レイモンド・チャンドラー激賞というふれこみだったので気になって読んでみた。1937年に発表された作品らしく時代を感じるがそこがまたいい。文庫で300ページ強、読むのに時間がかかるかなと思ったけど読みやすい文体で案外さくさく進んだ。ときどき挟まれる社会への鋭いまなざしが全体をピリッと引き締めていた。作中に出てくる音楽を実際に聞いてみるといかにも物語の時代に入り込んだような気になってなかなかよかった。チャンドラー激賞と書いていなければおそらく手に取ることはなかったと思われるのでチャンドラーに釣られたとしても読むことができてよかった。古い作品もたまに読むといいなあと。世界をシンプルに切り取った世界。