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この中にお殿様はいらっしゃいますか?

旧型のロボットが、よろよろと動いている。
最終戦争前に作られたその体は、傷つき、あちらこちらが錆びている。
ということは数百年前から、この赤茶けた大地を彷徨い続けているのだ。

ロボットが、ようやく一つのコロニーにたどり着く。
地球上にわずかに残った人間たちが築いた小さな拠点。
そこへ、ロよろよろと入り込み、かつての使命を思い出すかのように周囲を見回し声を上げた。

「この中にお殿様はいらっしゃいますか?」

突然の問いに、人々はしばし沈黙したあとこらえきれず笑い出す。
「お殿様? そりゃ懐かしい言葉だ!」
「うちの亭主は何もしねえで寝てばっかり、まさにお殿様さ」
「俺、ここじゃファッションリーダー、オシャレ殿様ってね」
「あいつはAIマニアだ、AI殿様だな!」

ロボットは答えを見つけられないまま、コロニーを離れ再び荒れた大地に向かって歩き出した。

私のお殿様を探さなければ…
ロボットに唯一残る、かつてある「お殿様」の子守ロボットだったころの記憶。

文字数:410字

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