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中日翻訳者を目指している人へ
これは翻訳者の皆さんの共通認識だとは思いますが、、翻訳者について私自身常々「弱い立場だなぁ」ということを感じております。フリーランスの翻訳者は星の数おれども、成功している人はほんのわずか。企業に就職できても「ただのつかいっぱ」という立場。夢をもっていても、現実というのは厳しい。
ただ私はこのような事態になっているのは、雇用する側の翻訳・通訳という職業に対するに対する認識の軽さのほかに、翻訳する側のレベルの問題もあるのではないかと思っています。
雇用する側の認識の軽さは皆さんも身をもって経験しているかもしれません。
私は日本で現職に着く前、広東省で工場勤務をしていました。工場の敷地には、私が所属する企業の商売相手である日本の会社の社員さんが駐在していました。その社員さんに通訳さんがついていたのですが、、
通訳というのはほんの建前で、通訳はおろか駐在社員さんの身の回りのお世話もすべてまかされていました。挙句の果ては夜の遊びもお世話させられる始末。彼は現地の中国人だったのですが、「本当の通訳をやりたい」といつもこぼしていました。
学校を卒業して社会に出てみれば、企業側が職員に求めているのは外国語ではなく別のものであることを知ることになるでしょう。だからこそ、私たちが本気でやらなければならないのは語学以外に「これだけは誰にもまけない」というものを作ることなのです。
私はそれがなく、中国語しかやっていませんでした。以前は「中国語を完璧にすれば社会に出てもなんとかやっていけるだろう」といった甘えた気持ちが心のどこかにあったのです。
それゆえに社会に出てから結構苦労をしました。「中国語以外にあなた何ができる?」といわれて答えに詰まるようではほしいと言う企業が現れるわけがありません。
ただ、私の場合は幸運だったと思います。何年か根気強く待ち、努力したおかげで、翻訳者専業でできる現職をつかむことができました。運という要素が大きかったかもしれません。だからこそ、中国語翻訳者を目指している人は自分を高めながら根気強く待ってみることが一番だと思います。
◇◇
あとは翻訳する側のレベルの問題でしょうか。これは結構重大かもしれません。
英日の翻訳通訳と比べて、中日の翻訳通訳というのはどうしてもレベル的に層が薄くなってしまうと感じます。最近では特にそれを痛感しています。
実は最近、現職の会社で採用関連の仕事にも、一部携わらさせていただいています。その中で、私が現職に就いたときと比べ、明らかに中日のニュース翻訳志望で応募してくる人が減っていることを私は実感しています。昔は応募者が会議室に入りきらないほど来た年もありましたが、今は数えるぐらいしか来ず。こういう状態ですから、高いレベルの中国語能力を備えた人材も集まるわけがありません。
これはやはり時勢も関連しているのでしょう。私が入社したころは中国はまだ成長期で、「中国に行きさえすればビジネスチャンスを見つけられる」と言われていた時代でした。必然的に中国語の勉強のすそ野も広かった時代でした。
しかし今は、GDPで日本を追い抜いてピークも過ぎ、さらにコロナ渦ということで、中国経済も斜陽の時を迎えようとしています。加えて日中関係の悪化も伴い、「中国語を勉強したい」と考える人も減っているのかもしれません。今の日本人の内向き志向が影響しているとも言えます。
このような状況では高い中国語能力を備えた日本人の人材を見つけるのは、やはり厳しいと言わざるをえません。現に私自身直接お会いした日本人の中で、発音、読解、スピーキング、語彙などを含めて中国語のレベルが「すごいな」と思った人は数えるほどしかいない状態です。
加えて言うならば・・中国人の中でも、日本人とそん色ない(パッと見日本人が書いたような)日本語文を訳出できる、いわゆるハイエンドの日本語人材は正直少ないと言わざるを得ません(この問題については、今後のノートで取り上げたいなとは思っています)。
でもだからこそ、「真の実力を兼ね備えた中日翻訳者・通訳者」を目指す人にとって、今は中日の翻訳者・通訳者を目指すことのできる環境が整っていると私は感じます。
「翻訳者・通訳者になりたい」と思うならば、その道のナンバーワンを目指さなければなりません。でもライバルが昔と比べて少ないならば、その道のナンバーワンを目指すのも「いくらかは」容易になるでしょう。(だからといって手を抜くことは許されませんが)。
ですから逆に言うならば、今のご時世では中日の翻訳・通訳においてむしろ、「ナンバーワン以外は無理だ」という意識で臨むことが大切だとも言えるでしょう。
当noteがそのような前向きの中日(日中)翻訳者・通訳者さんの助けになれればと思います。
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