容認できない【除染土再利用】
本誌に寄せられた環境省令案「反対意見」
環境省は1月までに「放射性物質汚染対処特措法」の施行規則の一部を改正する省令案をまとめ、1月8日から2月7日までの期間、同省令案に関する意見募集(パブリックコメント)を行った。同省令案は除染土再利用に関するもので、これについては本誌でも再三問題提起してきた。あらためて、この問題について考えていきたい。
原発事故を受け、県内広範囲で生活圏の除染が実施された。それに伴い、大量の除染廃棄物が発生することになった。
これら除染廃棄物は、大熊・双葉両町で稼働・建設中の中間貯蔵施設に運び込まれ、そこで30年間管理・保管された後、県外で最終処分されることが法制化されている。中間貯蔵施設の運用の〝起点〟は2015年3月となっており、そこから30年間、つまり2045年3月までに同施設から除染廃棄物をすべて運び出さなければならない。
とはいえ、ルール上はそうなっていても、その通りに進むとは思えない。県外最終処分の見通しは全く立っておらず、引き受け先が見つかる見込みが薄いからだ。
当然、国(県外最終処分を法制化した人たち)も、そのことは分かっているはず。しかし、搬出は30年先の話で、いま「責任ある立場の人」は、そのころにはそんな立場にはいない。つまりは「後は野となれ山となれ」でそうした方針が決められた状況なのである。
「本当に30年後に運び出せるのか」との疑念は、大熊・双葉両町の関係者のみならず、多くの県民が感じているところ。最終処分場が決まらない限り「このままなし崩し的に最終処分場にされるのではないか」といった心配は付きまとう。それどころか、ほかの「核のゴミ」が持ち込まれることさえも考えられる。
一方で、立地町では30年後の「対抗策」を考えている。以前、双葉町の伊澤史朗町長が町政懇談会でこんなことを述べていた。
「中間貯蔵施設に運び込まれた除染廃棄物は、30年後に県外搬出することが法制化されています。ただ、最終処分場が決まっていない中、中間貯蔵施設を最終処分場にさせないための担保をどうやってとるか。中間貯蔵施設の用地のうち町有地は約25%を占めます。町有地を国に売却せず、賃借にする方が30年後に搬出させることのより強い担保になるのではないか。国が30年後に持っていくところがないと言っても、『町の土地をもう貸しません』と突っぱねることができますから。この方針にご理解いただけますか」
基本は、国が「30年後に県外で最終処分する」と約束(法制化)した以上、それを確実に実行してもらうよう求めていくことになるが、一方で、それが現実的でない以上、運び出せなかった時のことも、いまから考えておくべきだ。この点に関しては本誌で指摘しているように、「搬出完了が1日遅れるごとに、違約金をいくら払え」ということを求める訴訟準備をいまからしておき、30年後の県や立地町の責任者に継承していく必要がある。
中間貯蔵、県外最終処分には、こうした問題があることを最初に指摘しておきたい。
そんな中、除染のあり方などを定めた「放射性物質汚染対処特措法」の基本方針では、「可能な限り減容化を図るとともに、減容化の結果分離されたもの等汚染の程度が低い除去土壌について、安全性を確保しつつ、再生利用等を検討する必要がある」とされている。
これに基づき、環境省は2016年に「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」「工程表」を取りまとめ、さらに「再生資材化した除去土壌の安全な利用に係る基本的考え方について」で、除染土再利用に関する基本方針を示した。
それによると、中間貯蔵施設に搬入される除染土などは最大2200万立方㍍になると推察されるが、全量をそのまま最終処分するのは難しいため、安全性を確保しつつ、地元の理解を得て再生資材として利用することを目指す、とされている。
具体的には、管理主体や責任体制が明確な公共工事に限定して、盛り土などに用いる。例えば、道路の盛り土などに使い、それをアスファルトで被覆することで、放射線の影響がないようにする、といった形である。利用に当たっては、放射能濃度1㌔当たり8000ベクレル以下に限り、破損などを除く通常供用時で周辺住民・施設利用者への追加被曝線量が年間0・01㍉シーベルトになるようにする。
こうして、除染土を資材化することで、管理しなければならない除染土の容量を減らし、最終処分に必要な敷地面積・埋め立て容量を減少させ、県外最終処分をより現実的にする狙いがあるという。
