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【詩】シュレッダーに手を突っ込む

僕は自らに価値を感じなくなってしまった
風が吹けばそのまま飛んでいってしまいそうだ
むしろこの身体ごと僕の意識を吹き飛ばして欲しい

何を喋ってもどう身体を振り回しても
このA3サイズの枠からはみ出てくれない
その紙の外側にしか幸せは転がっていないのに

その紙の薄さと同じくらいしかない
自分の考えの深度に
いつも飽き飽きしながらついに諦める

僕は多分この紙になってしまったんだ
誰かの意思によって潰され
キチンと平されたA3の紙だ

だからかもしれない

裏紙とシュレッダーとに目があった
無様に飲み込まれるあの様が羨ましかった
僕もこの姿で生まれたとわからないくらい切り刻んで欲しい

明らかにシュレッダーの口は
僕の手が通り抜けられるサイズではない、けど
無機質な咀嚼音がなんとなく僕を誘う

行けるかもしないなぁ
僕が本当に紙になってしまってるのか
確かめるのは今しかない

人目を盗んで無機質な牙を睨め付ける
深呼吸をしてみる 
感じたことがない痛みを想像し
指先はジンジンなっている

こうやって想像できるもこれが最後かもしれない
僕は他の紙の中に溶け込んで
もう見分けがつかなくなるだろう

思い切って手を突っ込んだ

吸い込まれていく手を眺めながら
不思議と怖くは感じなかった
紙が役目を終えてその他と変わらない最後を迎えるだけだ

次第に吸い込まれて行く意識と共に
僕を見つめる「僕」をみた
A3の外に僕は何を残してきたんだろう

紙だった部分を捨てて
ようやく気づけたことがあったんだろうか
だけど紙みたいな僕は

このくだらない詩と共に
明日燃えるゴミに出されているだろう


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