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変わり者の診察風景
師走に訪れたその貴婦人は、ひどく弱った雰囲気を漂わせておりました。
ここに通院している友人の薦めで私の診察室に辿り着いたそうで、何から話したらいいか…とにかく具合が悪くて…と彼女は言葉を濁します。
「そうですか、とにかく具合が悪いんですね。それはおつらいことでしょう。」
といって、診察を始めます。問診から始めて細かく症状を聴いていくのが普通ですが、彼女の緊張感から察するに、それではうまくいきそうにないと感じたため、診察から始めることにしました。事前情報は何もありませんが、大丈夫です。
まず脈をとり、違和感に気付きます。
最近、手術を受けましたか?と問うと、彼女は驚いた顔で頷きました。傷の治りが悪いでしょう、と訊ねますと、まさにその通りだと肯定されました。独特な渋脈でしたから、異常な侵襲があっただろうと予測がついたのです。また腎虚と心浮細もあって、脾胃は沈んでいましたから、ひどく疲れやすく睡眠も不安定で食欲もないはずです。そのように問うと、やはり彼女は驚きながら肯定されました。
これを手掛かりに問診と診察を進めて、診断と処方に至ります。彼女は少し安心した表情で診察室を後にしました。
二週間後に再訪した彼女は、かなり良くなってきましたと言いながら晴れない表情をしていました。何か気になることが…?と伺うと、逡巡した後に決意めいた様子で切り出しました。
こんなことを伺うのはオカシイと重々承知していますが、と前置きしてから、今年に入ってから悪い事が次々と起きていて、家族にも不運が続いているということ、お祓いにいったほうがいいのか、何かに憑かれていやしないか、など。高名な占い師のところに相談に行こうとした時期もあったそうですが、行こうとすると邪魔が入って断念していたとのことでした。
世間一般では所謂「困った患者さん」です。
一介の医者に相談したところで運気とか霊障とか占いとか、そんな話が通じるわけもありません。第一に医者は科学者ですから、非科学的なものを忌み嫌う傾向にあります。
普通はそうです。
私は「あぁそういう感じか」と思い、ジッと集中して彼女の背景を視ましたが、厭なものは視えませんでした。
「霊障の類ではなさそうですよ。その点はご安心ください。それと…これは診療とは無関係な独り言と思って聞き流していただきたいことですが、もしご希望があれば改めて詳しく占うこともできます。」
と応えました。完全に変な医者です。こんなことを常人に語ったら逃げ出されるか訴えられるか分かったもんじゃありません。ところがその方もちょっと変わった素敵な人でした。
診察とは別な日に改めて占い、大変満足されていらっしゃいました。専門はタロットですが、必要でしたから四柱推命と姓名判断も取り入れて総合的に回答させていただきました。
スタンド使いが引かれ合うように、変わり者も引かれ合います。類は友を呼ぶともいいますね。
なんかもうトータルケアとでも称して西洋医学・東洋医学・霊視・占いの館でも開きましょうか。
…そんな師走の日。
拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは貴方の2022年が穏やかに幕を引き、素晴らしい年明けを迎えますように。
#2022年末
#今年もいろいろありました
#来年もよろしくお願い申し上げます
#2022年のわたしと仕事 #融合医療
#多様性を考える #医者にも色々います
#王道とは離れた道ですが #私は私のここがすき
#医師 #西洋医学 #東洋医学 #スピリチュアル #霊視 #占い #タロット #四柱推命
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