各地の「実証事業」経過
この方針の具現化に向け、2017年4月から、南相馬市小高区の東部仮置き場で実証事業が行われた。事業概要は、大型土のう袋を開封し異物を除去した後、放射能濃度を測定して使用可能と判断した土壌の品質(水分・粒度など)を調整する。それを使って盛り土を施工し、完成後の空間線量などの測定を行う。
同実証事業に関する環境省の発表では「空間線量率・大気中放射能濃度は、除去土壌搬入開始前と搬入後において、大きく変動しておりません」、「盛り土への浸透水の放射能濃度は期間中、すべて不検出(検出下限値未満)となっています」、「有識者検討会においても、再生利用について今回の手法において安全性を確認しました」と分析されている。
そのほか、飯舘村の帰還困難区域(長泥地区)でも実証事業が行われている。この点については、本誌1月号「飯舘村長泥地区 空虚な復興拠点整備」という記事で紹介した。
同地区では、村内にある除染土のうち1㌔当たり5000ベクレル以下のものを再生資材化し、農地造成に使用しているが、地区住民にとって実証事業受け入れは「苦渋の選択」だったようだ。
以下、同記事から関連部分を抜粋する。
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当初長泥地区は国から「復興拠点に該当しない」という判断を示されており、「せめて住民が一時帰宅時に集えるミニ復興拠点を」と要望していたほどだった。そうした中で国から交換条件のような形で示されたのが、実証事業の受け入れだった。
新潮社の有料会員制情報サイト「フォーサイト」に掲載された「帰還困難区域『飯舘村長泥』区長の希望と現実」という記事では、長泥地区の鴫原良友さんの話を基に、再生利用実証事業受け入れに至った経緯が次のように書かれている。
《2017年10月に環境省が村に提案した「環境再生事業」がきっかけだ。(中略)「有効性が証明された事業を長泥でやってみてはどうか、という提案だった」(飯舘村役場)。同省は、この方法で汚染土を全国の公共工事に再利用する方針を打ち出しており、実用化されれば第1号となる。村から鴫原さんら行政区に紹介されたのは10月末。役員会、住民への説明会を経て、菅野典雄村長、伊藤忠彦環境副大臣と鴫原区長がそろって、村役場で「長泥での環境再生事業実施で合意」を発表したのが翌11月22日という早さだった。
(中略)「国内、世界でも初めての手法なのだそうだ。地元は歓迎しているという印象だが、『(環境再生事業を)受け入れなければ、話をこのまま国に返すほかないんだ』と役場からは言われた。やるか、やらないか、しかない雰囲気だった。古里に外から汚染土を持ってこられて、誰も喜ぶはずはない。だが、事業をやることで(年間被ばく)線量が帰還困難区域の指定基準(20㍉シーベルト)より下がれば、解除されて帰還宣言を出せるだろうとも言われた。俺たちからすれば苦渋の選択だった」(鴫原さん)》
放射性物質を取り除くために村内各地区から運び出された除染土壌を、公共工事どころか農業用地の土壌として受け入れなければならないのは相当な抵抗感があったはず。
「何とか長泥地区を残したい」という住民の思いにつけ込み、通常であれば猛反発が予想される農業用地への除染土壌再利用を実現させた国の狡猾さが分かる。復興メニューは国にとって都合のいい政策を進める際の〝エサ〟にもなっているということだ。
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一方、実証事業計画が頓挫した事例もある。1つは二本松市原セ地区の市道整備で路床材として用いる実証事業(詳細は本誌2018年7月号でリポート)、もう1つは南相馬市小高区の羽倉地区周辺で、常磐道拡幅工事の盛り土に使う実証事業(同2019年2月号)。いずれも、周辺住民から反対意見が相次ぎ、計画を白紙に戻した経緯がある。
当時、本誌が同実証事業について取材した中では、「道路の盛り土に使うということは、半永久的にそこに留め置かれ、事実上、そこが最終処分場になってしまう」、「計画地の近くに農地を持っているが、取引先から『同実証事業が実行されたら、取引は控えたい』と言われた。そういう影響がある以上は容認できない」といった話が聞かれた。
近隣住民からそういった不安の声が出るのは当然と言える。
環境省令案の中身
