慣性の法則の実験・実例
慣性の法則は難しい
慣性の法則の主張は以下の通りです。
この主張を分解すると、次のようになります。
理論上はひとまとめに「慣性系が存在する」というシンプルな主張ですが、実際の個別具体的な場面に適応しようとすると、次の8パターンを考える必要があります。
①アのときA
②アのときB
③イのときA
④イのときB
⑤Aのときア
⑥Aのときイ
⑦Bのときア
⑧Bのときイ
①アのときA(物体に力が働いていないとき、静止し続ける)は極めて直感的であり何もむずかしい主張には思えません。
しかしながら、⑧Bのときイ(物体が等速運動しているとき力はつりあっている)はかなり直感に反します。物体が等速運動しているときには進行方向に力があるように感じてしまいがち(力と運動量の混同)です。なんとかこの"F=mv素朴概念"を科学的概念に近づける必要があります。
もちろん、実際の現象としては、力の働くタイミングと運動が起こるタイミングは区別できないので、「①と⑤」「②と⑦」「③と⑥」「④と⑧」の4パターンの現象があります。
このそれぞれのパターンの例を挙げることができるでしょうか?
様々な慣性の法則の説明や実験が紹介されていますが、ほとんど全ては上記のうちの一部分のみの紹介に留まっています。そこで、パターンごとに整理してみました。
①⑤(ア 物体に力がはたらいていない ⇔ A 静止し続ける)
テーブルクロス引き
コイン落とし
②⑤(ア 物体に力がはたらいていない ⇔ B 等速運動を続ける)
電車の急ブレーキ(車内の物体はそのまま移動しようとする)
地球の自転
宇宙空間の映像
エアホッケー
振り子の最下点で糸を切る
③⑥(イ 物体にはたらく力がつりあっている ⇔ A 静止し続ける)
綱引き
机の上に置かれた物体(重力と垂直抗力)
④⑧(イ 物体にはたらく力がつりあっている ⇔ B 等速運動を続ける)
ここがかなり直感に反しており、慣性の法則を考える上で最も引っかかるポイント、かつ、あまり実例や実験などもないところです。ここが慣性の法則の「わかったつもり(わかってない)」の原因だと思われます。
例えば、次のような実験で示すことができます。
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