メッセージ 《詩》
「メッセージ」
水溜りに
ガソリンの虹が浮かんでいる
世界の果てまで届きそうな退屈
冒涜的な無神論者の僕でさえ
クリスマス イブを独りで過ごすのは
寂しいんだ
たまたまバスで隣りに座った娘が
僕と同じ本を読んでいて
それが縁で言葉を交わす
そして あっと言う間に
恋に落ちてしまうとか
吐き気がする程ロマンチックだよね
ふたりは結婚して
めでたし めでたし
映画や小説なら其れで
ハッピーエンドなんだけど
実際には其処からが
スタートなんだよね
うんざりする様な事とか
色々とあるだろう
既婚者の君にはわかると思うけど
君が有名人だとか大物だとか
何冊も本を出版してるだとか
そう言うのじゃ無い限り
周りの人達は
ほとんど口もきいちゃくれないんだ
どんなに正直で良い詩を
君が書いていたとしても
インチキ連中の言動や行動を
観察し続けてるんだ
おぞましい思考の流れが
見えて来るだろう
セックスに対しての
豊富な知識だとか
僕は人として熟成してるとか
其れで女を
口説いてるつもりなんだろうね
勘弁してくれよ
どうしてそんな事になったんだよ?
君はそう僕に訊くけど
君だけじゃ無いよ
周りの皆んなに同じ事を訊かれて
もう うんざりなんだ
だって 同じ事を百万回訊かれたら
百万回同じ答えを
話さなくちゃならない
僕がどれだけ馬鹿で間抜けで
利己主義かって事を
気分がささくれて行く感覚
君にはわからないのかな
彼奴の大切にしている本
「星の王子様」 その表紙に
落書きしてやったのさ
星のところに二重線をひいて
「クソったれ」 って
素敵だろう 「クソったれの王子様」
本の中身は
「時計じかけのオレンジ」と
入れ替えてやったのさ
これで彼奴も少しはまともな
人間になれるだろうね
アレックスの気持ちって
わかるよね
ロックンロールばかり聴いている
君になら
自分のして来た事を間違いだと
言われて謝れとか詰め寄られたんだ
もちろん何ひとつとして
間違いじゃないさ
其の奴等が言う間違いを撤回して
謝罪するくらいなら
今すぐに窓から
飛び降りた方がましさ
名言だね 君と出逢ってから
色んな話しをして来たけど
君の此の言葉にはグッときたよ
大切なメッセージ程
なかなか伝わらないんだ
ねぇ 返事をしてくれよ
君が其処に居るのなら
Photo : Seiji Arita