タイピングが速くなる方法 〜悪者は悪なのか〜
医師の仕事は電子カルテの都合上、かなり多くの文字入力を行う必要があります。書類も殆ど電子化されており、論文を書くのも基本的にはパソコンですから、タイピングが速く正確であることは、純粋に仕事の能率を向上させます。
幾らかの調子の波はありますが、私は概ね日常会話程度の速度でタイピングを行います。カンファレンスの記録をつける時など便利ですし、外来では患者さんと目を合わせてお話を伺いながら、同時に大体の内容を電子カルテに記録していくようなことをしています。カチャカチャというタイピングの音を不快に感ぜられる方もいますから、その点には注意を払うようにしていますが、今まで特に問題になったことはありません。
先日ある方に外来で「ピアノを弾いているようだ」と褒めていただきました。ある日は幻想即興曲のようだとか、今日はトルコ行進曲だとか(多分この日は煩かったのでしょう)。すみません。
…ピアノじゃないんです。
純粋にオンラインゲームのおかげです。
とっくの昔に引退しましたが、ラグナロクオンライン(RO)というMMORPGにハマっていた時期がありました。黒歴史ですね。オンラインゲームというのは恐ろしくて、そこに人がいて、社会があります。ハマっていくと現実とゲームのバランスがおかしくなっていくんですね。ゲームの中にもランダム要素はあります(アイテムのドロップ率や攻撃の命中率、威力など)が、基本的にはRPGというジャンルは時間をかけて努力しただけ成果が得られるという危険な蜜があります。現実世界がうまくいかない時に逃避しやすくなるのも無理はありません。それが心の支えとなって命を繋いでいるような方もいますから、一概に悪者とはいえませんが、私にとっては有毒でした。
学校でイジメられていても、居場所がなくても、電脳世界ではヒーローになれます。特に軽度ながらASDの私には「表情や空気を読み取る必要性が薄く文字から判断すればよい環境」は、非常に親和性が高かったんだと思います。
当時は音声チャットのようなものは一般的ではなくて、意思疎通は専らタイピングでの文字入力によるチャットシステムです。雑談もそうですが戦闘中の意思疎通が遅れると大変です。いや、何が大変なのか今となってはよく分かりませんが、とにかく大変でした。
それで自然にタイピングが速くなりました。
目的がチャットですから、日常会話くらいの速さがあれば丁度良かったのです。だからそれくらい速くなるまで練習しました。結局練習したんかい!と言われたらそれまでですが、必要に駆られると時間効率が飛躍的に伸びます。なんだかんだ「ホームポジション」と「ブラインドタッチ」と「タイプミスを減らす」の3つに集約されます。基本に忠実にすることが、いちばんの近道です。戦闘中はより迅速なコミュニケーションが求められますが、これは簡単なサインを決めておけばよい。まぁそもそも職種ごとの立ち回りが分かってくれば、それぞれが自分の仕事をするだけなので言葉でのコミュニケーションは殆ど不要になりますが。
一番ひどいときには、1ヶ月のうち数回しか家の外に出なかったこともあります。体調の問題もありましたが、そもそも外に出る必要がないと考えてしまうのです。これは恐ろしいことです。
ある日、鏡をみると、知らない子がいました。なんだかやつれて姿勢が悪く、目元の窪んだその姿をみて私は急に怖くなって、そのまま私はソフトウェアをアンインストールしました。以来、オンラインゲームには手を出していません。レアアイテムの譲渡も別れの挨拶もしなかったので、当時の関係者には本当に申し訳なく思っています。この場を借りて謝罪いたします。
あの日、アンインストールしなかったら、今の私は存在しなかったかもしれません。
ゲームデータは何も残りませんでしたが、現実に獲得したスキル「高速タイピング」は今も役に立っています。悪いことばかりではないですね。
ありがとうRO!
ゲーム脳バッチコイ!(古い)
オンラインゲームには依存性があります。
現実逃避はほどほどに。(自戒)
駄文に最後までお付き合い頂き誠に有難うございました。願わくは貴方の「現実」が、一層輝いていきますように。
-----渡邊惺仁さんがログアウトしました-----
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