イランの対イラク政策大転換―ソレイマニの死後、イランが民兵勢力を解体・再編し始めた(MEE)
和訳記事です。突貫工事なので、一部日本語がわかりづらいのはご容赦を(内容チェックは入れました)。
原文:Soleimani's shadow: How the general's death upended Iranian strategy in Iraq (Suadad al-Salhy)
序
イラクのシーア派指導者たちは、ガセム・ソレイマニの後任者に失望を超え、衝撃を受けていた。
ソレイマニは、2020年1月3日に米国の無人機攻撃で殺害されたイランの最高司令官である。彼は各指導者、司令官、そして彼らの部下までとも個人的に親密だった。何十年にもわたって築かれた彼らの絆は有名だった。
海外での作戦を担当するイラン精鋭部隊、ゴドス部隊の新司令官に就任したエスマイール・カーニ准将は、こうした資質がなく、それを再現する意思すらなかった。
実際、米国との衝突の可能性があると思われた激動の年であったにもかかわらず、カーニが会ったイラクのシーア派指導者はほんの一握りである。著名なシーア派政党の党首によれば、彼の態度は「メッセージと指示を伝えることにしか関心のない役人」に似ているという。
アフガニスタン畑出身のカーニは、新しいパートナーとの関係を作る努力をしていない。彼のイラクへの出張は迅速でビジネスライクなものだ。彼はイラクの指導者たちを知ることに時間を割いていない。
「ソレイマニには見過ごせないカリスマ性があった。彼はアラビア語を話し、派閥や宗派に関係なく、大半のイラク政治家、民兵勢力の司令官と親密な関係を築いていた」と、著名なシーア派政治家は語った。
「おかげでソレイマニは皆と親しくなり、地位を築き、指導者たちに影響を与え、それを利用して指導者たちを自分の望む方向に導くことができた」。
ソレイマニは、彼を知る人々によれば、敵味方を問わず、それぞれの当事者にどのように対処するかを理解していたという。
「彼は敵対者との間に和解案を見つけることもできた。敵対者とwin-win関係を築くことに優れていた」と同政治家は語った。
一方、カーニは、イラクの各宗派に影響力を持つ、有力なシーア派政治指導者アマル・アル・ハキムのことすら、知らない。
「信じられますか!」と政治家は言った。「彼は弟のモフセンしか知らない」
※エスマイール・カーニ。前任者ガセム・ソレイマニの葬儀にて(AFP通信)
ソレイマニの信頼・親近感とカーニの無愛想さの対比は、イラクの上層部では伝説となりつつある。
ソレイマニがいつも突然無断で入国するのに対し、カーニは数週間前にビザを申請する。
新しいビジョン―ゼロサムから共存へ
ソレイマニとカーニの違いは重要だ。イランは、ソレイマニと共に殺された、イラク民兵勢力の大部分の名付け親アブ・マフディ・アル・ムハンディス将軍が残した空白を埋めることができなかった。
ソレイマニが不在の中、イランが支援するイラクの民兵組織「アサイブ・アー・アル・ハーク」などは、カーニの指示を無視して制御不能に陥っている。
一方、制裁を受けたテヘランは、原油価格の下落とコロナ・ウイルスの流行により、イラクの財政危機に神経質になっている。
これらの厄介な動きが相まって、イランはこの地域での外交政策を「見直し」、特にイラクでの取り組みを変えるための計画を「加速」させることを余儀なくされていると、イラクの政治家、指導者、治安当局者、民兵勢力の司令官らが弊紙に語った。
「イランは現在、ソレイマニの対イラク政策の全面的見直しに取り組んでいる。以前は、誰も負の側面があるとは言い出せなかったが、彼が殺された後、誰もが否定し始めた」と、イラン諜報機関に近いイラクの政治家の一人は語った。
「彼らは、イラクを大きく搾取し、古い同盟勢力に頼ったことでイラクでの資源を枯渇させ、イラク民衆の支持を失ってしまったと見ている。今の目標は、新しいアプローチを試み、損失を減らすためにイラク国内の状況を再編成することだ」
