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中国語翻訳者・通訳者向けマガジン

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2022年4月の記事一覧

並列かどうか見極めにくい語句

中国語のニュース翻訳を始めてから二十年以上経ちますが、未だに四苦八苦していることがあります。その1つが原文中の語句の前後関係を見分ける作業です。中国語はその語句の特性から、並列なのか、修飾しているのか、どの語句がどこに修飾しているのかといった前後関係を見分けることが極めて難しい言語でもあります。 中国語のその「特性」というのは、動詞、名詞、形容詞など品詞が異なるにもかかわらず同じ文字で兼用できてしまう語句が多いということ。英語や他の西洋の言語ならば、文字を見れば動詞なのか、

翻訳に気を付けるべき言葉──「訪問」編

ここの所コロナの影響もあり、習近平主席ら中国政府の指導者の外遊や外国の政府要人の中国訪問のニュースもめっきり減ったように思えます。相対的に、訪問記事を翻訳する機会も大幅に減りました。その結果、中国メディアの「訪問記事」をどう取り扱っていけばいいのか考える機会も減ったように感じます。 しかし中国メディアにおいては、「訪問」ひとつとっても中国政府とその国との今の立ち位置を知る重要なチャンスでもあります。コロナが収束すれば、外国との要人の往来も増えることでしょう。 今回はそのよ

動態清零は「ゼロコロナ」と訳すべきなのか。

今回は、私たちの部門で議論になっている語句について話をしたいと思います。 このところ、中国上海でコロナ感染者が爆発的に増加しており、国務院も連日記者会見を開催しております。このような状況下で、最近中国メディアの記事の中で度々見かける言葉があります。それは「動態清零」という語句。 日本の多くのメディアはこの「動態清零」に「ゼロコロナ」という訳を当てています。私もつい最近まで「ゼロコロナ」という訳を当てていました。ちなみに、、日本語のウィキでは、「ゼロコロナ政策」をこう定義し

「留抵退税」とは何か

最近中国メディアで度々目にしているにもかかわらず、なかなか分かりにくい言葉に、「留抵退税」があります。李克強国務院総理も、今年3月に開催の全人代会議で発表した政府活動報告の中で言及しており、中国メディアを注目している人は一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。 この「留抵退税」を日本語でどう訳すかは最近、私の中で悩みの種になっております。そこで今回は「留抵退税」の概念から掘り下げて解説していきたいと思います。「そんなことする必要があるの?」と思われる方もいらっしゃると