奥さんは花泥棒 《詩》
「奥さんは花泥棒」
小さなガラスの器に入った
可愛い花が届いた
僕はそれをリビングの出窓に飾った
この場所は奥さんの
お気に入りの場所
ソファーに座り猫を抱いて
窓から外を眺めてた
今度はいつ家に来るのかな…
相変わらず奥さんは
病院と実家を行ったり来たり
難病ゆえ 治療法も無い
副作用の大きな皮下注射はやめて
もっぱらサプリメント漬けの日々
血液データはそれほど悪くはない
一時期40Kg以下に落ちた体重も
少しづつだけど戻ってきてる
身体に合わせてオーダーした
車椅子もイマイチ使い難いと
グダグダ悪口
前に家に戻った時に
奥さんは僕に聞いた
うちが居らんと寂しい?
僕は ただ一言 うん…それだけ
それが気に入らなかったのか
何それ! 愛想のない返事
またグダグダ悪口
僕はそんな奥さんに
それだけ喋れたら大丈夫 元気 元気!
そう言った
奥さんは
うちから口を取ったら
しまいじゃもん
そう言って笑った
あの頃と同じ笑顔で
奥さんが この出窓の花を見たら
何って言うだろう
きっと可愛いね この花
うちが実家に持って帰るけーね
多分 そう言うに違いない
僕は そんな想像をして少し笑った
そう 奥さんは花泥棒
Photo : Seiji Arita
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