イラクの政治、民兵、治安の各分野の情報筋によると、イラクを担当するイラン当局は、実際に数ヶ月前に政策を変更し始めたという。彼らは、その変化がイラクの政治と安全保障に広く反映されることを期待している。すでに、政策の変化は、特に民兵勢力の間で、現場で感じられている。
ムスタファ・アル・カディミ首相の上級顧問は、「アメリカとイランの紛争がイラク国内でどのように管理されるべきか、最近の国際的・地域的な情勢に合わせてビジョンを修正しようとしている」と語った。
イランは3つの要因を重視している。ジョー・バイデン米次期政権、イラクのアル・シスターニ大アヤトラに忠実な民兵勢力のハシュド・アッ・シャアビ準軍事組織(PMU)離脱、そして(2021年に)予定されたイラク議会選挙である。
「もはや、この闘争の勝者か敗者かという(ゼロサムな)考え方ではありません。可能な限りの損失を最小限に抑えて、いかにしてこれらの紛争を乗り切るかという考え方だ」と同顧問は語った。
「イランはイラクの完全な損失を受け入れることはできないし、主要国益を損なうリスクを冒すこともできない。したがって、いくつかの譲歩をして、数歩後退することが、現在の段階でのイランの典型的な反応になっている」
イラン諜報機関の台頭―ゴドス部隊の撤退
1980年代、イランはサダム・フセインの支配に抵抗するイラク反体制派の温床であった。イランの諜報機関は活発な役割を果たし、イラク内外の武装・非武装のイラク反対勢力と協力していた。
しかし、2005年以降、イランの諜報機関のイラクにおける影響力は大きく低下した。「イランと米英軍との間で直接的な対立が勃発したときだ」と、イラクで最古・最大の民兵組織・バドル組織の元戦闘員は語った。
その代わりに、イスラム革命防衛隊で最も恐れられていたゴドス部隊は、国境外でのイランの作戦遂行を担当する機関となり、イラク案件を管理するイランの諜報機関のパートナーとなった。
革命防衛隊は米英軍との戦いの指揮に積極的に参加し、国内でも力をつけていた。
2014年、イスラム国(IS)の台頭により、ゴドス部隊は次の足がかりを得た。
ソレイマニ氏の下、同部隊はイラクの民兵を指揮し、ISによるバグダッドへの進撃を阻止し、イラク北部と西部の町や都市からISを撤退させ、広大な領土を掌握するという極めて重要な役割を果たした。
※ハシュド・アッ・シャアビの兵士たち。2016年、タル・アファール空港に向かう途中で、ピックアップトラックから勝利のVサイン(AFP通信)
ゴドス部隊はイランの対イラク政策を完全にコントロールしている、とシーア派の政治家や政府関係者は述べている。この国におけるテヘランの影響力はかつてないほどに高まっていた。
しかし、この勝利の瞬間を支えていたのは、ISに屈することを拒む緊張感であり、その後、数々の民兵による違法行為を招き、ISとの戦いから回復したイラクを不安定にしていった。
民兵寄合所帯:ハシュド・アッ・シャアビ(PMU)は、イスラム国に対抗して動員するよう、イラク人に呼びかけたシスターニ師(訳者注:イラク・シーア派界における事実上の最高権威)のファトワに呼応して結成された。大半がISとの戦いの間、ソレイマニの指導を受けていた。
2017年にISが敗北すると、イラク政府の命令に強制的に服従することを無視したハシュド・アッ・シャアビに対して、イラン政府はほぼ完全な支配を課すことができた。
イラン支配下では、ハシュドのイラン支援民兵が民間人に複数の人権侵害を行い、イラクの政府、国民、そしてイラクに駐在する西側の外交官に脅威を与え始めた。
これに対し、ナジャフのシスターニ率いる宗教勢力は、ハシュドを再編し、イランの影響力を制限することを要求した。
「イラン側はちょうど昨年、ハシュド・アッ・シャアビの再編に合意した。一部の民兵を犠牲にし、他の民兵に合併させる案を検討していた。しかし、2019年10月にデモが勃発し、その後ソレイマニ氏が殺害されたため、プロジェクトは中止された」とイランに近い政治指導者は語った。
「ソレイマニ氏の殺害はプロジェクトを妨げるものではなかったが、実施をしばらく先延ばしにした」
ソレイマニの死、カーニの失敗、そして様々な差し迫った問題が、イラク案件を諜報機関に引き渡すというイラン政府内での動きを加速させたのである。これはバグダッド空港での歴史的な無人機攻撃の前に既に起きていた。
