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図鑑を切り刻んで楽しんでいた息子。親として「当たり前」を捨てることについて

先日、子どもたちの本を整理していたら、ボロボロになってしまった本が、たくさん出てきました。

現在、上の子は9歳、下の子は5歳。上の息子は、読み聞かせを卒業し、自分で選んで、本を読むようになりました。

本を整理していると、この絵本、読むのをよくせがまれたよなぁ……と、つい思い出に浸ってしまいます。

特に、思い出深いのがボロボロの図鑑です。

長男はある時期、夢中になって図鑑を切り刻んでいた時期がありました。「本は読むもの。切り刻むなんて、ありえない!」と思いこんでいた私は、ギョッとして、何度も止めさせようとしました。でも、あまりに熱心にやりたがります。彼をみると、実に生き生きと切ることに没頭していました。

それをみて、私の「当たり前」は一旦捨てて、彼の好きなようにさせることにしました。

今振り返ってみれば、あの時、息子の好きにさせたことは、意外と大きな意味があったんじゃないのかな…と思います。

子どもの不可解な行動に、どうしても許容できないなぁ…とヤキモキしているお父さんやお母さんがもしいたら、私の体験が参考になるかも?と思いながら書いてみます。


本を切り刻んで、虫集めを楽しんだ長男

虫好きの長男の話です。

長男は、保育園でも虫博士とよばれ、年長の夏には毎週末の夜、夫とクワガタ採集にでかけていました。

私は、そんな虫好きの長男のために、何冊か図鑑を買ってあげていました。

学研の図鑑「昆虫」、小学館の図鑑NEO「昆虫」、小学館の図鑑NEO「カブトムシ・クワガタムシ」などです。

あとは、元々持っていたものですが、今森光彦さんの『昆虫記』(福音館)も家にありました。この本は、今森光彦さんが15年以上にわたるフィールドワークで撮りためた写真を構成した本。普通に生活していたら決して覗けない、季節ごとの昆虫の営みを垣間見ることが出来ます。自分でも、気に入って大切にしていました。↓



その大切にしていた本が、ある日気がつくと、無残にもこのような姿に。。。!


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どうやら、息子は、気に入った虫の写真を切り抜き、コレクションにしたかったようです。よくみると、息子が好きなトンボや、カマキリの写真が切り抜かれていました。

ちょうどその頃、息子は5歳くらいでした。私は、「図鑑は切るものじゃないよ、読むためのものだよ」と、何度か息子に注意しました。けれど言われてすぐは、やめることができるのですが、しばらくすると、また切り刻んでしまうことが続きました。

「どうしても、虫を切り抜きたい!」という衝動が抑えられない様子。図書館の本なら大問題ですが、幸い買った本だったこと。それに、虫好きが高じすぎてこうなってしまった様子なので、まぁ仕方がないか~~と静観することに。(もう戦うの面倒だし!という気持ちも少なからずあった。笑)

かろうじて、中の素晴らしい写真は見ることが出来るし、OKとすることにしました。

一冊、まるっと切り刻まれて無くなる

それ以外にも、小学館図鑑NEO「昆虫」は、クワガタやカブトムシのページが積極的に切り取られてしまい、、、ボロボロどころか、今は図鑑の跡形もなくなりました。

「もう、小学館の図鑑は切り取る用にしよう。学研のほうが残ればいいか。。。」と半ば諦めの境地。その後は、息子の好きにさせていました。

学研の図鑑は、ご覧のようにボロボロではありますが、なんとか生き残りました。

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私が息子から学んだのは、本には、決して読むだけじゃない楽しみ方もあるのだということ。(少なくとも息子には……)

当時は、図鑑を切り刻む息子を見て内心「アチャー!(ありえないっ)」という気持ちでいっぱいでした。でも、息子はまるで虫を捕まえたかのように、大好きな虫をコレクションした気持ちになっていたのだと今なら思えます。虫が好き!という気持ちの、彼なりの表現方法だったんだと思います。

虫の形に沿って、必死にハサミを動かしている彼は、声をかけても全く気づかないほど、いつも没頭していました。そして、その図鑑から捕まえた虫を、コレクションとして大切に箱にしまっていました。

今は、それが昆虫の標本作りや、虫捕りの情熱につながってもいるようです。もし、あそこで無理やり切り刻むのを止めていたら、虫への情熱はもしかしたら途絶えていたのかもしれません。

それは、正直わかりませんが、虫を追いかけるときの彼の様子は、いつも生き生きしていて生命力に溢れています。(ついていけないと思うこともあるけどね…!)虫への情熱が続いていて良かったなと思います。


私は、思い込みを捨てることができた

さすがに、今となってはもう本を切ろうとすることはないし、多分、弟が同じことしようとしたら、本人が止めさせようとするんじゃないかと思います。

ちなみに、次男は、今の所、図鑑を切ろうとする気配は全くありません。長男はハサミを使うのがすごく好きだったのですが、次男は、ハサミにはあまり興味はないみたいです。

そう思うと、ハサミで図鑑を切ってしまうという行為は、やっぱり彼らしい個性だったんだなぁと、懐かしい気持ちです。

『図鑑を切り刻んで楽しむ』それは、長男に出会わなければ、知る由もなかった驚きの体験でした。そして、私は「本は切るべきではない」という自分にとって「当たり前」の世界から、一歩足を踏み出すことができました。


5歳の次男が、今ハマっているのは…?

