に存在する池のほとりにあることは知られていない。 この池の周辺には、盗賊団の象徴でもあるキンモクセイの甘い香りが立ち込めている。 実はこの香り、盗賊団の科学者が「キンモクセイの香りが人間の防衛本能を鈍らせる」という特性に気づき、それを応用して作り上げた最強の兵器だった。 盗賊団は、この香りをキンモクセイNo.5と呼び、絶対的な自信と誇りを持っていた。 しかし、ある日、何も知らない子

          キンモクセイ盗賊団の池

          沈む寺

          海抜ゼロメートル地帯にある古びたお寺。 住職は悩んでいた。 人口減少に伴い檀家は減り続け、寺を維持することが難しくなっている。 経営状態は沈みっぱなし。 しかも地球温暖化の影響で、海水面は上昇し、寺自体も海の底に沈み始めている。 しかし長年続いたこの寺を、たたむわけにはいかない。 月日は流れた。 檀家も離れてしまい、ついに寺は海に沈んでしまった。   ある日、ふと住職が窓の外を見ると、大小さまざまな魚たちが寺の周囲に集まり、興味深そうに中を覗いている。 住職はひらめいた。

          お姫様ラッコ

          ああ、お食事タイムね。 ほら、飼育員さん、いつもみたいにそっと抱き上げてちょうだい。 お姫様抱っこね。 (飼育員にそっと抱き上げられながら) そうそう、その調子。 国内で私だけが残されたおばあさんラッコだって、知っているでしょう? うん、そうなのよ。 あの愛くるしい仲間たちはみんな旅立ってしまったの。 気づけば私一人。 ラッコの名誉と栄光を背負う存在になっているわけ。 (飼育員は優しく餌を口元に) ふむ、このご飯もなかなか悪くないわ。 昔はここもぎやかだったのよ。 水槽のあっ

          この中にお殿様はいらっしゃいますか?

          旧型のロボットが、よろよろと動いている。 最終戦争前に作られたその体は、傷つき、あちらこちらが錆びている。 ということは数百年前から、この赤茶けた大地を彷徨い続けているのだ。 ロボットが、ようやく一つのコロニーにたどり着く。 地球上にわずかに残った人間たちが築いた小さな拠点。 そこへ、ロよろよろと入り込み、かつての使命を思い出すかのように周囲を見回し声を上げた。 「この中にお殿様はいらっしゃいますか?」 突然の問いに、人々はしばし沈黙したあとこらえきれず笑い出す。 「お

          この中にお殿様はいらっしゃいますか?

          それでも地球は曲がっている & 蕎麦でも気球は浮かんでいる

          二作品、続けて読んでください。 もちろん、それぞれ独立した作品にはなっています。 「それでも地球は曲がっている」 地球上にはまだ科学で説明できないことがたくさんありますよ! 秋空に、風に乗って気球飛んでいる。 ゴール地点に向かって一直線に進んでいる。 乗っているのはSF作家を目指す青年と先輩である科学者だ。 現代の科学じゃまだ証明できないことが沢山あるんです。 とSF作家は息巻いている。 まず、この気球のです。 風に乗って直線に進んでいると感じてますが、実際には歪ん

          それでも地球は曲がっている & 蕎麦でも気球は浮かんでいる

          人生は洗濯の連続

          むかしむかし、おじいさんとおばあさんが住んでいました。 おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に。 絵本を開きながら、私は母親から聞かされた昔話を、わが子にも読み聞かせていた。 桃太郎である。 私の母親は、祖母から聞かされたという。 祖母はさらにその母から。 そして私の娘も、いつか生まれてくるであろう娘に、絵本を開き同じ話を繰り返すのだろう。 だけど、昔話に出てくるおばあさんたちは、何代にも渡って川で洗濯ばかり。 現代の私たちは、家の中の洗濯機でボタン一つで完