「イラクとその地域の内部でこれ以上の影響力を失うリスクを冒すことはもはや不可能だ」と政治指導者は述べた。
ゴドス部隊はすでに撤退し始めている。政治指導者によると、イラク国内での資産を整理し、イラク国内での最前線の立場から身を引いているという。
「イランから見れば、今、中心舞台に立つべきは政治であり、武器ではない」
民兵勢力の整理
多くのイラク政府関係者からすれば、イラクに関わるイランとその協力者からのメッセージと行動の混迷は、革命防衛隊とイランの諜報機関との間の対立を反映している。
イラクの指導者の中には、諜報機関が民兵勢力に自制を促しているのに対し、ゴドス部隊は密かに米国の資産を攻撃するように彼らを奨励していると考える者もいる。
真相は不明だが、弊紙が話を聞いたイラクの指導者は全員、テヘランのイラクに対するビジョンが根本的に変わったことに同意している。
政治家やイランを支持する民兵勢力の司令官によれば、そのビジョンは3つの軸に基づいているという。
①一部民兵の解体・解散、つまり「出過ぎた杭の除去」。②イラク政府の支援・強化。③イラク国内の協力者のための新しい資金源の模索、法的に正当な政治体制での保護。
「イラン人は強力な統一勢力の存在を嫌がり、ハシュド・アッ・シャアビ内外の民兵間の違いを煽ってきた。結果、イランを含む全関係者人が現在の混沌の状態を招き、苦境に陥った」とカディミの別の顧問は語った。
「提案されている代替案は、イラク政府が一定の民兵支配力を享受しつつも、イランの影響力を保持する、二頭体制の民兵である。親イラン派のハシュド・アッ・シャアビが一方の頭となる。したがって、親イラン派のハシュド・アッ・シャアビ再編成が、この時点で非常に重要になった」
その第一歩はムハンディスの後任を探す事だ。彼はカタブ・ヒズボラの共同創設者であり、 彼の民兵への強い影響力、イランとの親密さは他に類を見ない。
「ホラサニ旅団のような小さな民兵は消滅するだろう。ある民兵はギャング化したり、より大きな勢力と合併するだろう。」
二頭のドラゴン
ハシュド・アッ・シャアビの多くの派閥は、国から支給された給与、特権、装備を共有している。大多数は、シスターニのファトワの要請で2014年に結成された。
しかし、彼らの忠誠心はすべて同じ場所にあるわけではない。ナジャフ(イラク宗教界)に従う者もいれば、シーア派聖職者ムクタダ・アル・サドルに従う者もいる。大多数はイランの最高指導者であるアリ・ハメネイに注目している。
2014年にISが攻撃を受けた時の首相ヌーリ・アル=マリキは、同年に人民動員局(PMA)を創設し、政府の傘の下で各民兵を統合しようとした。しかし、イラク政府がPMAを完全に掌握することはなかった。
それに対抗するため、2016年11月に準軍事組織を正規化する法律が可決された。ハシュド・アッ・シャアビは突然、イラクの他の治安部隊と同じ規則に従わざるを得なくなった。
民兵は過去2年間で増加しており、PMAは現在、一定数の戦闘員の管理のみを許可されているため、何万人もの戦闘員が政府の給与や支援なしに放置されていた。
2016年の法律は準軍事組織を屈服させるどころか、むしろ混乱を増大させただけである。
ある治安当局者によると、現在PMAから脱退した指揮官のほとんどは、「違法な活動を隠蔽し、PMAに登録されていない戦闘員を保護するため」に、ID、車両、武器、事務所など、ハシュド・アッ・シャアビが享受していた特典を利用し続けていた。
その中には、PMAの資源と戦闘員を「個人的・地域的な課題を追求し、民間人、国家機関、外交使節団に対する暴力行為に関与するため」に利用した者もいたと、その関係者は述べている。
民兵たちは、麻薬の密売や、避難民の財産を押収することで財源を得ていた。彼らは企業やビジネスマンを恐喝し、身代金を要求して無防備なイラク人や外国人を誘拐した。
2019年10月に抗議デモが勃発すると、一部の者がデモ隊を銃撃し、活動家やジャーナリストを殺害、誘拐するようになった。西側の外交公館への攻撃も日常化した。
