二人称単数 《詩》
「二人称単数」
過去の記憶と現在の感情が
時間軸を隔て まるで違う人物の
二人称の物語を描く様に流れて行く
其れは常に平行しており等価であり
全てが僕個人に含まれている
欠片だと気が付かない
僕の意志とは無関係な所で
選ばれた事柄が進み
また
僕の意志とは関係無く失われて行く
其処に居る僕は
揺るぎない確信を探し求めている
この場所に君が
一緒にいてくれたならと
僕は
そう思わない訳にはいかなかった
仕方ない もう終わった事だから
自分の孤立した心が
君の幻影を作り出す
生暖かい感覚が
首筋から胸元へと伝う
多分其れは血なのだろう
痛みをともわない出血の感触の中
手にしたはずの
ナイフは其処には無い
深い沈黙の中でしか
聴き取れない音を聴いた
その音は僕自身が発している
音である事に気が付いた
そして二人称の
ふたつの物語は繋がりひとつになる
全てがほんの少しずつ
歪み落ち不明確な輪郭を持つ
正しい呼吸の仕方すら思い出せない
自らが作り出した
世界の中に僕は居る
大丈夫だよ たいした事無いよ
其処にあるのは
ただの哀しみだけだから
痛みは無い
あるのは痛みの記憶だけだから
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