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彼女の靴音 《詩》

「彼女の靴音」

聞き慣れない靴音 

ストッキングをはいた優美な足で

静かに謎めいた微笑みを浮かべて
近づいて来る

好んで自らを語らず 

暫しの沈黙と的確な言葉で

リアリズムと非リアリズムの
狭間にある世界を語る


其れは何処までが現実で何処からが
幻想であるのか 

よくわからない物語だった

現実と幻想が近づき離れ 
また近づきリンクして行く

幾つものファクターが
独自のバランスを保つ

複雑ではあるが

其の物語が持つ中毒性のある
世界観に魅せられた

いつしか僕は其の女性に
惹かれ恋をしていた

彼女の意識の中で立ち上げる

奇想天外なプロットが
組み上げられて行く

ひとつの記憶の断片が
別の断片に繋がる

其処には彼女の声がある

やがて姿を見せるであろう 

世界の先触れを持つ

皆が持つ心の空白と病は
彼女の一部であり

僕の一部でもある

失われたものがあるから探し続ける

経験の連鎖と

失望と深い愛情と共感と

想像力さえあれば
僕は何処へでも行ける

彼女のもとへでも

そして僕は彼女の靴音を聞き
彼女の声を聞く


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