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アマプラ映画感想メモ#28『人情紙風船』

エヴァ観まくり週間から日常に帰ってきたアマプラ映画28日目。
致命的なネタバレは避けるべく努力するが、あらすじや表現、全体の構成についてなどは触れようと思うので、一切情報を入れずに映画を観たい方はお気をつけて。


今回観た映画はこちら。

『人情紙風船』

〇観ようと思ったきっかけ

山中貞雄監督の『丹下左膳余話 百万両の壺』が個人的に好きだったため。

〇概要

1937年の日本映画。監督は山中貞雄。
歌舞伎作品の通称『髪結新三』をモデルとしている。

〇あらすじ

貧乏長屋の一室で、浪人が首を括った。
住人たちは浪人を見送るために通夜を開くが、住人たちにも一筋縄ではいかないそれぞれの事情があり……

〇ノート

地味でゆったりのびのびと話が進んでいるようで、後になって振り返ると計算し尽くされていて無駄のない映画だった。
長屋を起点として物語が発展していくかと思いきや、流れで登場した質屋の娘に焦点が移ったり、途中までは物語の本筋がどこにあるのか分からない。

かといって印象がバラバラな訳ではなく、どことないつれなさ、人情の儚さのようなものが個々のエピソードに通底しているので、迷子にはならなかったのがスゴイところ。
また、そうして広がった物語が一つに収束した瞬間の快感は凄まじかった。
並行して進んでいた物語それぞれの結末も示唆に富んでいて、決して派手でも鮮烈でもないが、とても好きな終わり方だった。
映像表現として特に好きだったのは、やくざ者の親分が質屋の番頭と話していたシーン。お客との話が終わって襖を開いた瞬間、全く別の話が同じ場所で展開し始めた時には、その仕掛けに驚かされた。

〇感想

モノクロかつ昔の映画なので、人物の視認性に少々問題はあったものの、それぞれの登場人物の個性も立っていて、とても面白かった。
独特の気の抜けた感じ、どうにもならない中で好きに生きる感じが、好きなアニメ『サムライチャンプルー』にも似ていて、今後地味に影響を受けていきそうな感じがする。
こういう作品もいいなぁ、と、しみじみ思った。

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