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月と共に 《詩》

「月と共に」

湾曲する海岸線と空が
ひとつになるあたり

きらきらと輝く
海を指差す少年を見た

夜に長い散歩をして
世界のゆくえを考える老人

少女は香り付きの蝋燭を売っている

そして綺麗な声でキャロルを歌う


枯れて黄ばんでいく丘の草や
冬の雨さえも愛した

遥かな空虚を見つめる彫像のように
時は動かず

風だけが吹いている


語りうる行為の散漫な影が
言葉少なに切り取られ

その頭上では大きな黒い翼が
夜を押して羽ばたく


空に半月の出た道を私は歩く

宿命論的な立場をとる
満ち欠けと恒久不変の法則

完結した
独りよがりと言うべき図柄は

先の望みのない静かな恋を思わせる

全ては変わりゆく 
私はそれを月と共に見つめる

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