イランは辟易した、とイラクの指導者たちは言う。テヘランの新しい計画では、大きな民兵はPMAの下に維持し、「出た杭を打って整理することを条件に」、小さな民兵は完全に解散させることが提案されていると、この問題に詳しい著名なシーア派党首は言う。
PMAに登録されていない派閥については、「抵抗勢力」として有名な民兵から2~3派が維持されることになるだろう。
残りは経済的・政治的プロジェクトに採用される。
カタイブ・ヒズボラとヘレカ・ヒズボラ・アル・ヌジャバは「最も運が良く、『抵抗勢力』の核として生き残る」と、この議論に参加している親イラン派の著名なシーア派民兵司令官は語った。
その結果、2つの勢力が誕生することになる。1つ目は正規化されたハシュド・アッ・シャアビ、2つ目は「抵抗勢力」である。前出の顧問が言う通り、「二頭体制」である。
「この提案は地域的にも国際的にも広く受け入れられる可能性がある」
「すべては、イランとアメリカの交渉が何を生み出すかにかかっているだろう。イランが核合意に戻ることに成功すれば、イランは主要民兵を保持しつつ、イラク政府による統制を受け入れることになる」
上記以外のすべての戦闘員や民兵は見捨てられ、イラク政府とアメリカ政府のなすがままにされることになる。
「善意のサインだ」と顧問は述べた。
出る杭を打つ―過激派部隊の粛清
イランが今後のワシントンとの交渉を重要視していることを、過大評価しすぎることなはない。
だからこそ、テヘランはイラクの協力者に厳しい指示を出し、イラクにおける米国の利益への攻撃を止めるように指示しているのだ。
しかし、バグダッドのグリーンゾーンにある米軍、基地、米国大使館への攻撃は、11月のハメネイ師の指示以来、止まることはない。
一方、この地域では米軍の増強が続いている。イラクの治安当局者によると、アメリカの諜報機関は「ソレイマニ氏暗殺一周年には、イラクにおけるアメリカの利益を狙った報復攻撃が予想される」と複数回発言しているという。
※ガセム・ソレイマニ氏とアブ・マフディ・アル・ムハンディス氏の写真。暗殺現場、バグダッド空港の破壊された車両の遺構付近にて(ロイター)
12月23日にバグダッドを訪問したカーニ氏は、最近の米国大使館を狙った攻撃は「イランは最近の攻撃とは何の関係もないというメッセージをアメリカ人に伝えるため」に、カディミ首相、バーハム・サレハ大統領と会談したと、会談に詳しいイラクのシーア派政治家が語った。
カーニは、ソレイマニ氏の命日にテヘランが報復する計画はないと強調した。
カーニ氏の滞在時間は24時間を超えなかったが、その後、カディミ氏の顧問の一人を団長とするイラク公式代表団が12月27日にテヘランを訪問した。
カーニの訪問の数日後に公式代表団がイランを訪問した理由についてはあまり情報がないが、イランからのメッセージに対するアメリカの反応をこの代表団が伝えたことは明らかである。
シーア派指導者の多くは、イラク代表団が「制御されていない集団」を追い詰めるために、イランの援助を求めたと示唆している。具体的には、手に負えない民兵を抑制する方法と、カディミ首相とPMAの人事司令官モハメド・アブ・ファデク・アブドゥルアジズ(訳者注:ムハンディスの後継として、親イラン派をとりまとめる人物)との間の調整を強化することについて、イラン政府と合意しようとした。これには、一部の過激な民兵への保護を外すことも含まれるだろう。
しかし、カディミ首相とテヘランは、もっと早くから同様の合意に達していた可能性が高い。
12月23日、イラクの治安部隊は、「アメリカ大使館をミサイルで攻撃した」容疑で、ミサイル技術者であり、強力な民兵組織「アサイブ・アル・アル・ハーク」のリーダーの一人フッサム・アル・アジルジャウィ氏とその他3人を逮捕した。
数日前には、誘拐、恐喝、金融・行政腐敗の罪で告発されているホラサニ旅団司令官、ハメド・アル・ジャザリーとアリ・アル・ヤシリが逮捕された。更にその1週間前には、同じグループの他30人も押収されている。