ちなみに、現在5歳の次男は、少し前から「くらべる図鑑」に、ドがつくほどはまってます。

毎日、夜寝る前に眺め、特に気に入っているのは、シロナガスクジラやマッコウクジラなど、海の生き物の体長くらべのページ。深海の生き物が潜れる深さくらべのページ。そして小さい生き物の大きさくらべのページです。

「シロナガスクジラの体長は●mで、マッコウクジラは●mで!」と嬉しそうに話し続けています。自分の1歩が1mだとすると、シロナガスクジラは30歩なのか、と、昨日はマンションの端からはしまで歩き、想像を膨らませていました。

たしか、こちらの図鑑が、初めて出たのは今から10年くらい前でした。当初は、素晴らしい切り口の図鑑がでたなぁと感心し、仕事の資料にしようと即買いしました。今でも、しっかりと子どもたちに愛されていて素晴らしいなと思います。


ちなみに、「くらべる図鑑」も、ページが全て取れてしまいバラバラになっています。早く修理しないと…と思いつつ、これが面倒で、ずっと、そのままになっています。(みなさん、本の修理ってどうされてるのかな。いい方法があったら教えてほしいです)

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長男は、ここまで「くらべる図鑑」に興味を持たなかったし、海の生き物にも興味がなかったので、興味を持つものは子どもそれぞれ違うなぁと2人の様子をウォッチ中です。

答えは息子たちだけが知っている?

もし、「図鑑を切り刻む」とか、自分の「当たり前」から、大きく逸脱するようなことを息子がしていたら、どうするか。

私は、子育てをしながら、ずっと、その自分の中の「当たり前」と向き合ってきた気がします。

そして、かつての私の「当たり前」が大きな球体の中に綺麗に収まっていたのだとしたら。その玉の表面は、息子たちの登場によって、ぶよぶよに薄い布になって、よれよれになって、穴が色んな所にあいて、だらしなく広がっていっています。

私は、そんな、今の私の「当たり前」の姿が好きです。

その不完全で、いびつで、でも以前よりも柔らかく、どんな形にも、いざとなれば、ぎゅっぎゅっと中から押して伸ばすことができる。そんなふうになった「当たり前」の存在を、愛おしく思っています。息子たちが、私の「当たり前」を、柔らかくほぐしてくれました。

本音を言えば、この図鑑を切り刻んだことが、息子の将来に●%いい影響をあたえる可能性があります!とか、教えてもらえることがあればすごく楽でしょう。

でも、そんなふうに数字で見えることは絶対にない。ないからこそ、おもしろい。

ちなみに、数字で見えること(例えば偏差値とか、テストの点数とか)は、こういう場合には、なんの助けにもならない。

たとえば「図鑑を切り刻んでいる」ときの息子がどれだけ生き生きしているか、どれだけ生命力に溢れているように見えるか。それだけが、私の唯一の手がかりでした。

日常では、あれ、部屋の中で虫かごからバッタがとびだしたけど!?とか、youtubeを見過ぎなんじゃない?ゲームやりすぎじゃない?宿題をやらなくてだいじょうぶ? 息子が、こんなに●●してるのは、私の常識からはありえない!ということは山のようにあったりします。

いちいち、親としては「どう声をかけたらいいのか」迷ってしまいます。

けれど、そんなときは、息子をじっと観察するしかない。息子が生き生きとして、心から楽しそうなら、それが、きっと彼の進む道なんだろう。そんなふうに、ある意味、直感で判断するしかない。そして、自分の持つ「当たり前の皮」を、ギュッと押して広げてみる。

なんだか、子育てって、迷うことばっかり。

でも、もしかしたら、もっとシンプルに考えてもいいのかもしれない。息子たちは、きっと自分の力で、人生を切り開いていくのだから。息子たちの時間なのだから、自由に好きなことをやったらいい。

私は、薄目をあけて、彼らに命に危険がないかだけしっかり見守って、一緒に笑ったり、驚いたり、泣いたりしてれば、それだけでいいのかもしれない。実のところ、意外とシンプルなのかも知れない。

とりとめなく書いてしまいましたが、自分の「当たり前」を振りかざして、子どもたちに押し付けるようなことだけはしないでいたい。

と、そんなことを、書きながら、今、改めて考えています。


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seico@編集とライターの人
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