落命 《詩》
「落命」
車のヘッドライトに
照らし出され路上で硬直した猫
決断も行動も無く指示された事を
従順に遂行する世界が周る
遠くの海鳴りがはっきりと聞こえる
捕縛し続けて来た物の
瓦礫が横たわる
意志を備えた濃密な霧
血の通った泥の中にうずくまる
全ての感情を奥に隠した邪悪な血
僕自身が宿る肉体が抹殺した幻
其処にある
光景から目を反らず直視しろ
根源的な邪悪は僕自身の中にある
全ての物体が動く事無く
その構図を維持し
その中を血を流しながら
彷徨う意識だけがある
不揃いに並んだ
ビル群が虚空に向かい立ち登る
音と気配の中間にある
深い昏睡 落命
僕の思考が僕の手を離れた時
曲がり角も枝道も無い
真っ直ぐで純粋な道が見え始める
未明の空が徐々に明けてくる