奇形児 《詩》
「奇形児」
僕等は震える手で
銃を握りしめている
不思議な戸惑い あるいは違和感
位相のずれの様なものが
僕の中に残っている
氾濫した情報は朝から晩まで
垂れ流し続けられていた
真実はいったい何なんだ
とても単純な疑問だ
目に見える余計な装飾品を
全て取り去ってしまえば
あるいはそれほど
不思議では無いのかもしれない
正義と悪だとか
正気と狂気だとか
健常と障害だとか
誰の目にも見え
指を差し非難する事の出来る
明白な対立を
欲している世界が此処にある
正気の仮面をつけた狂気が
大手を振って歩く
我々こそが正義であると
旗を高く掲げて
其れは部分的には正論であり
大義の名の元では
正義であるのかもしれない
兵士となり戦場に向かえ
無垢なるものの正義が銃を持たせる
叫ぶだけの 反戦 反核
偽りだらけの現実
奴等から与えられた物語の冒頭には
適合しない人間とは…
適合しない事は
病気であると記されていた
反社会的行為であり脱落である
其れは悪であり奇形であると明確に
妄想化し仮想化した言語に
溢れた現実に
荒れ狂う暴力性が隠されている
僕等は新しい
言葉と物語を探している
僕の自我の中に君は居る
そして君の自我の中に僕は居る
僕等はお互いの自我の生み出す
物語の文脈に同化していった
其処には君の自我の欠損性があり
僕の自我の欠損性がある
其の全てが合致する
僕は君であり君が僕である事を知る
新しい言葉と物語を探している
物語は単純だ 記号の様なものだ
洗練された上質なものでも無い
文学的である必要も無い
幸せになりたい
ただ それだけの願いなんだ
祈る様に言葉を綴り続けた
其れを僕等は夢と呼び
僕等の事を奴等は奇形児と呼んだ
空には黒い雲が立ち込め
罪を重ねる
震える手で銃を握りしめている
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