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幻想既興曲 《詩》

「幻想既興曲」

目が覚めると雨が降っていた

遠くに見える背後の風景

不条理な現実と
不確実な未来を映し出す

取り残された傷つきやすい自我が

行き場を失いうずくまる

僕等は森の中の
小さな国境を越えられずにいる


末端的で無意味な情報の垂れ流しに
怯えていた僕等の姿は影となる

僕等と世界の間には 

ある種の乖離があり

ある種の歩み寄りもある

全てのものを無差別に
飲み込み咀嚼し排泄する

命のあるもの 無いもの 

形のあるもの 無いもの

名前のあるもの 無いもの


咀嚼され終えた残骸が
蓄積し世界を創り出す

其処に漂い残る悲しみの光

金箔を施された擬似階級社会に
僕等の居場所は何処にも無かった


大丈夫 なんとかなるよ 僕は言う

なればいいけど 彼女は言う

僕等は海辺のカフェで
雨を見ながら待っていた

彼女は軽度の呪いをかける様に
クールな微笑みを浮かべた

もう直ぐだよ もう直ぐ

僕は楽観的な麻薬的快感に酔っていた


雨は止んだ 
光の質ががらりと変わる

僅かに時空が歪む 

其の事に気が付いた人は居ない

其処には神に愛された領域が広がる

傍に来なよ 手を繋ごう


僕等の存在位置を

明確にする為の重要な共同幻想を
意識の中に描く

此の不完全で過渡的で一時的な
旋律の中に全てが生きている

聴こえる 幻想既興曲が聴こえる

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