そんな中、環境省は1月までに「放射性物質汚染対処特措法」の施行規則の一部を改正する省令案をまとめ、1月8日から2月7日までの期間、同省令案に関する意見募集(パブリックコメント)を行った。
同省令案では「県外最終処分に向けた再生利用の取り組みを安全かつ適正に進めるため、除去土壌の処分の基準としての必要な規定を設けることとする」として、以下のような基準を示している。
①除去土壌の再生利用は次のように行う。
・国、自治体、そのほか環境大臣が定める者が除去土壌の再生利用に係る工事を施工する。
・国、自治体、そのほか環境大臣が定める者が除去土壌の再生利用を行った場所の管理を行う。
・除去土壌が飛散、流出しないようにする。
・再生利用に伴う悪臭、騒音、振動によって生活環境の保全上、支障が生じないように必要な措置を講ずる。
・再生資材化(除去土壌を用途先で用いられる部材の条件に適合するよう、品質調整、工程管理を適切に行うことにより利用可能な状態にすること)を行った除去土壌を用いる。
②除去土壌の再生利用を行った場所の周辺で、放射線量を定期的に測定し、記録する。
③次に掲げる事項の記録、除去土壌の再生利用を行った位置を示す図面を作成し、再生利用を行った場所の管理が終了するまで保存する。
・工事計画、設計に係る情報
・再生資材化を行った除去土壌の数量、事故由来放射性物質の濃度
・土地の形質の変更に伴い生じる再生資材化された除去土壌の運搬、保管に係る計画
・再生資材化を行った除去土壌の再生利用を行った年月日
・再生資材化を行った除去土壌を引き渡した担当者、除去土壌の引き渡しを受けた担当者、運搬車を用いて運搬が行われた場合は運搬車の自動車登録番号、車両番号
・除去土壌の再生利用を行った場所の測定、点検、検査、その他の措置
④除去土壌の再生利用に当たっては、用途に応じた必要な厚さの覆土、これに類する覆いによって除去土壌を覆うとともに、必要な厚さを維持する。
⑤除去土壌の再生利用を行った場所で除去土壌の掘削を伴う土地の形質の変更をする場合は、その30日前までに、以下の事項の記載書面を環境大臣に届け出る。
・土地の形質の変更の施工に当たり、周辺の生活環境に及ぼす影響について実施する調査計画書
・土地の形質の変更の施工に係る工事計画書
・土地の形質の変更の施工方法を明らかにした平面図、立面図、断面図
・土地の形質の変更の終了後における当該土地の利用の方法を明らかにした図面
⑥除去土壌の再生利用に当たっては、再生資材化を行った除去土壌を引き渡した者、除去土壌の引き渡しを受けた者、除去土壌の再生利用を行った場所を管理する者の間で、適切な役割分担、連携事項の書面を作成し、再生利用を行った場所の管理が終了するまで保存する。
この省令案に対してパブリックコメントが実施されたわけだが、本誌にはいくつかの個人・団体から「除染土再利用には反対だ。当然、今回の省令案も容認できない」といった声や「反対の立場で意見書を提出した」として、意見概要などが寄せられている。
原子力市民委の提出意見
その中から、「原子力市民委員会」が提出したパブリックコメントを紹介したい。ちなみに、同委員会はNPO法人高木仁三郎市民科学基金(河合弘之代表理事=弁護士)が立ち上げた団体で、脱原発社会構築を目指し、さまざまな政策を策定し提言している。メンバーには大学教授、弁護士、原発技術者、市民団体関係者などが名を連ねる。
本誌では、昨年11月号「汚染水モルタル固化案の可能性」という記事で同委員会を取材した。同委員会では汚染水をセメント、砂と共にモルタル固化し、コンクリートに流し込む「モルタル固化案」を提唱しており、その概要を紹介したものだ。
同委員会が提出したパブリックコメントを紹介する前に、同委員会が2019年5月に発表した関連声明の要旨を記しておく。
1、除染土の「再生利用」を実施してはならない。安易な「埋立処分」も進めてはならない。
2、除染土の再生利用と埋立処分の「実証事業」は、そのまま事実上の最終処分となりかねない。事業の安全性は恣意的な手法で「検証」されているにすぎない。住民の合意はおろか理解を得ないままの強引な「実証事業」の推進、ならびに再生利用に伴う手引書の作成、埋立処分に関する省令の策定作業は、即刻中止すべきである。
