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anarchism - 波の音 - 《小説》
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「anarchism」 - 波の音 -
乗りなよ 誠
美幸さんが僕を迎えに来てくれた
海岸通りを抜けて海まで行くよ
いい 誠
玲子とよく行っていた
ビー玉海岸だよ
そう言ってミラを走らせる
カーコンポの原色の
グラフィックイコライザーが
上下に動き続けている
僕は黙って助手席に座っている
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KENJI & The TRIPSが流れている
…何重にも重ねた人格も要らないし
あっと言う間に苦しむ事も
楽しむ事も出来るはずさ…
小さな声で美幸さんが口ずさむ
その歌声が歌詞が
僕の頭の中を掻き回し続けていた
海岸に到着し僕等は砂浜に
腰を下ろした 誠
私と玲子は同士なんだ
美幸さんは静かに話し出した
私も玲子も薬漬けだよ
精神安定 抗鬱剤…
発達障害 グレーゾーン
希死念慮 障害だよ
私さ無意識で何度も何度も
手首をナイフで切り刻んだり…
死ねやしないのにね
玲子も同じ様なもんだよ
いつも この浜辺に来て泣いてたよ
誠 大丈夫
まだこの先の事聞きたい?
僕は小さく頷いた
星ひとつ無い真っ暗な夜だった
波の音だけが聴こえていた
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