見出し画像

カラフルな環境問題

ー バルセロナ きらきら太陽の真下のカフェで ー

◇このエッセイは二十年ほど前のバルセロナのお話しです◇

 バルセロナの人々は、ひまわりの種をよく食べる。街を歩いている時でも、ポケットにその種を忍ばせ、口の中に素早く入れ、歯を使って割り「ピュ、ピュッ!」と殻をはき出し路上を散らかしていく。ほんの一瞬の内に口の中で行われる殻を取り出す行為はマジシャンのようだ。
 みんなが歩く路上には、はき捨てられたひまわりの種の殻ばかりでなく、たばこの吸い殻や紙くずなどもころがっているが、バルセロナの街はいつもきれいに整っている。その秘密はゴミ屋さん。清掃員それぞれの担当区域が決まっていて、その場所をほうきで掃いて大きなプラスチックでできたカバンにゴミを入れ、それを今度はゴミ箱に入れるのだ。その箱はアイスクリームでも入っていそうな冷蔵庫のようなかわいい入れもので、それをコロコロと引きずりながら自分の担当区域を終えていく。あちらこちらにゴミ屋さんが出没し、街は一気にきれいなる仕組みなのだ。路上にドカンと堂々と置いてある青や緑、黄色の巨大なボックスは、子どもなら5人は余裕で入ってしまうくらいのサイズで、燃えるゴミやプラスチック、ガラスなどに分別されるのである。従業員のユニフォームは発色の良い黄緑と黄色でコーディネイトされている。ゴミの仕事だからといって、決して灰色などの暗い色を使わないところがこの街のデザインなのだ。カラフルなゴミ箱は愛嬌ふりまくロボットのように街の路上にドンと座っている。

ここからは二十数年前からヒューッと時間をもどし、現在のことをかきます。

 ゴミ問題は今や世界中で取り組んでいるほど、地球にとって大切なことだ。
私が住んでいるのはバルセロナ郊外の町La Garrigaラガリーガという、モデルニスモの建物が結構残っているところだ。
この町では一年前からゴミ収集方法を大きく変更し、各家庭にバケツほどの大きさのゴミ箱が二つ『生ごみ用』と『その他用』そして牛乳パックやカン、プラスチック容器を入れるゴミ袋が配られ、それを利用して曜日ごとに決められたゴミを家の前に夜の8時から9時の間に出すという決まりができたのだ。
最初は慣れないので大変だけれど、一ヶ月ほど経つと習慣化され、今ではそのルールが身につき何の問題もなく生活している。バルセロナの中心地ではオフィスビルや商店、そして人口も多く、このルールを適用するには難しいのだろう。だから、その周辺の小さな町から少しずつ、我が町のようにゴミ問題に関して新しい取り組みをしているところなのだ。現在のバルセロナはいつでもゴミを捨てられる状態だが、近い将来は我が町のようになると思う。
 そうそう、二十年ほど前は老いも若きもひまわりの種を歩きながら食べる人が結構いたのだが、今ではその姿を見ることがほとんどない。いや、ほぼない。初めてバルセロナを訪れて、それを食べるスペイン人を見た時は面白いなと思い、遠くからじーっとその様子を食い入るように見ていたが、現在それを見れないのはとても残念だ。でも、家の中ではおじいちゃんやおばあちゃんはきっと器用に歯を使って食べているにちがいない。

それでは今日はこの辺で。良い一日を ボンディア!

こちらはVicという街のゴミ箱。まちによってゴミ箱もいろいろ。
ゴミ箱のフタ部分に何を捨てて良いかが書いてある。イラスト付きなので子どももわかりやすい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?