3、国は、福島県内の除染土については中間貯蔵施設に持ち込み、30年後に県外の最終処分施設に移設するとしている。また、福島県外の除染土については各県内で処分するとしている。福島県内か県外かによって扱いを区分する方針そのものが除染土についての市民の理解を混乱させ、さらには、福島県内の除染土の「再生利用」と、県外の除染土の「埋立処分」という2つの問題を生じさせている。政府は、いったんこれらの方針を取り下げ、国民の熟議と合意に基づき、福島原発事故由来の放射性廃棄物・除染土の体系的な最終処分のあり方を再構築すべきである。
4、従来の放射性物質管理のあり方と、除染土の「再生利用」や今般の「実証事業」に見られる簡易な埋め立てのあり方とには、二重基準(ダブルスタンダード)が存在している。これは、放射性物質管理行政を混乱させ、将来、さらに大きな問題を引き起こす可能性がある。原子力行政を国策として推進してきた日本政府は、事故発生の責任を認め、除染土を含む放射性物質の管理行政をより厳重なものとしなければならない。
同委員会はパブリックコメントに当たり、「この基本的な考え方は変わっていない」としたうえで、それを踏まえて以下のような意見を提出した。なお、意見は1〜6に分かれており、1、2は手続き論、法解釈に基づく意見が記されているが、ここでは割愛する。
× × × ×
意見3、この省令案で定める基準では実効的な管理はできない
この省令案で新たに設けられる「除去土壌の再生利用の基準」には、除去土壌の再生利用に係る工事の施工主体、場所の管理主体、飛散・流出防止措置、生活環境の保全措置、再生資材化の義務、放射線量の定期的測定、位置図の作成・保存、被覆による遮蔽、形質変更の際の届け出などが定められているが、具体的な基準は何ら示されていない。たとえば、以下のような規定がない。
①どのような用途に除去土壌が再生利用されるのか、②どのような濃度の放射性物質を含む除去土壌が用いられるのか、③どのような対策と方法で住民の健康や生活環境が守られるのか、④各種措置の遂行にあたって実施主体はどのような責任をいつまで負うのか、⑤事業の実施主体と管理主体はどこまでの範疇なのか、⑥各種措置の監督責任は誰にあるのか、さらに⑦規則に違反した場合の是正や罰則に関する規定もなければ、⑧国民や地元自治体等への情報公開の規定もない。すなわち、この基準では実効的な管理はできないし、そもそも基準が守られる保証すらない。上述の「手引き(案)」には、それら具体的内容の一部が記載されているが、述べたようにこの「手引き(案)」には法的拘束力がなく、単なるガイドラインに過ぎないものである。なお、これまでも台風などによって仮置き場の除染廃棄物が袋ごと流されるなどの問題が後を絶たなかったが、昨今の大型台風では盛り土の崩壊に至る事例が各地で多発している。こうした流出のリスクが過小に評価されていないか、再検討が必要である。
「政策を再構築すべき」
意見4、環境省は従来の放射性廃棄物の管理に関する規範を放棄しようとしている
これまで述べてきたようなこの省令案の欠陥の根底として、放射性物質を取り扱うことの重大さを環境省が認識していないとの懸念を持たざるを得ない。現在、再生利用が想定されている除去土壌は、セシウムについて8000ベクレル/㌔以下の放射能濃度を有するとされる。原子炉等規制法に基づく基準では、このレベルの放射能濃度を有する廃棄物は低レベル放射性廃棄物としてトレンチ(浅地中)処分される。処分の方法も事業ごとに、すべての過程が審査の対象となる。原子力規制庁の資料によれば、岩盤や地盤など天然バリアによる遮蔽機能・移行抑制機能が期待される場所でトレンチ処分された廃棄物は、50年程度の管理期間を必要とする。しかし今般の省令で進められる除去土壌の再生利用においては、「手引き(案)」によれば「公共事業等における盛土材等の構造基盤の部材」として使用することが想定され、施行規則には「除去土壌が飛散し、及び流出しないようにすること」としか記載がない。「手引き(案)」にも、管理期間の記載はない。
この点は、環境省自身が設置した「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」の下に設けた「除去土壌等の再生利用に係る放射線影響に関する安全性評価検討ワーキンググループ」において、5000ベクレル/㌔の濃度をもつ除去土壌を再生利用すると、従来のクリアランスレベルである100ベクレル/㌔に減衰するまでに170年かかるとの試算が提出され、一方で盛り土など土木構造物の耐用年数が70年とのデータも示されている。環境省はこうした問題点を把握しながら、実効的な管理体制を担保しない省令を設け、管理期間の記載すらない「手引き(案)」でそれを現実のものとしようとしている。
