知識として覚えておきたい広東語と普通話の違い
皆さんは香港や広東語圏の人たちの普通話を聞いていて、聞き取りにくいと感じたことはありませんか。北方の「er」がたくさん出てくる北京語に慣れ親しんでいる中国語学習者が南方人の発音をテレビなどで聞いたりすると、不自由に感じることが多いようです。
そこで、広東語をかじったことがある私(あくまで1年間中国留学で勉強していたという程度のレベルです)が今回は、「広東語なまりの普通話の聞き取り」という面から広東語と普通語の違いというものを考えていきたいと思います。
難しく考えられがちな広東語ですが、広東語には話し言葉と書き言葉というものが存在します。彼らが日常の会話で使用する話し言葉は広東語特有の言い回しであることが多く、文字で書いた場合広東語でしか使わない文字が沢山出てきます。しかしその一方、書き言葉は実は普通話とほとんど同じであることが多いのです。
書き言葉には新聞記事や手紙、政府の公告、広東語の歌など多岐に渡ります。彼らは話し言葉や書き言葉を広東語で発音しているのですが、書き言葉は広東語の音でも発音可能ですし、普通話の音でも発音可能なのです。つまり同じ漢字でも、普通話と広東語の2種類の音があるということになります。
このため彼ら(特に香港の人たち)は普通話を話す場合、頭の中に書き言葉を思い浮かべながら、これを普通話の音で話していると考えることができます。
広東人の普通語を聞き取る上で一番の難関はやはり発音です。ここで広東語と普通話の発音の違いのうち、注意すべきものを見てみましょう。
1.Nの違い。
広東人はピンインの「n」を発音することが苦手です。これは、広東語の「n」にあたる音が普通話でいう「n」と「l」の中間の音であるためです。ですから普通話でいう「你」が「li」と発音されてしまうことが多いのです。
2.Hの違い
普通話でいう「h」の発音は、広東語ではかなり変化します。例えば普通話でいう「huang」は広東語では「wong(wang)」に、「hu」は広東語では「wu」に変化します。また普通話でいう「hua」+4声や「huai」は、広東語では「h」が「w」に変化します。このことから、広東語では「h」は発音されにくい傾向にあり、よって広東人は普通語の「h」の発音が苦手であると言えます。ただ、これはあくまで傾向であって、普通話の「hong」にあたる音は変化しません。さらに「hua」+1・2声の場合は「h」が「f」に変化するので「目安」というか、「ああ、こういうこともあるんだな」という意識で頭に入れておくといいでしょう。
3.巻舌音
これは皆さんよくご存知かもしれませんが、広東人は巻舌音が苦手です。これは広東語に巻舌音がないためなのですが、これにより普通話で話す場合「shi」「zhi」「chi」が、
「si」「zi」「ci」に変化する傾向にあります。
その一方、普通話で言う「R」の音は、広東語では「y」に変化します。つまり认真は普通話では「renzhen」と発音されますが、広東語では「yinzen」になるのです。
このことから、広東人は普通話で「r」を発音する場合、発音しきれずに「y」に近い音になってしまうことが多いと考えられます。
ざっと2、3挙げてみましたが、これ以外にもいろいろあります。覚えておくと、広東人がしゃべる普通話を理解する上でいろいろ役に立つのではないでしょうか。これからもいくつか違いを紹介したいと思います。