授業中、椅子に座っている息子
こだわりの強い子。最近はそういう子が増えているそうです。
だってこだわりの強い大人が多いのですからね。
こだわりの強い父とこだわりの強い母から生まれた子が、なんのこだわりも持たない子として生まれるわけがありません。
靴下の縫い目を絶叫して嫌がることも、
大雨の日に長靴をはかないことも、
慣れたマスクが手元にないなら、1時間の道のりでさえ引き返そうと大泣きすることも。
その場では頭に血が上り過ぎて、本人と一緒にキーーーッとなってしまいますが、ほんの少し時間が経てば、
そりゃそうだよね。気持ち、わかるよ。
となるのです。
お母さんも昔ね・・・と話しだせばもう、
お互いに「あなた、変わってるねぇ」と言い合って笑顔で温かくなるのです。
それでも。公園、図書館、レストラン。
順番が待てない、周りの空気を読めない、突然大声を出したり突然走り出したり。
世の中の目が怖い。人に気を遣ってしまう。周りの様子を気にし過ぎてしまう。
慣れてきた、と思っていたのに、まだ気にしてしまう自分がいます。
先日、はじめての授業参観がありました。
あの息子が、いったいどうやって授業を受けているのだろう。
楽しみで顔がひきつるほど。
いちばん後ろの席で私に気がつくと、一生懸命手をのばし、「おかあさん、大好き」と口をパクパクさせながら、ニコニコ笑顔をなげかけてきます。
先生の言うことは全く耳に入っていない。
うわぐつはかかとを踏んで、ぶーらぶら。
鉛筆を口にくわえ、かじってかじってボロボロ。
担任の先生はとても優しい。
クラス全体をよく見ながら、全く参加していない息子にも時々声をかけてくれます。
全く耳に入っていない授業の内容。
のはずですが、最後に問題を解く時間になり、先生が見回りにくると、
なんと正解。
いつのまにやったんだろう、とずっと見ていたはずの自分の目を疑います。
それにもびっくりしたのですが、でもやはりいちばんびっくりしたのは、
あの息子が授業の最初から最後まで、椅子に座っていたことです。
夕方のランドセルからは、切り刻まれ穴の開いた教科書やノートや、もう10年も20年も使っていそうな筆ばこが悲鳴をあげて這い出てきます。
落書きどころではない。グサグサっと穴を開けてあったり、一面全てが塗りつぶしてあったり。やぶれたページが何ページあるかもわかりません。鉛筆はすべてかじってボロボロになっていたり、消しゴムは原型をとどめていない。
新品のはずの油性ペンも1週間もしないでインク切れ。
どうやったらこうなるんだろう。
と、思っていました。
元気いっぱい「楽しかったー!」と帰ってくる学校生活について、ほとんど心配はしていませんでした。
きっと自由に歩き回ったりしちゃって、迷惑かけちゃってるんだろうな。申し訳ないけど、本人が楽しいならいいのかな、先生とは連絡を取り合っているし。何かあればきっとすぐに知らせてくれるだろう、と思っていました。
(同じクラスのお友達。授業を妨害していたら本当に申し訳ない)
ただ、それでも先生は「授業中に他の子に迷惑をかけるなんてことは一度もありません」との話。
信じられない、という思いで行ったのです。授業参観。
この日に全てが解明されました。授業に集中できない息子は、筆ばこの中身たちを相手に格闘していたのですね。文房具たちをかじったり、壊したり、削ったり戦わせたり。
そんなことと引き換えに、彼は椅子に座っていたのです。
本当なら授業に集中して楽しく勉強ができればいちばん良いのだろうけど。息子はそれができません。それでもなんとか自分なりに見つけたこの方法で、椅子に座っていることに集中していたのです。
座っているべき時間なんだ。と理解している息子を、誇りに思います。
衝撃的な授業参観日なのでした。
そんな出来事から、息子の良いところがはっきりと見えてくる今日この頃。
大好きなコンソメ味のポテトチップスやチョコレート。
どんなに大好物でも、「おかあさん、ひとつあげようか?」
と分けてくれます。
よく思い出すのは、父のこと。私がまだ息子のような小学生だった頃。
夜遅く帰ってきた父が、マルちゃんラーメンをよく作っていました。バターとコーンが入った濃いラーメンで、ものすごく美味しいのです。
2階から起きてきて、「いいなぁ、お父さん」と言ったら、「あげるよ」と、くれました。その時の私は、どうしてこんな美味しいものを、自分の大好物をあげられるんだろう。と思ったものです。
今の私なら、子どもたちにそうしてあげることは簡単ですが、小学生の息子が私に向かって大好物をくれるなんて。信じられない。
どんなに乱暴で、いい加減で、面倒くさがり屋で、何度言ってもYoutubeがやめられない、悪い言葉を覚えてくる、姉に暴力を振るう、大声が近所迷惑、お風呂の後はハダカのままガンプラをいつまでもいじっているような息子でも、
優しい子です。
これだけで十分。というか、十分過ぎる。
いつものオンライン英会話。先日良いことを聞きました。彼女はテキサスで何十年も小学校の先生をしていた人ですが、
「Amazonで調べてごらん。教室で集中できるようにさまざまなグッズが売られているよ。」
教えてくれたのは、机の足の部分に取り付けるゴムのようなものや、お尻の下に敷く座布団みたいなもの。それぞれ、ADHDの特性のある子たちが、机の下でエネルギーを発散できるように、教室に持ち込んで良いそうです。(おそらくもう、ずいぶん昔から)
(すみません、なぜかamazon.usaのページのリンクが貼れなかったので、国内で見つけた似たようなものを・・・。海外の製品にご興味のある方は、amazon.usaで、「school supplies for kids with adhd」などで調べてみてください。)
いっとき流行ったハンドスピナーも、海外ではADHDの子たちが活用しているようですね。
国内でも調べてみると、関連した本はたくさん出てきますが、グッズは、良いものがあまり出てきません。
チェーンみたいなカラフルなおもちゃや、Rubik's Cubeを手に持たせたりしていますが、なかなかそれを学校の授業中に手に持つ。・・・にはまだ日本の公立校では勇気がいります。
文房具たちの悲痛な叫びが聞こえてきます。
「そのオモチャ、買ってくれー、買ってくれー、身がもたないよー」
今度、担任の先生に聞いてみようと思います。
日本の学校もさらにインクルーシブ教育が進み、多様性の意識がもっともっと広がればいいなと思います。