閑話休題(7)~私が20代の皆さんに言いたいこと
皆さん新年あけましておめでとうございます。当閑話休題シリーズも7回目となりました。もともと、半年または数か月の間隔で1回程度出すことを目安にしていた当シリーズなのですが、先回どうしても伝えたいことがあり、今回このように短い間隔で再度出すことになってしまいました。そのあたりはお許し下さい。
今回は新しい年の到来、そして中国のコロナ政策の全面的な緩和という記念すべき時にあたり、特に若い皆さんに訴えたいことがあるので書いてみたいと思います。
それは、「20代は無理をしてでも自分の好きなこと、やりたいことにチャレンジしろ」ということです。
思えば20代というのは大学という学業も修了して親から独り立ちしてから、結婚するまでの「ひとりになれる時間」「ひとりでやれる時間」を最も長く持てる期間でもあります。
仕事にキャリアに打ち込むのも一つの手でしょう。一方で仕事は結婚してからでも続けられます。でも海外でのワーキングホリデー、海外留学、資格取得などなどは20代のように「一人でいられる時間」を最も長くとれる期間に集中してやりこむのが一番効果的だと私は考えます。
なぜ私がこのように言えるのか。それは私自身、20代という時期に、自分の人生の中で一番濃密な時間を過ごしたからです。
初めての海外旅行(中国)に始まり、初めての1人暮らし、中国留学、寮生活、恋愛、失恋、海外での就活と(工場)勤務、結婚、(妻の)出産、子育て、そして様々な国の人たちや人生を変えてくれた人たちとの出会いと別れ。それだけでなく留学中には強盗に遭ったり、公安局に連れていかれて怖い目にあったり・・・私は20代にこれらすべてのことを経験しました。これは中国語でいうならば、「人生的酸甜苦乐」でしょう。これらの経験があったからこそ、今の私があると断言できます。
でももしかしたら、「いや、でも30代になってからもいろいろ自由にやれるし、いろんなことを体験できるじゃん」と思う方もいるかもしれません(現に中国で活躍している某日本人俳優もツイッターで話していましたね)。
しかし30代になると年を取るにつれ、親や親せきなどの人間関係のしがらみ、転職活動や婚活の難易度など、周りのさまざまな環境や要因がそれをだんだん許してくれなくなります。40代ならなおさらでしょう。もちろんできなくはありません。でもそれなりのバイタリティーと意志を維持できることも必要になってきます。
だからこそ20代という貴重な時間を大切にしてほしい。20代ならたとえ周りに迷惑をかけることをやったとしても、少しくらいなら年長の人たちが大目に見てくれます。
実際私自身も20代のころは好き放題やりましたが、その代償で周りにさまざまな迷惑を掛けましたし、ここで明かすことができないいわゆる黒歴史をつくってしまったこともありました。
でもこれらの借りは30代、40代、50代で自分の社会的地位が上がった時に返せばいいし、もっと言えば恩返しという形で返せばいいのです。
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例を挙げましょう。私は20代で香港で仕事を見つけ、「香港法人から東莞への工場派遣」という形で東莞で勤務を始めたのですが、もう一人、私と同期でこの香港法人に入社した日本人の同年代の男子がいました。
この香港法人の日本人社長曰く、「彼はこの会社に入ることが目標じゃないらしい」とのこと。聞くと目標は「ロンドンで大道芸人になることで、その活動資金を集めるためにこの会社に入った」ということでした。
なぜ「ロンドンで大道芸人」なのか、資金を集めるためになぜわざわざ香港に来たのかなど今考えれば突っ込みどころしかない話なのですが、日本人社長はそのような彼の突拍子もない夢を受け入れ、しかも「ずっとこの会社にいるわけではない」と公言した彼を社員として雇ってくれたのです。そんな社長の器に、私は当時「すごいな。社長」と感じた記憶があります。
一方で彼は香港の事務所で社長の下で働いていたので、東莞で工場勤務していた私は彼と数回香港で会って、飲みに行ったことはあったものの、徐々に接点を失っていきました。
結局私は彼が夢をかなえられたのかどうかわからずじまいでこの会社を退社して日本に帰ってしまったので、彼のその後はわからないのですが、これって「若さゆえの衝動」なのではと思います。そしてそれが許されるのが20代。
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このようなケースは極端でしょうし、ましてや今日本の若者はリスクを取ることを嫌がる傾向にあるとも聞いています(偏見だったらすみません)。でも「日本の社会には、若者の『わがまま』を受け入れてくれる大人が必ずいる。だから若者は夢を持つことができる」ということを今の若者に知ってほしいと私は感じています。
リスクを取らないで、平凡に生きるという選択肢もあるでしょう。でも一方で投資の世界と同じように、人生もリスクを取らなければその分リターンを期待することはできません。皆さんには自分の人生を豊かに過ごしてほしい。だからこそ私は声を大にして言いたい。
「20代という貴重な時間を無駄にしないでください」。