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忙しいときほど「丁寧な暮らし」で心を取り戻す

 多忙を極める毎日に、必要な業務に追われ、つい表情がかたくなります。イライラもしますし、ミスもします。周りもそう、私もそう。閉塞感に悩みます。

 家に帰ると、良い香りがしました。みますと、リビングに花が生けてあります。カーネーションを中心に、鮮やかな彩りが心を照らします。

 どうしたの、と聞くと、

 「丁寧な暮らし、やってみようと思って。」

と言って妻が微笑みました。仕事帰りに保育園から一緒に帰ってきた息子も何やらテンションが上がって飛び跳ねています。3ヶ月を迎えた娘は「あっきゃあ!」と嬉しそうに笑いました。

 私は何がそんなに忙しかったのか、もう忘れてしまいました。ただでさえ冬場は熾烈な呼吸器内科、今年は某感染症の所為で大変なことになっています。病院全体、医療全体、いいえ、様々な形で膨大な数の人の生活に影が落とされ、「こんなはずでは」の毎日を送っていることでしょう。

 冬来りなば、春遠からじ。

 梅の花が咲き始めましたね。桜の蕾も膨らみ始めています。植物も昆虫も、春に向けた準備を進めているようです。

 忙しいとは「心を亡くす」と書きます。心を亡くした世界は色褪せて無味乾燥です。自分が人間なのか機械なのか分からなくなるような生活の中で、心を保つことは難しい。そして、忘れた心を自分ひとりで思い出すことはできません。でも誰かをきっかけに、何かをきっかけに、ふと気づくことができれば、きっと。

 今回は「花」が、私を引き戻してくれました。生活必需品ではないような何かが、一見すると無駄に思われそうな何かが、ほんとうはとても大切なものなのかもしれません。

 走り続けなければならないほど忙しいときこそ、勇気をもって立ち止まり、丁寧な暮らしに立ちかえる。この記事が「立ち止まる」きっかけのひとつになればと願い、今この感情を記します。


 拙文に最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。願わくは貴方の「忙しさ」が晴れて、心の光に包まれますように。


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渡邊惺仁
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