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ALL YOU NEED IS LOVE 《詩》

「ALL YOU NEED IS LOVE」

時の海の中にひっそりと漂う

今は無き物質と其の記憶が

長く白い砂浜を音も無く歩き続ける

彼女はまだ僕の中で歩き続けている


確か随分前にも君を見かけたよ

同じ時間に同じ場所で

そう 話しかけたかった

微かな波の音が聴こえた

太陽は動かず時間は止まる


時々僕は彼女に出逢う 

ふとした瞬間に

何処か遠い世界にある場所で僕等は
強く繋がれている

其の場所はきっと 

お互いがお互いを
許し合う事の出来る場所


私達は同じ列車に乗り遅れた
乗客同士みたいだね

そう言って彼女は優しく微笑んだ

うん 僕はついてる運が良い 
君に逢えたから

そう彼女に答えた

何処からかまた海の匂いがした

微かな海の匂いだ

そんなはずは無い わかってるよ

ふと そんな気がしただけの事だ


街には新しい
ヒットソングが流れている

初夏を思わせる日差しが降り注ぐ


海岸には何度か
溺死体も打ち上げられた

そんなニュースを聞いた事がある

大抵の場合は自殺者だ 

何故 海に
身を沈めたのかは誰にもわからない

新聞の地方版に小さな記事が載る

身元不明の女性 

推定年齢ニ十歳前後と


時の流れと波の流れが彼女を運ぶ

存在の消滅 海は今でも其処にある

防波堤には 

ALL YOU NEED IS LOVE

誰かが赤いスプレーで書いた落書き


僕は砂浜を歩き続けている

初夏の潮騒の他には何も無い

僕は独り振り返り 

ALL YOU NEED IS LOVE
そう囁いた


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