27歳の夏 《詩》
「27歳の夏」
暗い部屋 歪んだ鏡に映る顔
あんまりパッとしたもんじゃ無い
効かないエアコン
上半身は裸 タオルで汗を拭う
生温いビール
グラスに氷をいっぱい入れて
ビールをゆっくりと注いだ
泡は直ぐに消えて行く
素面じゃいられない
悪くは無い 良くも無い
微温いビールよりは少しはマシなだけだ
豊かな奥行きとか色合いとかは
無縁の様なホテルの部屋
神の衣を纏う為に
命を落とさなければならなかったのか
死が前提となり神話が生まれたのか
其の伝説が刻まれた
レコードがターンテーブルを回る
僕は夢を見る手段として
音楽を聴き小説を読む
手の届かない場所にあるものが
直ぐ僕の手元にある
そして
其れをしっかりと掴む事が出来る
そう
僕達にだって手を伸ばせば届くんだ
夢の記憶は
いつまでも心の中に残り続る
夢の不在を抱えて
其れを認識出来ていない人々は
僕等の事を嘲笑う
闘ってみなよ 笑って無いで
世界の何処か端っこの方には
誰も知らない風穴が空いている
いつか僕等は
影も形も無く何処かへ消えて行く
小さなボトルに入ったウィスキー
これが最後だ
そう言って飲み干した 27歳の夏
ホテルの名前は何だったっけ
あの時
一緒に居た女は一晩中泣いていた
夢の記憶と風穴と
安いホテルと大好きだった女