意見5、「再生利用」と称する「処分」は福島県民ならびに国民への背信行為である
環境省が公示した資料の「1、背景・趣旨」には、「県外最終処分に向けた再生利用の取組を安全かつ適正に進めるため、除去土壌の処分の基準としての必要な規定を設ける」とある。これは2012年に閣議決定された「福島復興再生基本方針」に明記された「中間貯蔵開始後30年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずる」とした国の基本的な施策に基づくものと思われる。このことは結果として、福島県外で最終処分する除去土壌の量を減らすために、福島県内で「処分」の一環として「再生利用」を実施するという本末転倒の帰結を生もうとしている。それどころか、環境省の「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」(2019年3月19日)では、減容処理をさらに推進することによって、県内で生じた除去土壌のうち最大で99・8%が、再生利用が可能な「再生資材」となるという試算が示されている。
除染の意義と効果については多様な評価がありうるとはいえ、除染は住民の被ばくを低減するという目的のために実施されたはずであるにもかかわらず、除染によって生じた除去土壌を「処分」の一環として「再生利用」することは、巨額の費用を投じた除染事業の目的そのものを失わせるものである。福島県内において再生利用を実施することは、汚染を被った地域の人々に、さらなる被ばくのリスクを与えることになり、本来の除染の目的に明らかに反している。これは、環境省設置法にうたわれた「地球環境保全、公害の防止、自然環境の保護及び整備その他の環境の保全」という任務に対する背信行為であり、環境省の存在意義すら ゆるがすものである。
なお、環境省は別途、福島県外の除去土壌についても「除去土壌の処分に関する検討チーム会合」を2017年9月以来、5回にわたって開催しているが、ここでも「除去土壌の埋立処分に関する環境省令」が検討されるとともに、法的拘束力のない「ガイドライン」が作成されようとしている。曖昧かつ無責任な「ガイドライン」なるものによって除去土壌の埋立処分を行う仕組みは、今般の改正と全く同じ構図である。このような進め方は許されない。
意見6、政府は事故由来放射性廃棄物・除去土壌の体系的な最終処分のあり方を再構築すべき
このまま除去土壌の再生利用や埋立処分を進めれば、福島原発事故由来の放射性物質は、本来あるべき集中管理とはほど遠く、無秩序に拡散することになりかねない。
まずは現状と問題点を国民に周知し、透明性を確保したうえで、国の責任のもとに国民的議論を行わなければならない。政府は現在の方針に妥当性や現実性があるのかといった点を含めて一度立ち止まり、除去土壌の処理・処分について、ひいては事故由来放射性廃棄物の管理のあり方について、さまざまな立場の専門 家や全国各地の市民の参加による熟議を重ねる必要がある。政府はそれを踏まえて最終処分に関する政策を再構築すべきである。
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破綻している計画
こうしたことから、この省令の施行は認められない、とのパブリックコメントを出したわけ。
このほか、本誌には「実証事業に関する基本方針では、8000ベクレル以下に限っていたが、今回の省令案では放射能濃度限度に関する記載がない」といった意見も寄せられている。
一方で、環境省では、パブリックコメントの意見を踏まえ、4月1日の省令施行を目指したい意向を示している。
南相馬市小高区(東部仮置き場)での実証事業は仮置き場内でのことだったため計画通りに進められ、飯舘村長泥地区では「交換条件」のような形で同意にこぎ着けたが、二本松市原セ地区、南相馬市小高区羽倉地区のように、生活圏で事業化するとなると、やはり住民の反発は免れない。
そもそも、除染土再利用は管理しなければならない除染土の容量を減らし、それによって県外最終処分をより現実的にするのが狙いとされるが、最終処分場が決まる見込みが薄い以上、すでに計画は破綻していると言える。そんな中での除染土再利用は容認できない、というのが本誌の見解だ。
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