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中国語のニュース記事における数字

中国語のニュース、正確には指導者や要人の演説や講話にはある分かりやすい特徴があります。それはやたら「数字を使った造語」が出てくること。つまり、日本語で言う「3つの~」とか「4つの~」といった数字を並べたあれ、です。

代表的なものを挙げてみましょう。今私が思いついたものでも次のようなものがあります(左側は原文、矢印より右側は私が実際に行っている日本語訳の表記)。

三个代表⇒「3つの代表」(中国共産党が①先進的社会生産力の発展要求②先進的文化の前進方向③最も広範な人民の根本的利益──を代表すること)
三讲教育⇒「三講」(学習、政治、正しい気風の重視)教育
四个意识⇒「4つの意識」(政治意識、大局意識、核心意識、倣う意識)
四个自信⇒「4つの自信」(中国の特色のある社会主義の道への自信、理論への自信、制度への自信、文化への自信)

两个维护⇒「2つの擁護」(習近平総書記の核心としての地位の擁護、党中央の権威と集中的・統一的指導の擁護)

中央八项规定⇒中央8項目の規定
三个势力⇒「3つの勢力」(テロリズム、分裂主義、過激主義)
四风⇒「4つの気風」(形式主義、官僚主義、享楽主義、奢侈の気風)

六稳⇒「6つの安定」(雇用、金融、対外貿易、外資、投資、予想の安定)工作
六保⇒「6つの保障」(住民の雇用、基本的民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーン、末端の運営の保障)

两不愁三保障⇒「2つの”心配なし”、3つの保障」(衣食の心配がなく、義務教育、基本的医療、住宅の安全を保障すること)
四不一没有⇒「4つのノーと1つのしない」(独立を宣言せず、国名を変更せず、2国論を憲法に盛り込まず、現状を変える統一か独立かの住民投票をせず、国家統一綱領と国家統一委員会の排除の問題もない)

・・・どうでしょうか。これらの「造語」はできたばかりのものもあれば、10年ぐらい前は使われていて、今は全く見られないものもあります。皆さんにはこの機会に、いつ、どの場面で誰が最初に提起した言葉なのか、ネットで調べていただきたいと思い、あえて時系列的にバラバラに並べてみました。

これらの「造語」はそのほとんどが、最初に国の偉い人(つまり国家主席・総書記など)がある重要会議で提起したものです。つまり会議で提起された「造語」がその後の国の政策指針となり、その後の会議でさまざまな人たちに何回も取り上げられるというパターンがほとんどなのです。このため、これらの「造語」はやはり、ニュース翻訳の中では重要なウェイトを占めると考えなければなりません。ではこれらの「造語」はどう処理すべきなのか。

私は、「造語」というからにはやはり日本語訳する場合には注釈が必要だろうということで、これらの「造語」が出てきたときはまず百度で調べて注釈を考え、日本語訳の後ろに丸カッコで付けるようにしています。なぜならこの方法が一番日本語の読者に分かってもらいやすいからです。そして同一記事2回目の登場からは、訳語のみというスタイルを通しています。

そして先ほども述べた通り、これらの「造語」は半ば定型化しています。毎回これらの注釈を調べるのは骨が折れますし、翻訳の時間のロスにもつながります。ですから1つの方法として、これらの注釈を予めIMEに登録しておき、簡単なキーワード(例えば「3つの代表」ならば「みっつの」と入力する)で呼び出せるようにしています。

また、自分が過去に訳したこれらの「造語」をデータベース化しておき、次に遭遇した時にすぐに呼び出して、コピー&ペーストできるようにしておくのも手でしょう。

どちらにせよ、定型化しているものに「無駄な時間を割かないこと」。これがニュース翻訳の鉄則とも言えます。


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