          人生は洗濯の連続

          錬成は電卓の親族

          なんでぇ、今回のお題は「錬成は電卓の親族」だってぇ?  またやっかいなお題を出しやがるじゃねぇか。 おいらにそんなん分るかぁっての。 そんなことより商売商売! 商売ってのは、やらなきゃなんねぇことが山ほどあるんだよ。 金勘定だってきっちりしねぇと、またカミさんにお小言食らっちまう。 え、計算の手が早いってか? そりゃそうさ! 毎日毎日、カミさんに怒られないように必死で鍛えてんだからよ。 俺みたいなバカでも、長年やってりゃこうなるってもんだ。 ほら、暗算で、ちょちょいのちょいよ

          錬成は電卓の親族

          宇宙人ジョーンズのビジネス観察記録「日本の工場長という生き物」

          はじめに私は工場業務の効率化を支援するコンサルタントとして活動していますが、ある日、不思議な出来事が起こりました。 まるで第三者の意識が私の脳内に入り込んできたのです。 その意識の主は、「宇宙人ジョーンズ」と名乗り、遥か遠くの高度文明社会から地球を観察しにやって来たと言います。 ジョーンズは、私が仕事中に突然話しかけ、鋭い指摘や奇妙な質問をぶつけてきます。 そのやり取りが面白すぎて、つい仕事中に笑ってしまうこともあれば、鬱陶しさに頭を抱えることも。 しかし、なぜか

          ¥100〜
          割引あり

          宇宙人ジョーンズのビジネス観察記録「日本の工場長という生き物」

          ¥100〜

          激辛の鏡

          味覚を視覚化する「味覚を映す鏡」は、開発者たちの期待通り、食べる前に味を確かめる安全な方法として注目を集めていた。 酸っぱい梅干しを映せばしっとりとした雨の景色が、苦いコーヒーを映せば深い森の映像が浮かび上がる。 こうして人々は、事前に食べ物の味を見て選ぶことができるようになった。 ある日、レストランのオーナーがその鏡に「激辛カレー」を映してみたところ、鏡が突然、異常な反応を示した。真っ赤なカレーが映った瞬間、鏡の中で小悪魔たちが現れ、激しく踊り狂い始めたのだ。 彼らは笑い

          夜からの手紙

          寝苦しい夏の夜、ヒロシは枕元に見慣れない封筒を見つけた。 差出人は 夜(幽霊代筆) と書かれている。 そこには涼しげな文字でこう書かれていた。 拝啓 ヒロシ様。私は夜の代理を務める幽霊です。貴方が暑さで寝苦しい思いをされているかと思い、涼しさをお届けしようと現れました。私がそばにいるだけでひんやりするはずですから。 その瞬間、ヒロシの部屋にひんやりとした風が流れ、汗ばんでいた肌が少し涼しくなった。助かるよ。 とヒロシは感謝した。 幽霊がほっとしたように微笑んでいる。 と

          インドを編む山荘

          編み物で世界を表現する芸術家として有名な老人のもとに ある日特別な依頼が舞い込んだ インドを編んでほしいという依頼だ デザインは大変細かく 網目単位に指示がなされていた このような依頼は彼にしかできないであろう 高齢である老人は これが最後の仕事に相応しいと感じ引き受けた そして彼は静かな山荘に一人引きこもり 黙々と編み物を続けた サリーの鮮やかさやインドの神秘性を象徴する複雑な柄が 次々と編み込まれていった 老人は知らなかった 依頼主はクーデターを目論む秘密組織 編目の

          インドを編む山荘

          バンドを組む残像

          久し振りに親子三人で囲む週末の食卓 お父さんが娘に 母さんからおまえがバンドを始めたって聞いたぞ 面倒くさそうに頷く娘 お父さんはお構いなしに喋りだす 実は、俺も昔バンドやってたんだよ 娘はまた始まったと思いながらも へぇ とだけ答えた お父さんはすっかり自分の世界に 俺たちのバンド、あの頃はマジですごかったんだ 地元じゃかなり有名でライブはいつも満員 ギターを持ってステージに立つとファンが大騒ぎさ 娘は黙々とご飯を食べている お母さんはなぜかニコニコ聞いている

          バンドを組む残像