
A様のリハビリ日記
「私、最近リハビリやってもらってないんだけど。」
作業療法士としてA様の担当をさせていただいておりますが、週3回毎度この言葉をいただきます。
介入の為に伺った時だけではなく、他の方の介入の為にデイルームにいるとA様から声がかかります。それは私だけではなく、他のスタッフに対しても同様です。
私はその度に「昨日もリハビリしましたよ。」「明日伺いますね。」等と対応していました。
その日もデイルームに行くとA様から声をかけられました。私は、(いつものだな)と思いましたが、その日のA様の様子はいつもと異なり、「私、最近リハビリしてもらってないんだけど、飛ばされてるのかな。何か悪いことしたかな。お風呂にも入れてもらってないんだけど、、、。」と涙をこぼしながら思いを訴えてきました。
その姿をみて、ようやく私は認知症の人が抱える不安について認識しました。自分がやってないことに対してやっていると伝えられること、不安で不安で涙が出てしまったのだと。
それからはA様の不安が少しでも軽くなるよう、リハビリで実施した内容をご本人の写真付きで日記として残し、元々好きだった歌謡曲の歌詞カードを作成し余暇時間に歌唱できるよう現場にも共有しました。
A様に手渡したところ「これ私にくれるの?えー!嬉しいなぁ。」と笑顔で受け取ってくださいました。その日以降、デイルームでは日記を眺めたり歌詞カードを見ながら歌唱されたりするA様の姿を多く見かけるようになりました。
「良い歌詞カードですね。」と声をかけると「これ私のやつなの。息子が持ってきてくれたのかな。」と嬉しそうな様子でした。
作業療法士は、入所者と1対1で関わる機会を持つことができます。ご利用者1人1人に耳を傾け、対応することができる機会を大切にしていこうと改めて感じることができ、私にとっても良い経験となりました。
老人保健施設 清華苑養力センター
濱岡遥香