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【ナツメグとメーススパイス】

【ナツメグとメース】ニクズク

 ニクズクは、ナツメグとメースの2種類のスパイスがとれる、ユニークで効率のいい植物です。スパイス諸島として知られるマルク(モルッカ)諸島のバンダ原産の、群生する常緑樹で、ナツメグは種の中の核の部分で、メースは種の周りのレース状の仮種皮(かしゅひ)と呼ばれる部分です。

 6世紀にはナツメグもメースも、隊商によってアレクサンドリアに運ばれていました。同じころにナツメグは中国では消化器疾患の薬に、インドやアラブ諸国でも消化器官のほか肝臓や皮膚の病気の薬にも使われていました。またメースと共に媚薬ともされていたのです。

 ヨーロッパには十字軍によって持ち込まれたと考えられています。当時はお香として用いられ、料理に使われるようになったのは16世紀にポルトガル人がスパイス諸島での貿易を拡げるようになってからのことでした。ナツメグは薬用、食用両方に珍重されるようになり、半世紀の後には万能薬としてほとんどの薬に処方されていました。やがて18世紀までには銀や木、骨などで作ったおろし金と一緒に持ち歩かれるようになり、調味料として料理にはもちろんのこと、ホットエール、マルワイン(砂糖や卵などを混ぜて温めたぶどう酒)、パシット(熱い牛乳にワインや砂糖などを加えたもの)などの香り付けに使われました。

 ナツメグとメースはポルトガル人からオランダ人に受け継がれ、18世紀末にはイギリスにも渡りました。イギリス人はペナンやスリランカ、スマトラなどで栽培を始め、19世紀には西インド諸島のグレナダにも運びました。現在グレナダは世界の3分の1の生産量を誇っています。

 薬用としては西洋よりも東洋でよく使われ、ナツメグが気管支炎やリューマチ、お腹の張りなどの薬に処方されています。大量に服用すると眠気をもよおしたり、幻覚を見たり、陶酔感を引き起こしたりといった作用もあり、量が過ぎると死亡することもあるので、充分に注意したいものです。ナツメグは、香水や石鹸、シャンプーなどにも使われています。


#スパイス図鑑  46ページより


ナツメグ(種の部分)とメース(仮種皮)


イラスト

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