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蜘蛛の独占欲【面白いショートショート見つけた】

 いつもは小説の書き方や構造を中心に言うのですが、今日は内容についてです。下の記事、まずはお読みください。怖いです。

 これを読んで最初に思い出した歌があります。トップ画像に既に床に転がった剃刀が見えてある事を想像させます。そう、その通りなんです。

 この歌の歌詞はこちら。(英語)

 この歌の日本語訳がありませんのでかいつまんで和訳しておきます。(全部ではないです。)

私たちは家にいて、今日は私たちの日ということにしましょう
かつて私だけのものだったブラウン・アイド・ボーイと一緒に
あなたは安楽椅子に座っていて私は乱れた髪をとかす
そしてロウソクの炎を見るの

あなたの好きな傷付いたレコードをかけて
夕暮れにはカーテンを引く
あなた、踊りたくはないようね
それならもう少し髪をとかすわ
ああ、あなた、ドアのロックを忘れたの?

今は過ぎ去ってしまった幸せな時を夢見て
そしてかつて私だけのものだったブラウン・アイド・ボーイのことも

(中略)

もし母親が電話してきたら
もう長い事会ってないって言うわ
あなたが永遠に私に忠実だって思えるわ
剃刀が深紅に染まっているわね

(後略)

 人は本当に自然に何かを独占したがります。女郎蜘蛛のように愛する人を自分だけのものにしたがります。多くのドラマは人間のそうした性質から産まれているのは事実です。だから小説を書く時にその事をあまり意識しなくても織り込んで書きます。私もそれをやります。

 これは最近書いた「60 in Blue」ですが、疎遠になっていても「あの人が誰かに取られてしまうのではないか」という葛藤の場面が出てきます。相手と自分「だけ」で構成される特別な関係がごく自然に心の中にできているからです。

 人間は遺伝的にそうなのだというのが主流なので物語を書くにもそうしてしまいますが、でも、ここで「待てよ?」と考えます。

 女郎蜘蛛さんは、相手は1人じゃないぞ。「恋人たち」と言っています。恋人たちが時間的にシリーズで並んでいるかどうかはわかりませんが独占欲は1対1とは限らないわけですね。あれも欲しい、これも欲しいって可能性もあります。

 そうすると、殺してしまう事は確かに倫理的にいけない事ですから異常なようではありますが、強い独占欲を持っている事自体はもしかしたら異常ではなくて正常なのではないか?、とも考えられます。

 とても考えさせられる良い作品でした。ありがとうございます。

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