「ホラサニ旅団を解体し、その指導者を逮捕し、その財産を没収することは、ハシュド・アッ・シャアビを一掃するプロセスが実際に始まったことを意味する」と、イランに近いシーア派政党党首は語った。
同党首によると、これらの戦術は、中小民兵を一掃し、巨大民兵を整理するために使われるという。
「実質的に、ハシュド・アッ・シャアビの再編プロセスだ。2週間以内に、ホラサニに関連するすべての詳細が解決される。彼らは別の民兵で再始動するだろう」と彼は言った。
「このプロセスを実施しているのはPMA保安局長だ。そして、ハシュド・アッ・シャアビから腐敗した要素を一掃し、外道を断ち切るよう、PMAの指導者に勧告を行ったのもこの局長だ」
資金繰りの代案―資金源を断たれた親イラン派
究極的には、イラクもイランも、民兵を解体し、対立の少ない政策を追求する理由は共通している。財政破綻である。
イラクはOPEC第2位の生産国であり、数十年にわたり予算の95%を石油販売に依存してきた。しかし、原油価格の下落とコロナ・ウイルスの大流行により、イラクの収入は空洞化してしまった。4月以降、バグダッドは約400万人の国家公務員と受益者の給与を確保するのに苦労している。
米国の制裁によって孤立したイランは、2年間、イラクに大きく依存してきた。両国間の貿易額は現在約120億ドルで、イラクはイラン製品の最大の消費市場の一つである。
しかし、当局によると、イランに大きな収入をもたらしているのは、通貨、石油、麻薬の密輸を含むイラクでの不法行為であるという。
イラクの指導者たちは弊紙に、ムハンディスはかつてバグダッド政府から提供されたPMAの予算をかすめ取ることで、イランに月1億ドル~1億3,500万ドルを確保していたと語った。彼の死で、それは枯渇してしまった。
ムハンディスはまた、PMU戦闘員への支払い方法である「Qiカード」を使って、名簿上のみ存在する何千人もの戦闘員の給料を搾取し、給料を集めていたとも言われている。
彼がいなくなったことで、テヘランはさらに 1,000 万ドルから 1,500 万ドルの Qi カードの現金を失ったことになる、と指導者たちは述べている。
Qi カード会社の取締役、総合年金機構の前取締役、地元の銀行の支店長数名が金融汚職の容疑で 9 月にバグダッドで逮捕された。その結果、退役した数万人と現役 PMU戦闘員の給料に影響が出ている。
テヘランとバグダッドの両方が財政破綻したため、民兵の給料を今後どうやって確保できるかは不明である。イランはハシュド・アッ・シャアビ創立時、最初の数年間は民兵を金銭的に支援してきたが、今はそのような立場にはない。
「(イランが直面している)最大の課題は、いかにしてこれらの民兵戦闘員を、関係性を壊さずに維持するかだ。イランにはもう彼らをくっつけておくお金がない。民兵は、イランにとって大きな負担になってしまったのだ」と、親イラン派民兵の著名な司令官は語った。
「しかし、イランは彼らを犠牲にすることや、統制力を失うことは避けたい。最近いくつかの民兵で起きてしまったが。アサイブ・アハル・アル・ハークがイランに反乱した最大の理由の一つは、(指導者カイス・)カザリが、もはやイランを必要としなくなったことだ。むしろイランがいない方が、金回りが良くなり、はるかに強くなった。」
そしてイランは(資金繰りという問題に対して)、牧畜という答えを導き出した。
シーア派民兵勢力は、サウジとの国境沿いのサマワ、ディワニヤ、ナジャフの乾燥した県で、イラク政府から何万エーカーもの未開の土地を買い取るか、借りるように命じられている。
これは「サウジとの安全保障上の障壁を形成し、イラク政府が将来的にサウジと契約を結ぶことを防ぐためだ」と司令官は述べた。
土地を選ぶに際して、明確な全体図や具体的な法則はないが、必要なのは地下水が豊富な低地で塩分の多い土地だ。
※イラクのディカール県チベイシュ南部の沼地(アフワール)に座る牛の姿(AFP通信)
政治ゲーム―AAHとカタイブ・ヒズボラの対立
更に前へ―トランプ政権とハメネイ師健康問題
※ここらへんで時間がとれなくなったので、翻訳はここらへんまでで。続きが気になる方はコメント等で教えてください。需要が大きければ検討します。