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刃物研ぎから始める錫師のしごと ~ 基礎

多くの手仕事は、それ専用の道具を用いることが多いと思います。私たち錫師(すずし)の仕事も同じで、数々の道具を用いて日々製作に励んでいます。

代表的なものに「轆轤(ろくろ)」があります。

器物を回転させて、刃物を使って削ること、砥石などの研磨用品を使って磨くことが出来ます。陶磁器で用いるろくろとは違って回転軸が水平方向で、かつ木工とは違って一か所を器物をほぼ固定しています。

このろくろは非常にシンプルな構造です。ただただ、器物を固定した軸を回転させるだけ。現在うちの工房ではモーターを使って回転させています。

ろくろについてはまた機会にご紹介するとして

今回は、切削(せっさく:けずりだし)に大切な道具「鉋(かんな)」をご紹介します。

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かんなのかたち

いま私が日々使っているものがおよそ30本ほどです。昨年は、独立する職人に40本ほど譲り渡しました。今は使っていませんが、将来的につかうことになるだろうストックが80~100本ほど。ちびて摩耗してい、使っていないけれど鋼材料になりそうと残してあるものが50本ほどあります。どうしてそんなに数をつかうのかというと、かんなの刃先のかたちがそれぞれ違うから。

単純な形状にみえるぐいのみ一つとっても、少なくとも3本(3種)のかんなを要します。徳利になるともう少し多く、5,6本を使い分けて成形しています。

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清課堂の代表的な徳利
錫 源兵衛徳利」(https://store.seikado.jp/?pid=97370701)
を例に例えると、
首の部分の外側のカーブにしたがって削るためのかんな(1)、同じく胴の外側に(2)、胴の内側に(3)、肩の内側に(4)、細い首の内側のための(5)を最低限必要とします。底部の内外は平らなため底部の面積によっては専用のかんなを使わず(6)(7)の部分は、(2)のためのかんなを使って削ることも出来ます。

背の高いもの(深いもの)、口の細いものになると、刃先の形状だけではなく、加工部分に刃先を到達させるための長い(細い)柄が必要にもなります。


かんなづくり

呼称は同じですが、大工道具のかんなとは似ても似つかない形をしていて、市販されているものではありません。刃は刃物鍛冶に製作をお願いしています。おおよその希望する姿かたち、刃先の大きさを指示し製作してもらいますが、実際に刃をつくることと柄の曲げ具合を調整することは錫師のしごとになります。これから作ろうとする器物の形と大きさにあわせて、自分たちの手で作ります。

次回は、かんなの刃づくりについてご紹介します。

手仕事の次世代を担う若者たち、工芸の世界に興味をもつ方々にものづくり現場の空気感をお伝えするとともに、先人たちから受け継がれてきた知恵と工夫を書き残してゆきます。ぜひご支援ください。