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パティシエの恋人 《詩》

「パティシエの恋人」

痛みと引き換えに僕等は

大切なものを手に入れている

1本の線の様に図表的に
時間は並んでいる 

そして保留無く過ぎ去って行く

過去を悔やんだり

未来に不安を抱えたりしながら

僕だって一緒だ


色彩に彩られた
洋菓子に魅せられた人

全ては善と悪のバランスなの

悪しき物語と善き物語と同じ様に

そう パティシエの恋人は僕に言う


彼女は僕の書いた生産性の低い詩を
何度も読み返して

意味を理解しようとしていた

僕は意味なんて無いよ結論も無い

そう答えた

白と黒しか無い世界なんて 
面白く無いだろう

完璧主義者の彼女は

不思議そうな顔で僕を見ている

理由なんて 
きっと何処にも無いんだと思う

結末もわからずに書いている

そう ただ書けば良い 

ただ感じれば良い

そう言った僕に

適当…いつもそうだよね

其れって何かの哲学なの

そう言って君は笑った

バランスだよ 
とても良いバランスだろう

普通の奴には 

なかなか出来ない事なんだよ

世界平和が軍事均衡の上に
成り立つ様に 

答えは愛か核か だろう

わかるかな…

僕は少し戯けて そう答えた


やっぱり適当な事ばっかり

もう行くわよ 

そう言って恋人は青い
プジョー208のハンドルを握る

彼女の作ったスイーツを持って

公園に来た

外のベンチに座って食べる

魔法瓶にはエスプレッソ

今日は特別 

ふたりでゆっくりと時間が過ごせる


目と目が合って 
僕等は見つめ合った

僕は君の作るスイーツが好きで

君は俺の書いた詩が
好きだと言ってくれた

其処に意味や理由なんて要らない

僕は独りじゃ無い 

そして君も独りじゃ無い


善も悪も生産性もどうだっていい

おいでよ もっと僕の傍に 
一緒に写真を撮ろう

君の青い車の前で

ボンネットに青空が
映り込んでるのが見えるだろう

柔らかな日差しと風の中

LA .LA .LA …

よくわからないメロディを
恋人は口ずさむ

何だよその歌 

適当だろう そう訊いた僕に

バランスだよ 

大切なのは 知らないの 


そう哲学的に微笑み
歌を唄い続けた

柔らかな日差しと風の中

LA .LA .LA …

少し歩こう 

もう直ぐジブリの森が見えて来る

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